こんにちは。
受験Dr.算数科講師の千葉 誠と申します。
今回のテーマは算数の知識面についてです。
算数は計算力・思考力・作業力が重要な教科ではありますが、知識として覚えておくべきことも多くあります。
しかし、知っているからといって問題に使えるようになるとは限らないのが算数の難しいところですね。
知識を問題で使うためには、問題を読んだときに必要な知識が自然と連想される必要があります。
知識を当たり前のものとして自然に身につけるのに大事な要素が「納得」だと考えています。
それでは「納得」とはどういうことなのか、入試頻出単元の一つである「速さと比」の基本性質を題材に説明していきます。
まず、「速さと比」で最初に必ず教えられるのが以下の3つの性質です。
①速さが一定のとき、かかる時間の比と進む距離の比は等しい
②かかる時間が一定のとき、速さの比と進む距離の比は等しい
③進む距離が一定のとき、速さの比とかかる時間の比は逆比になる
集団塾にお通いの5年生であれば、夏以降に学習していて当たり前に知っている知識かもしれません。
③だけ最後が「逆比になる」となっていますね。
「速さと比」が苦手な生徒は、③を利用する問題で逆比にするのを忘れたり、①②を利用する問題でなぜか逆比にしてしまったりといったことが多発しています。
このようなことが起こる原因として、形式の似たような文章3つをただ覚えようとしているので混同してしまい、「等しかった気がする」、「逆比だった気がする」という曖昧な状態で解いていることが考えられます。
このような状態を回避し、「納得」して理解するための2つのポイントを、③の説明を例にお伝えします。
1.分かりやすい言葉に言い換える
③の「すすむ距離が一定のとき、速さの比とかかる時間の比は逆比になる」という文章は、実際に多くの教材で同じように載っていますが、「一定」という言葉は少し難しく感じます。
また、「速さの比とかかる時間の比は逆比になる」という部分も、比にあまりなじんでいない生徒には「A:BをB:Aにすればいいのかな」といった表面的な理解につながりやすいです。
「一定」を「同じ」に、また「比」の表現もより根本的な「~倍」という表現にして、
「同じ距離を進むとき、速さがA倍になったら、かかる時間は1/A倍になる」
と言い換えます。
元の文と本質的には同じですが、より身近で意味をつかみやすい文になったかと思います。
2.具体例を想像する
新しく「速さと比」を教える際に、私はよく生徒に「家から学校まで行くのに、歩いて行くのと走って行くのだとどっちが早く着く?」と質問します。
当然、生徒は「走って行く方」と答えるのですが、この質問をする意味は「速い方がかかる時間が短く、遅い方がかかる時間が長い」という意識を持たせることにあります。
次に「家から学校まで、いつもより歩く速さを2倍にしたらかかる時間はどうなる?」と質問します。
これも当然「半分になる」と答えます。
そしてこの質問を最初の説明に落とし込むと、
「家から学校までという同じ距離を進むとき、速さが2倍になったら、かかる時間は1/2倍(半分)になった」
ということになります。
速さの比とかかる時間の比の関係を確かめると、はじめの速さと2倍にしたあとの速さの比が1:2で、かかる時間が1:0.5=2:1で逆比になっていますね。
「家から学校まで歩いていくときと走っていくとき」という具体例を想像することで、実際に③の性質がどのように成り立っているかを確認できました。
皆さんも「早く着く(かかる時間を短くする)ために急ぐ(速く移動する)」という経験はあるかと思います。
③はまさにその状況を比で表現した性質であり、具体例にあてはめて想像することで、こういった性質を「当たり前」のものとして理解しやすくなります。
「納得」とは自身の体感・経験と紐づけて理解することであり、そのためにはまず知識のもととなる言葉・文章が分かりやすくとっつきやすいこと、そして具体例を想像し確かめてみることが重要です。
特に身に着けるべき知識が多い新規単元を学習する際には、今回紹介した2つのポイントを意識して取り組んで頂ければと思います。
それでは、失礼いたします