前回は、踏切の信号機のように音源(音を出すもの)が静止している場合のドップラー効果を考察しました。
今回は、救急車やレーシングカーのように音源自体が動く場合について考えてみましょう。
音源が静止している場合、音は下の図のように中心から同心円状に伝わります。
円と円の間の距離が波長です。
音源が動いている場合、音の伝わるイメージは次の図のようになります。
図からわかるように、円と円の距離で表された波長は変化します。
1 救急車が近づく場合
救急車のサイレンの振動数をF、観測者が聞くサイレンの振動数をF’、新たな波長をL’とします。
サイレンの音は、上の図の左にずれた円の中心から、毎秒Vメートルで伝わって行きます。
救急車は毎秒vメートルで観測者に近づいています。
音速=振動数×波長
V=F×L
なので、音源の救急車では、
V-v=F×L’・・・①
他方、観測者では、
V=F’×L’・・・②
①より
F=(V-v)÷L’
②より
F’=V÷L’
よって、
F<F’
救急車が近づくと振動数は多くなるので、音は高くなります。
2 救急車が遠ざかる場合
音源の救急車では、
V+v=F×L’・・・③
観測者では、
V=F’×L’・・・④
③より、
F=(V+v)÷L’
④より、
F’=V÷L’
よって、
F>F’
救急車が遠ざかると振動数は少なくなるので、音は低くなります。
生物の中にはドップラー効果を使って生活しているものもいます。
たとえば、視力の悪いコウモリは超音波のドップラー効果を利用して獲物を捕獲しています。
また、最近ではドップラー効果を利用したスマホも登場してきています。
目的地へ移動中の自分の正確な位置を知るのに人工衛星を用いたGPSが使われてきました。
ところが、GPSは近距離の精度にはまだ問題があります。
そこで、ドップラー効果を利用して正確な自分の位置を知るアプリがスマートフォン用に開発されています。
以上、2回にわたってドップラー効果について考察してきました。
理科では、単に知識を丸暗記するだけではなく、「なぜそうなるのか?」という知的好奇心が大切です。
今回このテーマで書いたのもひとりの生徒が筆者に授業中に発した「なぜ?」という質問からでした。
「なぜ?」と問掛けること、これがすべての知的活動(学習も含めて)の原点なのです。