多くの大手塾のカリキュラムに共通する事項で、新5年生でつまずきやすいポイントをご紹介します。
5年生の前半で学ぶ内容で最も大切なことは、何といっても割合です。
割合に関係する単元として「割合」や「食塩水(濃度)」、「売買損益」の3つについて、どこが難しいのか、小学生は何を難しく感じるのか、という点を解説していきます。
既に理解している大人からすると「子供が何を分からないのか分からない」となりやすい単元ですが、つまずきやすいポイントをご紹介しますので、ご家庭で指導される際の参考になさってください。
①割合……【キーワード:30%って何の30%?】
割合は他者との関係性で決まる数です。
例えば「リンゴを30個食べました」であれば、状況に関わらずリンゴは30個です。
しかし、
「箱に入っているリンゴの個数の30%のリンゴを食べました」であれば、箱に何個入っているかによって、食べた個数は変化します。
この感覚は小学生が初めて学ぶものです。「30%」と言われたときに、それだけでは数が決まらず、全体が何個なのかを考えないといけない、ということです。
割合は多くの塾では5年の前期に学習します。
6年生で算数が苦手になっているお子様の多くはこの割合を苦手としており、ここでつまずいたことが原因でそれ以降の割合が絡んだ全ての単元が分からなくなっています。
割合の学習が始まったら、ここが正念場だと思って頑張りましょう。
良くない暗記方法として「比べる量」や「もとにする量」という言葉を使って関係性の式を覚えてしまう方法がありますが、これは絶対に避けてください。(「くもわ」と呼ばれるものです)
中学入試の合格を目指すのであれば、割合の概念は肌感覚として理解しておかないと厳しいことになります。
「学校に120人の生徒がいるのなら、その30%は36人」というような言葉が日常会話で使えるくらいまで理解できることを目指しましょう。
②食塩水【キーワード:1より小さい数で割る】
食塩水の問題では、大人の言葉で言うところの「割り戻す」という発想が肝要になります。
食塩水の初歩の問題ですと
答:200×0.05=10g
となります。これが少し形を変えると
答:10÷0.05=200g
という計算をして答えを求めます。
ここで、4年生までで身についていた意識を一つ捨てないといけません。
それは「かけ算すると数は大きくなる。割り算すると数は小さくなる」というものです。
割合を学習する前の段階ではほぼ全ての生徒がこの意識を持っていますが、今後は通用しないので捨てなければなりません。
これが成り立つのは1より大きい数の場合のみです。
当然のことではありますが、例としては5×3=15ではかけ算すると数は大きくなりますが、5×0.1=0.5 のように、1より小さい数を掛ければ数字は小さくなります。
これ以上に肌感覚で理解しにくいのが「割り算して数が大きくなる場合がある。」というものです。
5÷0.1=50 ですので、1より小さい数で割れば数は大きくなります。
この「1より小さい数で割り算する」という発想に馴染めずに割合や食塩水を苦手としてしまう生徒が多発します。
大人からすると難しくないように思えますが、この時期の小学生にとっては未知の発想です。
5年生の後半になって「食塩水の問題が苦手なんです」という相談を受ける場合は、大体はこの「1より小さい数で割る」という発想が理解できていないケースが多いです。
お子様の勉強を保護者様がみられる場合には、この点に注意してみてください。
③売買損益……【キーワード:1より大きい割合】
売買損益でネックになりやすいのは「利益」の感覚です。
例えば基本問題では
答:1000×(1+0.2)=1200円
となり答は1200円です。しかし初学者の小学生は最初は次のような式で考えるはずです。
1000×0.2=200…利益
1000+200=1200…定価
こちらの方が生活感覚として理解しやすいでしょう。しかし「2割の利益を見込んだ定価」という状況で「×1.2」が発想できるようになる必要があります。
例えば次のような問題
答:1440÷1.2=1200円
この手の問題になると、「2割の利益」が「1.2倍」と読み替えられないと解けなくなります。
食塩水で登場する割合は1より小さいものに限定されていましたが、売買損益では、1より大きい割合が登場します。
「仕入れ値の2割増しの定価」→「仕入れ値の1.2倍が定価」と読み替えられるようにする必要があります。
それは暗記ではなく、感覚として腹落ち出来るレベルでの理解が求められます。
塾の週テストで点数を取るだけであれば「利益の時は1を足す!」のような単純暗記でも乗り切れるかもしませんが、それでは今後加速度的に難しくなる問題に対応できなくなります。
ここは時間がかかっても、生活感や肌感覚のレベルでの理解を目指したいところです。
以上です。5年生前期の学習で、算数の得意不得意を左右する分水嶺になり得る3つの単元として「割合」「食塩水」「売買損益」を紹介してきました。
うまく学習を進めることが出来れば、5年生から算数を得意に変えることも可能です。
伸びていく生徒は、新しい考え方を素直な気持ちで受け入れているように思えます。
きっと今の勉強は入試の応用問題を解くのに必要なことなんだと信じて、一つの解法に固執せず、幅広く勉強してください。
こだわりを捨てて全体像を把握しながら勉強することが大切です。
運動に例えるなら、目の前だけを見ているサッカー選手とコート全体が把握できているサッカー選手の差に似ています。
並行していくつもの単元を勉強しなくてはならないため大変な学年である5年生ですが、全体像をしっかりつかんで計画的に勉強を進めましょう。
石井伸二でした!