「記述問題の解き方」
記述問題が苦手だという生徒が多い。国語ぎらいイコール記述ぎらいといってもいいくらいだ。「何を書けばいいのかわからない」「書くべきことはわかっているが、頭の中でまとまらない」など、極端な場合、解答用紙の原稿のマスを見ただけで拒否反応をおこし、空欄のまま提出する者もいる。だが、ここで手をこまねいているわけにはいかない。なぜなら、御三家をはじめ、上位校では記述問題を主体とした入試問題が増えているからだ。最近の学校側の傾向として、自己表現力に富んだ生徒を求めることが顕著である。この流れは今後も継続されるであろう。これからは「国語力とは記述力」と言い換えられることになると思われる。早めに対策を練らなければならない。とは言っても私個人としては皆が皆記述ぎらいとは考えていない。なぜなら自己を表現することを厭う人は稀だからである。おしゃべりな人、カラオケ好きな人はみんな楽しそうである。それを考えると記述問題も嬉々としてやるべきものではないかと思う。自分の思いが的確に表現できたときなど一種の快感を覚えるではないか。しかし、できない生徒にそれを言っても酷なように思われるので、ここから先は記述のノウハウを話していこう。まず、記述ができたほうがいい理由として
(1) 配点が高い。
(2) 空欄ぐせがつくと向上心が身につかなくなる。
(3) 記述力がつくと総合的な判断力がつき、他の問題を解くとき良い波及効果を生む。
などが挙げられる。 次に、先程「頭の中でまとまらない」という話があったが、まとめてから書くのでは時間がいくらあっても足りない。むしろ見切り発車でもいいから、書くという作業を優先すること。書きながら考えればいいのである。とは言ってもただ闇雲にやればいいという訳ではない。他の問題同様、算数のように「論理的思考」で考え、解いていこう。
基本は以下の通りである。
(1) 枠を作る
(2) 問題できかれた通りの内容を枠の周辺に記入する
(3) わかるところから書いていく(後ろから書くことをお勧めする)
(4) 要点や傍線近辺の内容を最大限に利用する
では、例文を用い、試してみよう。
(例)今日は算数の答案を返してもらう日だ。テストに向けてどんなに一生懸命勉強したことだろう。試験当日も手ごたえを感じた。こんなに答案用紙が戻ってくるのを楽しみに待つのは初めてだ。早く結果を知りたいな。(中略)先生から答案用紙を受け取り結果を見るやいなや、良子の顔色は青くそして次に真っ赤になり下を向いてトボトボと自分の席に戻っていった。
(問い)良子はどのような気持ちで自分の席に戻っていきましたか?50字以内で記しなさい。
(1)と(2)を使う
記述問題でなかなか点がとれない最大の理由は「問題文を正確に把握せず、早とちりして書く」からである。きかれた通りに答えることが最も重要でそのためにもこの作業は欠かせない。
(3)を使う
物語文で比較的わかりやすいのは人物の心情である。まず、ここから書くようにする。物語文の記述のほとんどは心情で締めくくることが多いので、後半に書いてしまう。これがドクター流「記述は後ろから書け」作戦である。心情は登場人物の行動、様子、態度から推察する。わからなかったら「自分が主人公の立場だったらどうだろう」と置き換えて考えてもよい。(この発想は記述でのみ使える。選択問題では「自分勝手な発想」となるので使わない)今回は「顔が青くなった」から、「ショックを受けた、驚いた」という心情が、「赤くなった」から「恥ずかしい」という心情が、「下を向いてトボトボ」から「悲しい」という心情がうかぶはずである。それらをまとめると「ショックを受けたと同時に恥ずかしく悲しい気持ち」となる。(今回は物語文なので4は使わないが、問題に書かれてある内容は最大限にいかすようにすること、特に傍線前後) 次に上記の心情に行き着いた理由を前半に書く。これがドクター流「後半心情、前半理由」作戦である。先に記述後半に心情を書き、あとからその心情になったきっかけを記述前半に書いたほうがまとめやすい。「ショックを受けた理由」は、頑張ったにもかかわらず点が悪かったから。「恥ずかしい・悲しい理由」は点数が悪かったから。よって答えは次の通りになる。(解答)「頑張ったにもかかわらず点が悪かったことにショックを受けたと同時に、恥ずかしくて悲しくなる気持ち。」字数に余裕がある場合は前半の内容を膨らませ対処する。(前半は字数調整の場と考える)
記述で注意したいこと
1.問題できかれた通りに答えること。
2.一度に仕上げず途中で何度か読み返し、つじつまのあっただれが見てもわかる文章になっているかどうかを確認すること。
3.話し言葉で書かないこと。
4.指示語やたとえの表現のままで書かず、それぞれについて何を指しているのかを明らかにして書くこと。
5.できれば一文で書くこと。ただし、それによって文章がわかりにくくなるのであれば、 二文になっても構わない。
6.主語と述語が一致しているかどうかに神経を使うこと。
7.同じ言葉を多用しないこと。
8.「ラ抜きことば」で書かないこと。
9.記述で書く内容のヒントになる部分は傍線前後にあることが多いので、その近辺をしっかり読み利用すること。
10. 記述は「だれが読んでも内容がスウッーと頭に入ってくるわかりやすい文」に仕上げることが大事である。もし、文中で抽象的な表現があり、もっとわかりやすく言えそうだと判断したら言い換えても構わない。
どうしても書けない場合は、自分の考えたこと、思ったことを口に出してみる。そして、話しことばのままで構わないので素直に書いてみる。その後、字数を調整し、話しことばを書きことばに直せばいい。模範解答どおりに仕上げることに神経を注ぐ必要はない。きかれたことに答えられればいいのである。部分点ねらいで十分である。ただし空欄提出だけは避けよう。