みなさんこんにちは。受験Dr.国語・社会科の天野です。
今回から、中学受験塾で6年生の3月末(遅くて6月頭)に学習の始まる公民分野のうち、最重要分野でありつつ苦戦する生徒の多い国会の仕組みについての整理法をお伝えしていきたいと思います。
いつものように、先生と生徒2人の会話形式でお届けします。
衆議院の優越の根拠と国民主権
太郎 「先生、衆議院と参議院のいろんな区別がややこしすぎて辛いです。」
花子 「公民って歴史の人名みたいに理屈抜きで覚えなきゃいけないのがなくて、用語は漢字を見ればだいたいの意味がわかるから結構好きなんだけど、衆議院の憂鬱とかは細かすぎて憂鬱…」
先生 「よっぽどなのか「衆議院の優越」の「優越」まで「憂鬱」になってるぞ(笑)まあでも気持ちはわかる。先生も中学受験を教え始めた頃は、「こんな細かいところまで覚えなきゃいけないのか?!」って正直驚いたからね。とは言え、公民分野はまさに理屈で徹底的に攻略できるし、ゴロも作ってみたから安心してくれ。」
太郎 「僕にはそのゴロだけ手っ取り早く教えてくれませんか?」
先生 「断る(笑) 理屈を覚えた方が色々応用が効くし抜けにくい知識にもなって急がば回れだから、少し我慢してくれ。ところで花子さん、そもそも衆議院はなんで参議院に優越しているの?」
花子 「参議院に比べて任期が短く※、解散もあり、国民の声を反映しやすいから。特に解散については、いつ解散総選挙になるかわからないから、その時々の国民の意見に敏感になりやすいってことですよね?」
先生 「すばらしい!でも毎年この理由はすんなり答えられる生徒が結構いるんだよね。ちなみに国民の声を反映しやすいとなぜ立場が上になるの?」
太郎 「それは国民主権だからですよね?ちなみに、これから先生がツッコミそうなところを先に答えておくと、ここでの「主権」っていうのは、国の政治のあり方を最終的に決定する権利のことですよね。」
先生 「ぐぬぬ…先生の質問の先読みまでするとは。参りました。国民主権について突っ込んでいくと、最終決定権を持っている人が1億人もいるってどういうこと??ってなって、そこで代表者である国会議員だけでなく象徴である天皇の役割も出てくるんだけど、そこら辺の込み入った議論は今回は置いておこう。ひとまず主権者である国民が一番上の立場だから、その意志が反映されやすいほど権力が強くなるってイメージで覚えておけばいい。この根本を覚えておくと内閣や裁判所や地方自治の分野の勉強も楽になる。」
花子 「あ、主権者である国民から直接選ばれている国会の方が内閣より権力が強くなるとかですよね?」
先生 「そうそう。なんかもう教えることないんじゃないかな…では今日はこの辺で(笑)」
花子 「待ってください(笑)それでも衆議院の優越の細かい分類はなかなか覚えられないんで。」
先生 「そうだった。そしたらいよいよ衆議院の優越の中身に入るけど、まず優越の仕方に3種類あるね。」
太郎 「え?!そんなあったっけ?」
先生 「うむ。①そもそも衆議院にしかないもの。②参議院と意見が対立した時に衆議院で再可決すれば成立するもの、③両院協議会で解決しない時は再可決も必要なく衆議院の議決のまま成立するもの。この3つ。」
【衆議院にしかない権限】
花子 「①の衆議院にしかないものは、内閣不信任案の決議と予算の先議権ですよね?」
先生 「その通り。なんで不信任案を参議院は提出できないんだろう?」
太郎 「参議院は解散がないから、自分たちは辞める心配ないのに内閣だけを辞めさせることができちゃうし、参議院が出した不信任案のせいでまさかの衆議院が解散されて辞めなきゃいけないこともあるので。これじゃ衆議院の優越どころか参議院の超優越ですよね。」
先生 「そのとおりだね。予算の先議権については、なんで衆議院から先に話し合わないといけないの?」
花子 「その年の予算が決まらないと国が動けないので急いで決めないといけないからでしたっけ?」
先生 「そのとおり…と言いたいところなんだけど、「その年の」ってのが少し気になるな。予算って何月から何月までのものをいつから決めるんだっけ?」
太郎 「1年の計は元旦にありだから、1/1に正月明けから年末までの予算を決めるんですよね。」
先生 「1日で100兆超えの予算を決めるの?!」
太郎 「だって内閣がよく考えて予算を組んでるし、それをほぼ認めるだけじゃないんですか?」
先生 「いやいや、国民の税金の使い道を決めるわけだから、国民から直接選ばれた国会議員が議論もせずOKはできないでしょう。予算委員会は基本的な質疑に全ての大臣が出席しなければいけないとされているし、国会ではそれほどまでに予算が重視されるということだね。」
太郎 「まあ知ってましたけどね。たまにミスしないと生徒役を全うできないんで(笑)」
先生 「そんな配慮はいらん(笑)もうここは面倒だから先生が説明すると、新年度(4月から翌年3月まで)の予算を1月途中から始まる通常国会で話し合うから、急がないといけないわけだね。」
太郎 「参議院と衆議院が対立した時とか、参議院でなかなか決まらないときには、結果的に衆議院の議決で決定するから、衆議院で先に話し合っておかないと危ないわけですね。」
花子 「しかも予算はその年度だけの予算だから、まさにその時の民意を一番反映する衆議院を優越させるのでちょうどよさそうですよね。ちなみに時間切れで4月に間に合わなかったらどうするんですか?」
先生 「国の機能の一部が停止する。」
太郎 「?!」
先生 「うそうそ。他の国だとそういうこともあるけれど、日本は暫定予算というのを組んで当面の政府の活動をすることになっているよ。」
花子 「でも実際はそんなことは起こってないですよね?」
先生 「いや、なんと20回以上もあるよ。」
太郎 「そんなに!」
花子 「そういえば今年もめちゃくちゃギリギリの成立でしたよね。」
衆議院の優越については結果的に国会の仕事のほぼ全てを扱うことになるため、今回はここまでとし、②と③に分類した法律案、条約、内閣総理大臣の指名については、次回のブログで扱います。
それではまた、お会いしましょう。