中学受験塾とは
塾や予備校はサービス産業ですから、顧客の満足が第一。
そしてその顧客満足は、生徒さんの志望校合格に足る学力の養成にあります。
ですが、通常、対象が中学生以上にもなれば、カリキュラムを消化して学力を伸ばせるか否かは本人次第、という部分が肯定されることが多い。
早い話、不合格は「落っこちた当人の努力不足・戦略ミス」として受け止められることが多いのですね。
が、中学受験塾はちょっと異なります。
聞いたことありませんか?
「○○塾でウチは失敗したわ。ほかのところに行かせるべきだった。」
そうなんです。
小学生だと、不合格は塾の責任、と考えるご家庭が少なくないのです。
なぜか。それはおそらく対象が周囲の影響を受けやすい小学生であることに起因しているのでしょう。
ご家庭が、塾側が指導料として受け取っているはずの費用の対象である指導内容に、さまざまなサービスを暗黙の裡に期待するのです。
つまり、塾側が指導料として受け取っているはずの費用の対象である指導内容に、学習の習慣づけやモチベーションアップ・維持などの精神的なものまで、ぼんやりと含まれてしまう・・・。 中学入試は親子の受験と言われるように、親の介入なしの合格も難しく、その分、親御さんに対してのサポートもサービスとして付加されることが期待されているのです。
中学受験塾の担う、このサービス対象のあいまいさ、不確かさ、中学受験塾に対する顧客からの期待値と要求度の高さ。
これが中学受験塾側から見れば、現場での臨機応変、柔軟性をもって対応、対処すべき案件を生み出すといえるのです。
たとえば、親子げんかした!もう中学受験自体やめる!というようなご家庭内のトラブルにも対応することがあります。
親子で煮詰まっているので、第三者として冷静に意見を述べ、親子間の調整をすることで、再び受験に向かう態勢を整える手助けをする、といった事例は、おそらくどこの中学受験塾でも起こっていることではないでしょうか。
塾内で起きた友人関係のトラブルも、当然対処の範囲内です。
モチベーションが下がっているお子さまへの声掛け、面談等も行われます。
課題をしないお子さまを呼び出し、叱責する塾もあります。
が、こういう場合は、こうだというマニュアル化が非常に困難。
かつ、がちがちにマニュアル化してしまうと、途端に現場が硬直化を起こして、全体の不満足につながるという、なんとも難しいサービスを行っているのが中学受験塾なのです。
だからこそ気をつけたい塾とのつきあい方。
サービス対象があいまいさを含んでいる分、気を付けなければ過剰にサービスの提供を求めるクレーマーママになってしまう、逆にせっかくサポートしてもらえるのに、遠慮して言い出せずにチャンスを逃してしまう、等々、行き過ぎも引っ込みすぎもお子さんにより良い環境を与える結果にはつながりません。
親としてどういう姿勢、ありかたで塾とつきあえば、後悔の少ない受験ができるのか。
そしてどのようなお子さんが塾側のサポートを成績に反映させて合格を勝ち取るのか。
塾とのおつきあい、実はなかなか奥が深い!
相手は子ども。 小学生。 初等教育の段階です。
まだまだ社会のルールも身についていない、やわらかな存在。
こちらのちょっとした働きかけでいかようにも変わりうる危うさを持っています。
指導方法も中学生以降とは異なりますし、講師との相性が成績を左右する割合も高い。
ちょっとした働きかけ次第ですくすく伸びるポテンシャルも秘めています。
中学受験は、子どもと接する立場の人間の対応がダイレクトにお子さまに影響する、特殊性を持っているのです。
だからこそ親が塾とどう関係を結ぶかで、親子で受験生活の居心地、精神的安定が変わってくる!
「塾を信じておりますので」の丸投げ型は大変危険。
「塾なんてお金目的よっ!」のヒステリー型はもっと危険。
塾の特性を知り、最強の味方とするべく、どう働きかければ、「○○○塾」を「ウチの子の塾」に変えられるのか。
プロとして見た立場からお話しさせてください。
春野 陽子のプロフィール
日能研国語講師として、昨年度までの約10年間、主に6年生の中学受験指導を担当。
その間、長男(SAPIX)、次男(日能研→SAPIX→市進)の中学受験を体験。
2012年度から中学受験個別指導塾ドクターの株式会社ドクターに非常勤講師として勤務。