中学受験の塾の講師をしていてうれしいときは、もちろん担当している生徒が入試に合格したときです。が、それに勝るとも劣らないのは、入った中学で彼(女)らが充実した時間を過ごしているという知らせがあったときです。
Aさんは、世田谷区にある某有名女子中が第一志望でした。彼女は理科、社会は成績が良かったのですが、国語、算数が偏差値で20近く志望校に足りませんでした。Aさんはほんとにがんばり屋さんでした。志望校の十年分の過去問を3回繰り返しました。その結果、3回目はどの科目も9割程度取れるようになっていました。ところがです。人生とは厳しいものです。これだけ努力したのにAさんは第一志望の中学には入れませんでした。。。しかし、Aさんのえらい点は、第二志望の中学に入った後、くさらずにがんばったことです。一年後、彼女は学年全体で一番になったと電話で知らせがありました。そして、毎日が楽しくて仕方ないそうです。長期的に見れば、努力はやっぱり報われたのでした!
Bさんは、もうすぐ6年になるという5年の2月から受験ドクターで中学受験の勉強をはじめました。ふつう中学受験は4年生から、遅いひとでも5年生からはじめますので、Bさんは通常3年か2年かけて学習することを正味1年足らずで駆け抜けたことになります。Bさんは本当にまじめなひとで筆者の出す大量の宿題を一度もサボったことはありませんでした。その結果、彼女は見事第一志望に合格しました。夏に、久しぶりに彼女はドクターにやって来ました。学年全体(200人)で20番になったそうです!夏の日差しのせいではなく彼女は輝いて見えました。中学生活が充実していることが筆者には伝わってきました。
最後に、C君の話をしないわけにはいきません。C君がドクターに来たのは、6年の6月ごろでした。社会はほぼゼロの状態からのスタートでした。彼には入試までに「四科のまとめ」を最低3回繰り返すよう指示しました。夏季講習で「四科のまとめ」の基本編を1回通してやりましたが、9月が終わり10月になっても彼の社会の成績は低空飛行のままでした。彼のお母様も心配され10月はじめに面談をしました。そのとき、筆者は彼の「四科ま」と家庭での社会の学習ノートを見せてもらい、おもわず目頭が熱くなったのを覚えています。そのノートは彼の癖のある字でびっしりと歴史や地理の用語で埋め尽くされていましたし、「四科ま」はボロボロになっていました。筆者は確信しました。彼は必ず伸びると。案の定、10月末ごろから彼の社会の成績は驚異的な伸びを示しました。まるで押さえつけられていたバネが一挙に飛び跳ねるように彼の社会の成績は跳ね上がりました。年末ごろにはどこの中学の過去問でも8割は取るようになりました!(実際、社会だけなら開成でも合格できました。)そして、彼も見事に第一志望の中学に合格しました。さらに、うれしいことに、入学した中学でも社会の成績だけは学年で2番なのだそうです。これは明らかに中学受験の猛勉強の「おつり」でしょう。
後に、筆者はC君に何回くらい「四科ま」を繰り返したか尋ねました。
C君はさりげなく言いました。
「20回はやりました。」
模試の結果で落ち込んでいるひとや志望校の選択でお悩みのかたがいらっしゃいましたら、どうか上の3人の先輩の話を参考にしてください。
中学受験は彼(女)の人生の通過点に過ぎないこと。そして、受験の後の中学生活のことやら、さらにもっと長ーい彼らの人生のことやらを大人は考えてあげる余裕をもつべきなのではないでしょうか。
彼(女)らが今直面していることは自分たちもかつて幼き日に通過してきたことなのですから。
人生の「先輩」として。