新緑の香る季節となりました。
みなさまいかがお過ごしですか?
このすがすがしい季節、受験ドクターの講師は今年度の入試問題研究を行っています。
筆者のDもゴールデンウィークは今年の入試問題をひたすら解いておりました。
中学入試の問題はその時代を反映します。
特に社会はこの傾向が強く表れます。
たとえば、東日本大震災が起こった2011年以降、「地震」・「東北地方」・「原子力発電やエネルギー」など東日本大震災に関連する問題が出題されています。
単に「時事問題」というだけでなく、社会科は世の中の変化をもっとも反映しやすい科目だといえます。
今回のブログでは、今年度の社会の入試問題を通してこのことを見て行きたいと思います。
<問題>
表のア~エは次のいずれかの道県の様子を表しています。茨城県にあたるものをア~エから1つ選び、記号で答えなさい。
(早稲田大学高等学院中等部2016年[1]問2より)
北海道 青森県 茨城県 沖縄県
実際の問題では、以下のような用語の説明があたえられています。
「主業農家」とは、農業による所得が主で、65歳未満で、年間60日以上農業を行う者がいる農家。
「準主業農家」とは、農業以外の所得が主で、65歳未満で、年間60日以上農業を行う者がいる農家。
「副業的農家」とは、65歳未満で、年間60日以上農業を行う者がいない農家。
これらの農家の分類は読者のみなさまには耳慣れないのではないでしょうか。
<農家の分類の変化>
これまでの農家の分類は、おなじみの専業農家と兼業農家でした。
「専業農家」とは、家計の所得が農業による収入だけという農家。
「兼業農家」とは、家計の所得が農業以外による収入もある農家。
さらに、兼業農家を第1種兼業農家と第2種兼業農家に分けていました。
農業からの収入>農業以外の収入なら「第1種兼業農家」。
農業からの収入<農業以外の収入なら「第2種兼業農家」。
ところが、農家のほとんどが兼業農家という時代になり、従来の分類は意味がなくなりました。
そこで、もっと現在の農家の実態をより良く反映するような新しい分類が求められるようになりました。
新しい農家の分類は、まず農家を販売農家と自給的農家に大別します。
「販売農家」とは、文字通り販売を目的に農産物をつくる農家。
「自給的農家」とは、販売を目的とせず自分の家で食べるだけの農作物をつくるを農家。
販売農家はまた、主業農家、準主業農家、副業的農家に分けられます。
これらは従来の分類ではすべて「兼業農家」になってしまい農家の実態(農家の高齢化や農業経営の規模)がつかめませんでした。
これが上記の入試問題の「農家の分類」です。
<問題を解いてみましょう!>
茨城県は表の中のどれでしょうか?
茨城県は首都圏に近く近郊農業が発達しています。
茨城県が生産量で全国1位の農産物は、はくさい、ピーマン、メロン。
2位の農産物は、さつまいも、レタス、ごぼう、日本なし。
3位の農産物は、トマト、ねぎ。
このように農業がさかんな茨城県は販売農家の数が全国1位なのです。
表で販売農家の数は主業農家、準主業農家、副業的農家の合計なので、茨城県はアだとわかります。
その他の道県についても考えてみましょう。
イは販売農家に占める主業農家の割合が一番高くなっています。
これは農業を片手間ではなく大規模に行っている農家が多いことを意味しています。
この条件に当てはまるのは、北海道です。
ウとエが残りました。
どちらかが青森県で、どちらかが沖縄県です。
沖縄は面積が小さく(全国44位)、耕地面積も小さいので農産物も農家の数も少ないはずです。
実は沖縄県は農業や製造業よりもサービス業で働く人の割合が東京都に次いで多い県なのです。
これは沖縄県ではホテルなどの観光業で働く人が多いためです。
したがって、沖縄県がエで、青森県はウになります。
<今回のまとめ>
中学入試の問題は時代を反映します。
特に社会科は世の中の変化にもっとも敏感に反応します。
農家の高齢化や兼業化が進み、従来の農家の分類では意味がなくなりました。
現在の農家の実態をより正確に把握するような新しい農家の分類が必要となりました。
中学入試の社会の統計資料の読み取りでも新しい分類が出題されるようになりました。
中学入試の問題はまさに現代を映す「鏡」だといえます。