みなさんこんにちは。
理科・算数担当のT.H.です。
夏期講習も終盤の追い込み時期となりました。
夏の成果がどうなるかも、「より良い方向に修正しよう」という意識で変わります。
「ただ頑張る」という体育会系の意気込みではなく、細かい修正点を実践する努力を重ねていきましょう。
今回は単位に関しての第3回目。
式の順番と単位に関連する、細かい部分の話をお伝えします。
以前に話題となった小学校教育の話です。
→ 50 × 5 = 250 (円) これは〇
→ 5 × 50 = 250 (円) これは×
どちらも答えは同じなのに、式の数字を書く順番が違うとバツをつけられてしまうそうです。
「文章のとおりに式を作るべきだ」という意見もあれば、
「答えが合っているなら問題ないはずだ」という意見もあります。
どちらが正しいと決めるのは難しいことですね。
私はこの対立に興味は無いのですが、生徒が式を書く順番は常に注視するようにしています。
速さの3公式を例にとると、
・道のり = 速さ × 時間
・速さ = 道のり ÷ 時間
・時間 = 道のり ÷ 速さ
3つの中で一番注目すべきは、かけ算を使う「道のり」の計算です。
この式の順番が逆転してしまう生徒は、かなりの要注意信号です。
簡単な例で説明します。
時速というのは1時間あたりにすすむ道のり、いわゆる「単位量あたり」のことなので、
1時間に10㎞すすむならば、3時間あればその3倍すすむことができる。
いわゆる「比例」の考えを使っています。
この式が逆になることはありえません。
逆になってしまうということは、「単位量あたり」の発想が頭の中に存在していない。
式の意味を考えずに、「道のり=かけ算」とだけ覚えてしまっている可能性が高いです。
こうなってしまうと、前回扱ったつるかめ算の「2つの単位量当たり」なども理解しづらくなります。
水位とグラフの問題などで、つるかめ算を使いこなす応用的な発想を阻害する原因にもなります。
理科の計算単元においても、単位を意識しているかどうかの影響は大きいです。
化学計算においては、「単位量あたり」の発想しか使わないと言い切っても良いくらいです。
一例ですが、アルミニウムを塩酸に溶かす問題では、表やグラフから基準の反応量を読み取り、
それの何倍であるのか、比例計算をします。
塩酸10㎤あたり、1㎤あたりなど、単位量あたりの反応を考えているからこそ、この計算を思いつきます。
物理分野では、また別の問題が発生します。
てこのつり合いの条件は、「時計回りのモーメントと反時計回りのモーメントが等しい」ことです。
この「モーメント」とは、「物体の重さ×支点からの距離」で計算できる回転させる力の大きさのことですが、
中学入試の範囲ではモーメントには単位がありません。
モーメントは架空の数値として扱われます。
つまり、モーメントを答えなさいという問題はあり得ないはずです。
しかし一定数の生徒が、このモーメントの値を解答欄に書いてしまいます。
そういった生徒に共通するのが、やはり式の順番への意識が薄いことです。
「力×距離」で計算したり、「距離×力」で計算したり、その時々で変わってしまいます。
頭の中で解く順序が定まっていないので、どれが答えなのかもよくわからなくなってしまうようです。
話が散らかってしまいました。
結局言いたいことは、「単位を考え、式の順番を意識して計算しましょう」ということです。
まずはノートのチェックから。
式の順番が、公式とちがっていませんか?毎回同じ順番になっていますか?
公式の順序は、自然な計算方法になるように考えて作られています。
下手な自己流は良いことが無いので捨ててしまいましょう。
次は発想の確認です。
例えば旅人算の問題、自分が解いた問題を、式を使わずに説明してみましょう。
「2人のあいだが□mあるから、〇分後に出会ったとすると、1分あたり△mずつ近づくので、速さの和は…」
このように、式を使わずに相手にすらすらと説明できれば1人前です。
逆に説明につまずいてしまうようであれば、そこが弱点ポイントです。
もう一度例題や公式を見直し、単位を確認しながら解いていきましょう。
応用問題を解き始めたタイミングで伸びる生徒と伸びない生徒に分かれます。
その原因がこんな小さな単位・公式の意識による場合も少なからず存在します。
細かい部分も自分に厳しくチェックできれば、自然と成績も伸びていくでしょう。