皆さまこんにちは、受験ドクターの桑田です。
梅雨時は外出しにくい分、絶好の勉強日和とも言えますね(笑)。
さて、今回は「算数のセンス」についてお話しいたします。
「あの子はセンスがある」
「私はセンスがないのかも」
「センスがないから、やっても出来ない」
「やっても出来ないということは、センスがないのかな」
「センス」とは、現状を受け入れるには、ある意味便利な言葉かもしれませんね。
確かに、算数にセンスの良し悪しはあります。
一を聞いて十を知るように、短時間で深いところまで理解して、あっという間に伸びていく…。そんな風に「センス」に恵まれた子はいます。
しかし、そうでないからといって、中学受験で不利だということはありません。
むしろ、「センスの無さ」は中学受験の合否には関係ないと断言してしまいます。
少しだけ、自分の話をさせてください。
私、恥ずかしながら身体の固さにはちょっと自信があります。そのせいか、子供時代は体育の中でも体操系の種目が大の苦手でした。特にマット運動は…。
さて、高校の体育の授業でのことです。
私は、倒立(逆立ち)が出来ない男子高校生でした。腕の力がなくて立てないとか、バランスが保てないとかではなく、どんなに一生懸命蹴りあげても、脚が垂直の状態まで上がらないという状態でした…。
友達に補助してもらって脚を上げてもらえばその後は何とか立っていられるのですが、自力では、立つ以前の問題だったのです…。まぁ、体操のセンスが無いことは間違いありません。
ところが。
私が悪戦苦闘しているところをチラッと見た先生のたった一言で、簡単に自力で倒立ができるようになってしまったのです!
「首を起こせ」
詳しい理論は今でもよくわかりませんが、倒立をするときには、顔が地面と平行になるように、首にグッと力を入れて起こすようにしなくてはいけなかったのですね。私は、ずっと頭のてっぺんを下に向けたままで倒立しようとしていました。
首を起こしたら、余計に脚が上がりにくくなるんじゃないかと思いつつも、言われたとおりにやってみたら、今まで苦労していたのが嘘のように、簡単に脚が上がって、自力で逆立ちできてしまいました!
少しだけのつもりが、やや長くなりました…。
正しいフォームを知らずに、いくら頑張っても出来なかったことが、正しいフォームを身につけたら、センスのない私でも出来てしまった。
このエピソードは強く記憶に刻み込まれていて、中学受験指導をするようになってからも、折につけ思い出します。
そして、
いわゆる「出来ない子」は「正しいフォーム」を知らないだけ。まずは「正しいフォーム」を伝えてやればよいのだ。
これが、指導の際の基本姿勢の1つになっています。
受験勉強を、スポーツの練習にたとえる文脈は非常に良くあります。
オリンピックのメダリストの努力の仕方だとか、甲子園球児の練習法だとか…。
確かに、アスリートのマインドで参考になることは多々ありますが、中学受験は日本一や世界一を目指そうという競技ではありません。
日本一や世界一を目指すためには、どんな強敵が来ても倒さなくてはなりません。
もちろん、過酷な努力は前提として、最後のところではセンスや才能が勝負を決める場合もあることでしょう。
一方、中学受験においては、
「同学年の、限られた地域の子供たちの中で、定員である数百人以内に入る。」
というのが、合格の条件です。
そもそも、入試は4科の総合力。しかも数百人の中に入れば良いのです。
合格を勝ち取るために「算数のセンス」なんてものが左右するほどのレベルのことは必要ありません。
もちろん、センスがあるに越したことはないですが、仮にそうでなかったとしても、
①正しいフォームを知る。
②正しいフォームを身に付ける。
③正しいフォームを守って努力する。
こんなステップを着実に踏んでいくことで、普通の子が合格レベルの実力を付けることは充分可能です。
頑張っているのに、結果が出ない。
これはセンスのせいではなく、正しいフォームを知らずに頑張っているということです。
正しいフォームを教わりさえすれば、思いのほか簡単に結果が出始めるかもしれません。
さて、算数の正しいフォームとはどんなものでしょうか。
例えば、闇雲な演習を繰り返す前に、単元ごとに理解しておくべき「根本原理」もありますし、計算や一行問題の練習の仕方、テストの解き直し方など、勉強法のフォームというものもあります。
次回からは、より具体的な問題や勉強法を題材にして、「正しいフォーム」についてお話ししていきたいと思います。