こんにちは。
受験Dr.算数科講師の千葉 誠と申します。
算数を教えていると、頻繁に耳にするお悩みがあります。
それは、「授業で習った問題は解けるけど、テストで聞き方を変えられるとまったく解けなくなる。」というものです。
ご家庭からも「うちの子はテキストの問題も宿題も問題なく解けているのに、テストで解けないんです。解法を暗記して解いてしまっているかもしれません。」といった声をよく聞きます。
私はこの状態を勝手に「暗記算数」と呼んでいます。
今回はこの「暗記算数」状態を解決するための家庭学習の工夫についてお話いたします。
まずは次の問題を解いてみましょう。
問題
タンクに4500Lの水が入っています。一定の割合で水を蛇口から注ぎながら、同時にポンプを4台使って水をくみ出すと60分でタンクは空になり、ポンプ9台を使って水をくみ出すと25分でタンクは空になります。
(1)1台のポンプは毎分何Lの割合で水をくみ出しますか。
(2)20分以内にタンクを空にするには、少なくとも何台のポンプが必要ですか。
いわゆるニュートン算の問題ですね。
解き終わったら下の解説を見て自分の解き方と見比べてみてください。
解説
1分間で減るタンクの水の量は、1分間にポンプでくみ出しした水と1分間に蛇口から注ぐ水の量の差です。
1分間に1台のポンプからくみ出す水の量を①、1分間に蛇口から注ぐ水の量をとします。
(1)
4500÷60=75(L)・・・④-
4500÷25=180(L)・・・⑨-
⑨--(④-)=180-75
⑤=105
①=105÷5=21(L)
(2)
④=21×4=84
84-=75
=84-75=9(L)
20分以内にタンクを空にするために、1分間に減らす必要がある水の量は
4500÷20=225(L)
そのとき、1分間にポンプでくみ出す水は
225+9=234(L)
234÷21=11・・・3
11台では3L足りないので、必要なポンプの台数は
11+1=12(台)
ニュートン算のなかでも典型的な問題なので、問題なく正解できた人も多いと思います。
ここから、復習の際に意識すべき重要なポイントを2つ紹介します。
1.正解した問題についても解説を読み、自身の解法と比べてみる
答えの部分を見て、正解していたら解説は読まないという人も多いのではないでしょうか。
なぜ正解した問題の解説を読む必要があるかというと、解説と見比べながら自身の解法を再確認することで解法の定着が図れるとともに、もし解説の解法が自分の解法と違っていた場合、まだ知らなかった別の解法を吸収することができるからです。
算数は1つの問題の解き方が複数ある場合が多いので、もし解説の解法が自分の解法と違っていたら、解説をよく読んで理解し、その解法を使って似たような問題を解いてみましょう。
解説の解法で解かないとダメと言っているわけではありません。
1つの問題について複数の解法を選べるようになることで、より理解が深まり、対応できる問題の幅も広がります。
2.「式の言語化」をしながら解説を読む
2つ目は解説を読む際に意識してほしいポイントです。
今回の解説は言葉も添えて丁寧に書いていますが、塾や市販の問題集の解説は説明があまりなかったり式だけしか書かれていなかったりするものも少なくありません。そのような解説を「式の言語化」をせずに読んで、式への数値のあてはめ方だけを憶えてしまうと、根本の仕組みを理解しないまま、形式に頼って解いてしまう「暗記算数」状態に陥ってしまいます。
それを避けるために「式の言語化」が必要なのですが、「式の言語化」とはどのようなことでしょうか。
実際に今回の問題の解説の式を使って説明します。
(1)の解説の1行目の式「4500÷60=75(L)・・・④-」
これを言語化すると
「4500Lの水が入ったタンクを60分で空にしたとき、1分間で減った水の量は75Lで、これは1分間に4台のポンプでくみ出した水の量と1分間に蛇口から注いだ水の量の差である」
となります。
同じように他の式も言語化してみてください。慣れていないとなかなか苦戦するかもしれません。
当然こういった文章をノートに書きながら学習する必要はまったくありません。頭の中でスムーズに言語化できることが確認できればOKです。
「式の言語化」ができるということは、式の意味と目的を理解できているということです。
もし、正解した問題の解説を読んで、書いてある式の言語化がうまくできなければ要注意。「暗記算数」状態の可能性大です。
この「式の言語化」チェックをすることで、解けているけど実は理解の薄い単元を発見しやすくなりますので、ぜひご家庭でも取り入れてみてください。
今回は「暗記算数」状態を解決するために、
1. 正解した問題についても解説を読み、自身の解法と比べてみることで解法を定着させ、知らなかった解法を吸収する。
2. 「式の言語化」をしながら解説を読むことで根本の理解を確認する。
という2つのポイントについてお話させていただきました。
家庭学習の質の向上に役立てていただければ幸いです。
それでは、失礼いたします。