電車に乗っている時、踏切に電車が近づくと、踏切の信号機のカンカンカンという音は高く聞こえます。
反対に、電車が踏切から遠ざかると、踏切の音は低く聞こえます。
また、救急車が近づくと、救急車のピーポーピーポーというサイレンの音は高く聞こえます。
反対に、救急車が遠ざかると、サイレンの音は低く聞こえます。
これらの現象はドップラー効果と呼ばれています。
では、なぜドップラー効果は生じるのでしょうか?
音が聞こえるのは空気が振動するからです。
音の高低は振動数(一秒間に振動する回数)と関係があります。
音は振動数が多いと高くなり、振動数が少ないと低くなります。
高い音は一秒間に振動する回数が多くなるので、波長(山から山までの距離)は短い波形になります。
反対に、低い音は振動数が少なくなるので、波長は長くなります。
振動数とは一秒間に振動する回数、波長は波形の山から山(一周期)の距離ですから、
振動数×波長は、一秒間に音が進む距離を表しています。つまり、これは音速です。
たとえば、一周期の波長が1m、振動数が一秒間に300回(一秒間に300周期ということ)なら、
この音は一秒間に300m進みます。つまり、音速は秒速300mです。
したがって、音速と振動数と波長には、
音速=振動数×波長
という関係が成立します。
音速をV、振動数をF、波長をLで表せば、
V=F×L
となります。
下の図は音が伝わる様子を表したものです。
音は円の中心から同心円状に伝わって行きます。
図の円の線は音の波の山を表しています。
また、円と円の間隔は音の波の山と山の距離である波長を表しています。
1 電車が踏切に近づく場合
踏切の信号機が円の中心にあると考えてください。
踏切の信号機の音は同心円状に毎秒Vメートルで伝わって行きます。
いま、電車がこの円の右から左に毎秒vメートルで近づいてきたとしましょう。
信号機のある所では、音速をV、振動数をF、波長をLとすると、次の式が成り立ちます。
V=F×L・・・①
踏切の信号機の音は毎秒Vで円の中心から右に、電車は毎秒vで円の右から左に近づくので、電車の中の乗客には、
踏切の信号機の音は、V+vの速さで伝わります。電車の中に伝わる信号機の音の振動数をF’、波長をLとすると
電車の中では次の式が成り立ちます。
V+v=F’×L・・・②
①より、
F=V÷L
②より、
F’=(V+v)÷L
よって、
F<F’
これは電車が踏切に近づくと振動数が多くなることを示しています。
その結果、踏切の信号機の音は近づく電車の中で高く聞こえるのです。
2 電車が踏切から遠ざかる場合
いま、電車がこの円を左に毎秒vメートルで遠ざかっていくとしましょう。
円の中心の踏切の信号機では、音速V、振動数F、波長Lなので、
V=F×L・・・③
信号機の音は毎秒Vで円の中心から左に、電車も毎秒vで左に進むので、電車の中では信号機の音の速さは、V-vとなります。
電車の中の信号機の音の振動数をF’、波長をLとすると、
V-v=F’×L・・・④
③より、
F=V÷L
④より、
F’=(V-v)÷L
よって、
F>F’
つまり、電車が踏切から遠ざかると、振動数が少なくなるので踏切の信号機の音は低くなります。