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投稿日:2024年05月13日

テーマ: 社会

しっかり整理!外交史・国際関係の中学受験用語

みなさんこんにちは。受験Dr.国語・社会科の天野です。

ゴールデンウィークも終わってはや一週間。受験生のサポートに手一杯で、「混雑する国内を避けて海外旅行に行ってきました。」なんて言うのは夢のまた夢というご家庭が多いと思いますが、社会の学習内容としては非情(?)にも、国際関係や外交史を学習することが多い時期にあたります。
今回は、国際化のさらなる進展で出題も増える傾向にあるこの分野について、特に受験生が混同しがちな用語を取り上げ、整理していきたいと思います。

いつものように、先生と生徒2人の会話形式でお届けします。

 

東西冷戦~資本主義と社会主義

太郎 「先生、いま外交史と国際紛争のところを復習してるんだけど、やっぱり東西冷戦がらみが難しくて。社会主義とか何たら主義とか、そもそも東側とか西側とか、なんで日本より東にあるアメリカが西側なの?」

先生 「日本から見てじゃないからだね。「地球上のこのラインから東側は全て同じ陣営」とかはもちろんなくて、大雑把な話だけど、基本的には、ヨーロッパの東側と西側でわかれていたということ。東西にわかれてしまっていたドイツあたりを境に、東ヨーロッパの国々やソ連(=東側諸国)が社会主義で、イギリスやフランスなどの西ヨーロッパやアメリカ合衆国(=西側諸国)が…さて何主義だっけ?」

花子 「民主主義!」

太郎 「え、資本主義じゃないの?」

先生 「(ニヤニヤ)」

太郎 「ニヤニヤしてないでどっちが正しいのか教えてくださいよ(笑)」

先生 「ごめんごめん(笑)花子さんのように社会主義の対義語を民主主義って覚えている生徒がけっこういるんだけど、本来の対義語は資本主義なんだ。細かい定義って難しくて色んな意見があるけれど、社会主義の人に「あなたたちは民主主義じゃないですよね?」って聞いたら怒り出すことが多いと思う。「社会主義こそ真の民主主義を実現するものだ!」っていう主張する人もいる。」

花子 「そうなの?!」

先生 「たとえば、東側、社会主義陣営に入る北朝鮮の正式名称は?」

花子 「朝鮮民主主義人民共和国…あ!!」

太郎 「「民主主義」って国名に入ってる(笑) とても民主主義には見えないけれど…」
先生 「たぶんその「見えない」ってところがポイントだよね。北朝鮮は極端だけれど…実際、「民主主義」が、選挙などを通してできるだけ多くの国民の意見を政治に反映させていくものだとしたら、結果的にかなりの数の社会主義国家は民主的ではなく独裁的になっていた。」

太郎 「独裁的って言えば、ソ連のスターリンとか中国の毛沢東とかか。」

先生 「彼らのような強力な独裁者がいなくても、政党が共産党しかないところ(共産党一党独裁)だと、選挙はあっても多様な国民の意見が反映されることはないよね。だから社会主義政権が倒れたことを「民主化された」なんて表現することも多い。でも、逆に資本主義国で独裁的なところもあるよね。」

花子 「つまり、【資本主義⇔社会主義】の違いと、民主主義かどうかは、別の基準ってこと?」

先生 「その通り!資本主義か社会主義かの違いは基本的に経済、つまり物やサービスやお金をどう扱うかってことに関わる仕組みの話だね。」

太郎 「資本主義は、売り買いを誰でも自由にしてよくて、自分の財産を持っていいけど、社会主義は自由にはできなくて、「おまえのものは俺のもの!」っていうやつだっけ?」

先生 「それはジャイアン※主義な(笑)資本主義の説明はその通りだけど。」※漫画『ドラえもん』の登場人物

花子 「社会主義は、私有財産(個人の財産)は持っちゃだめなんだよね?基本的に全て国家が管理する共有のものってことよね。国がみんなに平等に分配して貧富の差をなくそうっていう。」

太郎 「みんな平等なのはいいな~」

先生 「そうだね。ただ、太郎くんが人一倍働いても、なまけている花子さんと給料が基本的に同じだよ。」

花子 「ちょっと!なんで私がなまけ者になってるの?!」

太郎 「え?それはやだ。むしろ俺がなまけたい…おまえの稼ぎは俺の稼ぎ(笑)」

先生 「またジャイアン主義…(笑)でもやはりある程度競争がないとやる気が保てないのは普通のことだから、現実には社会主義だと生産がなかなか伸びなくて行き詰まることが多かったんだ。」

花子 「そういえば、日本の奈良時代にも、土地は全て国のものっていう公地公民制がうまくいかず、三世一身法(723年)を経て墾田永年私財法(743年)になって、私有が許されるようになったよね?」

太郎 「なんだよ花子、こんなタイミングで社会経済史の復習入れてくるとか、生徒の鑑かよ。」

先生 「褒め方が素直じゃないな(笑) 確かに日本の公地公民制も一種の社会主義みたいなところがあるね。同じように、現代の社会主義国家である中華人民共和国とかは、一部で資本主義を取り入れている部分もあるから、社会主義と言っても実際は貧富の差が開いているんだよね。」

花子 「日本のインバウンドを支えてくれている中国の人たちとかは富裕層ってことか…中華人民共和国はそうやってなんとか社会主義国として生き残っているけど、他にはほとんどないよね?」

先生 「うん、今は社会主義国は数カ国のみ。ただし、社会主義的な考え方や政策は多くの資本主義国で取り入れられているよ。国が道路やダムを建設して失業者を減らそうとする公共事業は世界恐慌(1929年)の対策から有名になったし、誰でも安い金額で利用できる国営や国立の施設・サービス、健康保険・雇用保険・年金保険・生活保護などの社会保障制度、収入の多い人ほど所得税の率が増える累進課税制度などが日本にもあるね。ここらへんの制度はすでに公民で習ってる人と、来月にかけて習う人とがいると思うけど。」

花子 「累進課税で半分くらい税金とられるんですよ~って言えるぐらいお金稼いでみたいな(笑)。ところで冷戦が終わって多くの東側諸国が社会主義じゃなくなったのって、20世記の終わり頃だよね?」

先生 「そうだね。冷戦は「ヤルタからマルタへ」とか言われるけど、1945年のヤルタ会談あたりにはじまり、1989年のマルタ会談で終わり、1990年には分裂していた東西ドイツが統一、1991年に東側の親玉であるソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)が崩壊してロシア連邦やウクライナなども資本主義化していった。」

太郎 「1989年は強引なゴロで覚えてる! 《冷戦の 幕を引く役【1989】 昭和天皇》!昭和天皇の昭【ショウ】の音で消費税の消【ショウ】の字も思い出すんだっけ?」

太郎 「竹下内閣で消費税(3%)が初めて導入されたんだよね。いずれにせよまさかの昭和天皇が冷戦を終わらせたみたいにでっち上げられてて、相変わらずだけど(笑)」

先生 「ちゃんと覚えててエライ!…んだけど、「強引」とか「相変わらず」とか、トゲがあるぞトゲが(笑)」

 

中華民国と中華人民共和国

太郎 「トゲついでに聞きたいんですけど、さっき出てきた中華人民共和国、中華民国との関係がトゲトゲしくて喉にひっかかっていて…1911年に辛亥革命で清を倒してできた中華民国って、今もあるんだよね?」

先生 「いきなり答えにくい質問を…(笑) 正確には、台湾の政府は「中華民国」と名乗っているし、それを認めている国も少しはあるけれど、国連や国際機関では正式な国としては認められていなくて、「地域」として「台湾」とか「チャイニーズ・タイペイ」って言われているよ。」

花子 「あ、オリンピックでチャイニーズ・タイペイって呼び方聞いたことある!」

太郎 「そういえば、今年はパリオリンピックだし、最初の東京オリンピックから60周年の年でもあるし、今度の受験ではオリンピック関連は出やすいよね。メモメモ…」

先生 「うんうん、今年の時事問題として大事だね。チャイニーズ・タイペイって呼び方が問われることはあまりないだろうけど。さて、中華民国を日本が国としては認めなくなったのは、いつからだっけ?」

太郎 「え?そんなの習ってないよ…」

先生 「ほんとかな?(ニヤリ)じゃあ、中華人民共和国を正式な国と認めたのはいつ?」

花子 「1972年!佐藤栄作首相の時」

太郎 「え、それって、日中共同声明の年だよね?田中角栄じゃない?」

先生 「そう!日中共同声明は佐藤ではなく田中。1972年は、佐藤栄作が沖縄返還を実現した後、田中角栄に首相が交代したから、ややこしいんだよね。」

太郎 「佐藤さんも田中さんも日本にたくさんいる苗字だし余計ややこしい…なんか良い区別法はないの?」

先生 「「日中」の「日」の字にタテ棒を1本追加すると…?

太郎 「あ、「田中」になる!(笑) 沖縄返還は沖縄の気候と特産品もセットで《常夏(とこなつ=1972)の島 サトウキビで栄え(=佐藤栄作)》で覚えればいいって教わったし、これで大丈夫そうだ。」

花子 「ちょっと、いい加減にしてよ。地理の復習も入れてくるとか、太郎君こそ生徒の鑑じゃない…」

先生 「また「鑑」攻撃…(笑) この日中共同声明には、「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」とある。逆に言えば中華民国政府は合法的政府とは認められないってことだ。」

花子 「アメリカも同じ立場にかわったよね?なんで、同じ資本主義国で仲間だったはずの中華民国(台湾)を捨てて、社会主義国の中華人民共和国を選んだの?」

先生 「実は、前年の1971年に中華人民共和国が国連に加盟して「中国の唯一の代表」ってことになり、それに反発した中華民国が国連を脱退しちゃったことが大きい。」

花子 「え?中華人民共和国ができたのって1949年だったはずだけど、国連加盟はそんなに遅かったの?」

太郎 「逆にそれまでは台湾の中華民国が国連の代表だったってことか」

花子 「それでわかった!1956年に日ソ共同宣言でソ連と国交回復したから日本が国連に加盟できたって習ったけど、なんでソ連が拒否しなくなっただけで加盟できたのか、中国は反対しなかったのかな?って思ってたんだよね。当時すでに日本と仲直りしていた中華民国だったから反対しなかったんだね。」

先生 「よく気づいたね! 1949年以降も、台湾の中華民国を支持するアメリカ中心の勢力が国連内では多数派だった。だけど、その後欧米の植民地からどんどん独立して国連に入ってきたアジア・アフリカの国々をはじめ、中華人民共和国を国連に加盟させるべきだっていう立場の国が多数派になっていったんだ。」

 

共同声明と共同宣言

太郎 「そういえば、日ソ共同宣言と日中共同声明も、宣言と声明がごっちゃになる…」

花子 「私は、「祖先(ソ・宣言)は中世(中・声明)」ってゴロを習ったよ。」

先生 「あるいは、「センゲン」を「セソゲソ」ってことにして「ソが連なってる」って覚えても…」

太郎 「それだとソ連までソレソって読めてきそう(笑) 共同宣言と共同声明ってそもそもどうちがうの?」

先生 「共同宣言は条約に近い縛りがあるもので、両国が実際にする行動を約束したもの。日常でも「これから必ず○○します!」って誓うことを「宣言する」っていうよね?共同声明は、両国の立場などを表明するもので、法的な拘束力などはない。日ソの場合は本当は平和条約を目指していたんだろうけど…」

太郎 「北方領土問題が解決しなかったから平和条約まではいかず共同宣言だったってことか!」

花子 「日中の場合は、中華人民共和国を唯一の政府と認めるっていう「立場の表明」だから声明なのね?」

先生 「二人ともその通り。そして、その中華人民共和国とは、平和条約はどうしたんだっけ?」

太郎 「1978年に日中平和友好条約を結んでます!福田赳夫首相の時。

先生 「太郎君、めっちゃ勉強してるじゃん!」

太郎 「だって、俺、先生の課題表に書かれたことは全てやるって「宣言」したじゃないですか!」

先生&花子 「生徒の鑑!!」

いかがでしたでしょうか?最後に、関連する日中・日露関係の年表を載せておきます。

関連する日中・日露関係の年表

それではまた、お会いしましょう。

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