メニュー

投稿日:2011年08月14日

テーマ: 理科

なぜ救急車のサイレンの音は高くなったり低くなったりするのか?

前回は、踏切の信号機のように音源(音を出すもの)が静止している場合のドップラー効果を考察しました。

今回は、救急車やレーシングカーのように音源自体が動く場合について考えてみましょう。

 

音源が静止している場合、音は下の図のように中心から同心円状に伝わります。

円と円の間の距離が波長です。

 

 

 

 

 

音源が動いている場合、音の伝わるイメージは次の図のようになります。

図からわかるように、円と円の距離で表された波長は変化します。

 

 

 

 

 

 

 

1 救急車が近づく場合

 

 

 

 

 

 

救急車のサイレンの振動数をF、観測者が聞くサイレンの振動数をF’、新たな波長をL’とします。

サイレンの音は、上の図の左にずれた円の中心から、毎秒Vメートルで伝わって行きます。

救急車は毎秒vメートルで観測者に近づいています。

音速=振動数×波長

V=F×L

なので、音源の救急車では、

V-v=F×L’・・・①

他方、観測者では、

V=F’×L’・・・②

①より

F=(V-v)÷L’

②より

F’=V÷L’

よって、

F<F’

救急車が近づくと振動数は多くなるので、音は高くなります。

 

 

2 救急車が遠ざかる場合

 

 

 

 

 

 

音源の救急車では、

V+v=F×L’・・・③

観測者では、

V=F’×L’・・・④

③より、

F=(V+v)÷L’

④より、

F’=V÷L’

よって、

F>F’

救急車が遠ざかると振動数は少なくなるので、音は低くなります。

 

生物の中にはドップラー効果を使って生活しているものもいます。

たとえば、視力の悪いコウモリは超音波のドップラー効果を利用して獲物を捕獲しています。

また、最近ではドップラー効果を利用したスマホも登場してきています。

目的地へ移動中の自分の正確な位置を知るのに人工衛星を用いたGPSが使われてきました。

ところが、GPSは近距離の精度にはまだ問題があります。

そこで、ドップラー効果を利用して正確な自分の位置を知るアプリがスマートフォン用に開発されています。

 

以上、2回にわたってドップラー効果について考察してきました。

理科では、単に知識を丸暗記するだけではなく、「なぜそうなるのか?」という知的好奇心が大切です。

今回このテーマで書いたのもひとりの生徒が筆者に授業中に発した「なぜ?」という質問からでした。

「なぜ?」と問掛けること、これがすべての知的活動(学習も含めて)の原点なのです。