みなさん、こんにちは。受験ドクターの亀井章三です。
算数の問題を解くには、読解→思考→計算の3ステップを要します。
思考や計算も大切ですが、入り口にあたる「読解」がきちんとできていな
ければ、当然正解にはたどりつけません。そこで、算数の問題文の読み
方をマニュアル化し、確実に次のステップ「思考」に進めるアドバイスをし
ていきます。
前回は、説明の部分を分かりやすく翻訳する、という所まで説明しました。
今回はその続き、例示と条件の読み方・答えの求め方についてです。
例示とは「読み間違えそう・誤解しそうな部分を、例を示すことで正しく導
こうとする、作問者の計らい」で、条件とは「守るべきもの」です。
この例示と条件にも気を配ることがミスを減らす最後のポイントです。
前回使用した桜蔭中の問題です。
桜蔭中学校 H28問題Ⅳ
直方体の形をした池に噴水があります。池の深さは2mで、底面は1辺の長さ
が10mの正方形です。噴水は、毎時25分から20分間、池の外から引いてきた
水をふき出します。噴水に使う水の量は毎分100Lです。また、毎時27分から
10分間、池の水を外に流し出します。流し出す水の量は毎分150Lです。
たとえば、9時25分から20分間、噴水は水をふき出します。また、9時27分
から10分間、池の水を外に流し出します。これを1時間ごとにくり返します。
ある日の午前7時の水の深さは1mでした。このとき、次の問いに答えなさい。
ただし、水の蒸発は考えないものとし、噴水の水はすべて池の中に落ちるとしま
す。また、噴水の水が噴き出してから池に落ちるまでの時間も考えないものとし
ます。
(1)この日の午前8時の水の深さを求めなさい。
(2)この日の午前10時30分の水の深さを求めなさい。
(3)この日は午前11時に雨が降り始めました。雨が降っている間、水面の高さ
は毎分0.05㎜ずつ上がっていきます。午後2時35分に雨がやんだとき、
池の中の水の量は何Lであるか求めなさい。
説明=青、問い=赤、条件=茶、例示=緑 です。
答えを出すのに必要ない部分は黒字のままです。
<2>例示の読み方
問題と設問における「例示」の部分を抜き出します。
・たとえば、9時25分から20分間、噴水は水をふき出します。
・また、9時27分から10分間、池の水を外に流し出します。
・これを1時間ごとにくり返します。
例示は接続詞「たとえば」がついた部分です。ここでは解答につながる
ヒントはありません。説明の部分を読んで自分が理解した内容が間違って
いないか確認しましょう。例示を読んで、「確かに」と納得できればOKです。
<3>条件の読み方
問題と設問における「条件」の部分を抜き出します。
・ただし、水の蒸発は考えないものとし、噴水の水はすべて池の中に落ちるとします。
・また、噴水の水が噴き出してから池に落ちるまでの時間も考えないものとします。
条件は接続詞「ただし」がついた部分です。条件には2つのパターンがあります。
読み間違いや二重解釈を除くため、作問者が追加したもの
解答の範囲を限定するもの
そこで、条件の内容を以下のように読み替えます。
水の蒸発は考えない=10分間外に水を出す以外に水は減らない
噴水の水はすべて池の中に落ちる=池の水量は外から引いてきた水が全て加わる
落ちるまでの時間も考えない=25分ちょうどから水量は増え始め、45分ちょうどに
増えることが止まる
これらは①のパターンで、解答への影響・注意はほとんどありません。
<4>問いの読み方
最後に「問い」の部分を見て、どのように答えを求めていくか考えます。
(1)この日の午前8時の水の深さを求めなさい。
設問から何を求めるのか逆算していきます。
8時の水の深さ→7時の時の高さ1mから何㎝増えたか→1時間で増
えた水と減った水の量を求める
これで正解までの道筋が作れましたので一つずつたどっていきましょう。
1時間で増えた水と減った水の量
7時から8時までの間は、20分間水が入り、10分間水が出るので
増えた水 100×20=2000L、減った水 150×10=1500L
結局、2000-1500=500L増えました。
何㎝高さが増えたか
500L=0.5㎥ 0.5÷(10×10)=0.005m=0.5㎝
③8時の水の深さを求める
100+0.5=100.5㎝
答え 100.5㎝
(2)この日の午前10時30分の水の深さを求めなさい。
基本的に(1)と同じような問題です。しかし、わざわざ同じ解き方の問題を2問
は出題してきません。必ず何か「ワナ」があります。
それは30分という時刻です。25分から水が入り、27分から水を出すというこ
とは10時25分から30分までの5分間水が入り、10時27分から30分まで
の3分間水が出るということです。ここに気をつけて8時から考えましょう。
2時間30分で増えた水と減った水の量
増えた水 20+20+5=45分間入ったので、100×45=4500L
減った水 10+10+3=23分間出たので、150×23=3450L
結局、4500、-3450=1050L増えました
何㎝高さが増えたか
1050L=1.05㎥ 1.05÷(10×10)=0.0105m=1.05㎝
③10時30分の水の深さを求める
100.5+1.05=101.55㎝
答え 101.55㎝
(3)午後2時35分に雨がやんだとき、池の中の水の量は何Lであるか求めなさい。
雨の説明が入っていたことを思い出しましょう。ここでは、雨によって増えた水も
考えます。
10時30分から14時35分までに増えた水と減った水の量
増えた水(噴水) 10時30~45分、11時25分~45分、12時25分~45分
13時25分~45分、14時25~35分 の合計85分間
100×85=8500L
減った水 10時30~37分、11時27分~37分、12時27分~37分、
13時27~37分、14時27~35分 の合計45分間
150×45=6750L
結局、8500-6750=1750L=1.75㎥水が増えました。
これで水面は、1.75÷(10×10)=0.0175m=1.75㎝上がります。
そして、増えた水(雨水) 11時から14時35分までの215分間
水面の高さは、215×0.05㎜=10.75㎜=1.075㎝上がります。
水面の高さは、101.55+1.75+1.075=104.375㎝になりました。
したがって水量は、1000㎝×1000㎝×104.375㎝÷1000=104375Lです。
答え 104375L
いかがでしたか。文章題は、問題文の読解が済めばほぼ完了しており、あとは数値
を探し丁寧に計算するだけということです。
3回分のブログの内容をまとめます。
(1)文章題の問題文は「説明」「問い」「条件」「例示」の4つに分けて読む
説明:問題の中心部分、出来事や操作内容を書いている
問い:問題文の最後に出てくる、答えなければいけないもの
条件:接続詞「ただし」に続く文、解答に範囲を設けたりする
例示:接続詞「たとえば」に続く文、直前の指示を例を示している
(2)説明の部分を式や図、絵にして、問題文の内容を理解する
(2)例示や条件の部分を確認する
(2)問いの文から「何を求めれば良いか」を読み取り、正解までの道筋を作る
この手法を身につけて文章題を得意にしていきましょう。
それでは、また次回お会いしましょう。