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投稿日:2024年07月19日

テーマ: 算数

2024年中学入試より 「理由を説明させる問題」にチャレンジ 【中学受験算数】

こんにちは。
受験Dr.算数科講師の千葉 誠と申します。

 

我々プロ講師陣は、日々中学入試問題を研究しています。
今年も多くの学校の入試問題を解きましたが、出題傾向が変化している学校がいくつかありました。
今回は、2024年度中学入試で出題された問題から、これからの中学入試算数の出題傾向の変化を感じた問題を紹介します。
東京都市大学付属中学校で出題された「理由を説明させる問題」です。
「理由を説明させる問題」は、有名な学校として浅野中学校が毎年出題しており、駒場東邦中学校や栄光学園中学校でも近年出題が見られます。
上記の学校の志望者であれば対策は必須ですが、今回めずらしく東京都市大学付属中学校で出題されました。今後出題する学校が増えてくると予想しています。
「理由を説明させる問題」でなくても、考え方の記述を求める学校は多くあり、「理由を説明させる問題」に取り組むことで、記述練習や論理的思考力の養成にもなります。
今回紹介する問題は特定の単元を学習していなくても理解できる問題なので、ぜひチャレンジしてみてください。

 

【問題】東京都市大学付属中学校2024年度第1回入試問題より抜粋

A君とB君で、1枚のコインを交互に1回ずつ投げるゲームをします。ゲームは2人のうち、どちらかが2回連続で表が出るまで続けます。コインの表が出たら3点、裏が出たら1点もらえます。
A君から投げ始め、A君B君合わせて9回コインを投げ終えたところで、ゲームは終わりました。
ゲーム終了時に、B君はA君よりも得点が高くなる可能性はありますか。「可能性はある」・「可能性はない」のどちらかを答えなさい。また、ある場合はその例を1つ答え、ない場合はその理由を答えなさい。

 

【解説】

まず、条件を整理しましょう。
A君から投げ始め、A君B君合わせて9回コインを投げ終えたところで、ゲームは終わっているので、
A、B、A、B、A、B、A、B、A
の順番で、Aは5回、Bは4回投げています。
ゲームが終わるのは、どちらかが2回連続で表が出したときなので、最後に投げたAが2回連続で表を出してゲームが終わったことが分かります。
次に、聞かれていることの意味を考え、方針を立てます。
聞かれているのは「B君はA君よりも得点が高くなる可能性はあるか」です。
B君の得点がA君よりも高くなる場合が1つでもあれば「可能性はある」、1つもなければ「可能性はない」ということになります。
B君の得点がA君よりも高くなる場合を実現しようとすると、B君の得点は高く、A君の得点は低くすることになるので、「B君の得点が最も高く、A君の得点が最も低い場合」を調べるという方針を立てます。
B君は4回コインを投げています。表を出した回数が多い方が得点は高くなりますが、B君が2回連続で表を出すとゲームが終わってしまうので、B君の得点が最も高くなる4回の表裏の出方は(表、裏、表、裏)または(裏、表、裏、表)です。
よってB君の最高得点は表2回、裏2回の3×2+1×2=8点です。
A君は5回コインを投げていて、最後の2回は表です。裏を出した回数が多い方が得点は低くなるので、A君の得点が最も低くなる5回の表裏の出方は(裏、裏、裏、表、表)です。
よってA君の最低得点は表2回、裏3回の3×2+1×3=9点です。
B君の最高得点は8点で、A君の最低得点は9点なので、B君の得点がA君よりも高くなる場合はないことが分かりました。
よって、答えは「可能性はない」になりますが、理由はどのように書けばよいでしょうか。
まず、理由説明の基本形は「~なので、~から。」になります。
ここで注意してほしいのですが、文末を「可能性がないから。」としてはいけません。「可能性がない」理由を聞かれているのに、「可能性がないから」と書いても説明にならないからです。
そこで、なぜ「可能性がない」という結果になったかを振り返ってみると、「B君の得点がA君よりも高くなる場合はない」ことが分かったからでした。
そして、その根拠は「B君の最高得点は8点で、A君の最低得点は9点」でしたね。
B君が8点、A君が9点になるときの裏表の出方も書いておくと、しっかり調べたことが採点者に伝わり、説得力が増します。
以上を踏まえて、「~なので、~から。」の基本形に合わせて書くと、模範解答は以下のようになります。
解答・・・可能性はない。(理由)B君の最高得点は表2回、裏2回の8点、A君の最低得点は表2回、裏3回の9点なので、B君がA君より高い得点になる場合はないから。

 

内容として難しいものではありませんが、正確に説明するための理論の組み立て方、書き方は練習が必要な部分です。
今回の問題のキーポイントとなったのは、正しく条件整理をすることと、「B君はA君よりも得点が高くなる可能性はあるか」という聞かれ方から「B君の最高得点とA君の最低得点を調べる」という方針を立てることでした。
特に、「聞かれていることを正確に理解し、解法の方針を立ててから問題に取り組む」ことは、「理由を説明させる問題」に限らず算数において重要なポイントになります。
入試本番へ向けて、今から意識して学習していってください。

 

それでは、失礼いたします。

算数ドクター