先日、光より速い素粒子の発見か!?というニュースが世界を駆け巡りました。
物質をどんどん小さくして行くと原子という粒になります。さらに原子を小さくして行くと、電子と原子核(陽子・中性子)になります。さらにそれらを小さくして行くと最後には素粒子という粒になります。素粒子とは、それ以上小さくならない粒子のことです。ちょうど算数でこれ以上約分できない数を素数というのと同じです。
素粒子にはいくつかの種類がありますが、今回ヨーロッパの実験で使われたのはニュートリノという素粒子です。ニュートリノは非常に質量が小さく、どんなものも通り抜けてしまうお化けのような性質があります。
これを巨大な加速器でスイスのジュネーブからイタリアのグランサッソーまでの地下を730キロ飛ばしたところ、光速(秒速30万キロ)より60ナノ秒速く到着しました(1ナノ=10億分の1)。
この実験結果は今後追試が必要ですが、もし、光速より速い物質が本当に存在するなら、アインシュタインの相対性理論の修正をせまる大発見です。
相対性理論によると時間も空間も伸びたり縮んだりします。巨大な質量のあるものの近くでは空間は歪んでしまいます。また、速度の速い乗り物の中では時間はゆっくりとしか進みません。
いま、光速に近いロケットで宇宙旅行を1年間して地球に帰ってきたとしましょう。光速に近いロケットの中では時間はゆっくりとしか進みません。たとえば、ロケットの中の1年間は地球では30年間に相当するとしましょう。すると、このロケットは30年後の未来の地球に帰還したことになります。つまり、未来にタイムトラベルしたことになります。
このように、「未来へのタイムトラベル」は理屈の上では可能です。もちろん、光速に近い乗り物があったらという仮定の上ですが。
では、「過去へのタイムトラベル」は可能でしょうか?
もし、時間をさかのぼることができて、戦国時代にタイムスリップしたと仮定しましょう。(昔、「戦国自衛隊」という映画がありましたね。)そこで、織田信長に本能寺の変の危険を知らせて信長の命を助けたとしましょう。すると、その後の秀吉の天下も家康の江戸幕府もありません。これは明らかに歴史の事実と矛盾します。このような矛盾が生じたのは、そもそもはじめの仮定が誤っていたからです。したがって、時間をさかのぼることはできないのです。
上は背理法を使った論理学的証明ですが、アインシュタイも相対性理論の中で光速を超える物質は存在しないとしました。つまり、過去へのタイムトラベルはできないということです。
ところが、今回の実験結果は背理法にも相対性理論にも真っ向から矛盾するものです。
あらゆる理論は真実のための仮説に過ぎません。相対性理論とてまた一つの仮説です。そして、理論は新たな事実の発見によって常に塗り替えられて行きます。
今後の実験結果の追試が楽しみです。