みなさん、こんにちは。受験ドクターの桑田陽一です。
前回の予告通り、今回は具体的な問題を使って算数のお話をします。
4・5年生向けですが、6年生にも役に立つところがあるかもしれません。
そんなわけで、いきなり例題。
例題:
電車とバスの両方を利用している人は何人いますか?
集合算の練習問題です。
この問題を解くのに、どんな方法をとるでしょうか?
式だけで…、という生徒はあまり多くないでしょう。
おそらく、何らかの図や表にまとめて解きたくなるはずです。
電車とバスのように2種類の要素があって、それらに当てはまる・当てはまらないという条件が与えられたときに、多くの生徒が描くのは「ベン図」でしょう。
こんな図ですね。
ここに、問題に与えられた数字を書き込んでみます。
クラス全体の人数の「40人」や、電車やバスを利用している人数の「20人」「25人」は、とりあえずそれぞれを表す文字の近くに小さく書き込んでおくことがポイントです。
さて、今回求めたいのは「電車とバスの両方を利用している人」ですから、図のこの部分。
充分練習を積んだ6年生なら「簡単だ!」という人もいるかもしれませんが、慣れていないとどこから手をつけて良いのか迷ってしまいがちです。
ベン図を描いたら、下の図の赤い部分に注目するのが手筋の1つ。
この部分に入っている人数は何人でしょうか?
20+25=45人ではありませんよ。それでは2つの円が重なった部分の人数を二重に数えてしまいます。
クラス全体の40人から、どちらも利用していない5人を引いて、35人が正しい人数ですね。
この後も、少し丁寧に進めてみましょう。
図の青い部分は電車を利用している20人ですから、先ほどの35人から引くと15人。これは「バスを利用していて電車を利用していない人」の人数です。
あとは、下の図の赤い部分に注目すると…
バスを利用している25人から先ほど求めた15人を引いて、答えは10人であることが分かりました!
解き進めるにつれて目の付け所があちこちに移っていくので、まだベン図を使った集合の問題に慣れていない人にとっては、ついてくるのが少し大変だったかもしれません。
ところで、この問題は表を使って解くことも出来ます。
こんな表を見たことのある人も多いでしょう。
ベン図と比べると、描くのは正直めんどうです…。
ベン図なら、四角を1つ、丸を2つ、さらっと描けばよいのと比べると時間もかかります…。
なにはともあれ、せっかく表を描いたので、数字を書き込んでみましょうか。
例えば「電車を利用している」20人はバスを利用しているかどうかは分からないので、「計」の欄に書き込むことに注意しましょう。
このように数字を書き込んだら、表の赤い枠の人数を求めることになりますね。
さて、どうでしょう。
この後、何をすれば良いのか、ベン図と比べると分かりやすいのではないでしょうか?
例えば…
青い枠の数字に注目して、1つ空欄が埋まりました。
さらに、
ここまでくれば、赤枠の数字も20-10=10人と求められますね。
表を描くまでは面倒でしたが、描いた後は何だか頭をあまり使わずに機械的に答にたどり着いてしまいました。
見てきたように、ベン図と表の特徴をまとめると、以下のようになります。
ベン図:
● 描くのは楽。
● 描いた後は、頭を使うかも。
表:
● 描くのは面倒。
● 描いた後は、さらさら解ける?
どちらにも長所も短所もあるので、「集合算はベン図に決め打ち!」のように、1つの解法だけにこだわるのはお勧めできません。
集合算について言えば、
● 自分にとって簡単に解けそうな問題は、ベン図でさらっと解く。
● 複雑そうな問題は、表を描いて問題の状況をつかみやすくする。
という方針が良さそうです。
集合算に限らず、同じ問題を解くのにいくつかの道具があることは多いのですが、それぞれの長所や短所まで意識しておけると良いですね。