ある日、最終コマの後も熱心な生徒の質問に答えていたらすっかり帰宅が遅くなってしまいました。
東京郊外にある筆者の家の近くを午後11時頃とぼとぼ歩いていると、東の地平線近くに「赤い月」が見えました。
その夜の月は下弦の月より少し太った月でした。
塾講師の悲しい性か、月を見上げて歩きながら理科の知識の確認を頭の中で試みていました。
真夜中(午後12時)に東の地平線に見えるのが下弦の月。だから、午後11時頃に東の地平線近くに見えるのは、後1~2日で下弦の月になるような少し太った月だな。
よし!正解!!
目の前の事実を科学的に説明できてスッキリ。
しかし、新たな疑問が生じてきました。
月と言えば白色か黄色がふつうなのに、今夜のは「赤い月」なのです。
どうして今日の月は赤いのだろう?
筆者は、赤い月を見上げて歩きながらその理由を考えてみました。
またまた塾講師の悲しい性です。。。
赤い月は東の地平線近くにありました。
考えてみれば、朝日も夕日もみんな赤いですが、それらはすべて地平線近くにあります。
どうやらここにこの問題を解くカギがあるようです!!
では、太陽や月の高度が低い時にそれらが赤く見えるのはなぜでしょう?
虹の色を思い出してみてください。
虹は一番内側が紫で一番外側が赤です。
これは赤が一番波長が長い光(屈折率が小さい光)であることを示しています。
丸い地球の周りにはどこでもほぼ同じ厚さの大気の層がありますが、光が大気の層を通過する角度によって光が通過する大気の厚さは異なります。
太陽や月が観測者の真上にある時より地平線近くにある時の方が光が横切る大気の層は厚くなります。
これは、道幅が一定な道路を横切る時、道路に垂直に渡れば最短で渡れますが、道路を斜めに渡れば道路を横切る時間は長くなるということと同じ理由です。
光が厚い大気の層を通過する時、青などの波長の短い光は散乱してしまい波長の長い赤い光だけが観測者の目に届くのです。
皆既月食のとき月が赤銅色に見えるのも、これと同じ理由で、波長の長い赤い光だけが月に届くからなのです。
要するに、この日午後11時頃東の地平線近くにあった下弦の月より少し太い月が赤い色をしていた理由は次のように考えられます。
月(すべての天体)が地平線近くにある時、その光は大気の層を斜めに横切るので、光が通過する大気の層はとても長くなります。
そのため、光がその長い大気の層を通過する間に、大気の中にある塵や水蒸気の粒などとぶつかって波長の短い光は散乱してしまい、波長の長い赤い光だけが筆者の目に届いたというわけです。
その夜地平線近くに見えた赤い月はちょっと不気味でしたが、筆者にいろいろと理科の問題を投げかけてくれたのでした。