こんにちは、受験ドクター算数科の桑田陽一です。
7月の講師ブログをお届けします。
前回は、「3つの箱の問題」と題して、算数クイズをお届けしました。
まずは、問題の復習から。
初めに3つの箱がありました。
この中の1つだけにごほうびが入っています。
太郎くんはそのうちの1つを選びました。
その後、お母さんが残りの2つのうち1つの箱を開けて空であることを見せてくれました。
そして、空の箱を片付けてしまいました。
さて、ここで太郎君は、選んだ箱をもう1つの箱に変えても良いと言われました。
ごほうびをもらうチャンスをなるべく大きくするためには…
(2)もう1つの箱の方に変える。
(3)どっちにしても可能性は五分五分。別に変わらない。
この中で、正しいのはどれでしょうか?
だいたいこのような内容の出題でした。
正確な問題文は、前回の記事を参考にして下さいね。
それでは、解答解説編に参りましょう!
10年以上前、私がこの問題に初めて触れたときには、深く考える前に、
(3)どっちにしても可能性は五分五分。別に変わらない。
だと直感しました。
そして、これは見事に不正解なのです!
でも、読者のみなさんの中にも(3)だと思った人が多いのではないでしょうか。
だって、最後に残ったのは2つの箱。このどちらにごほうびが入っている可能性も同じように思えます…。
ここで、ちょっと初めに戻って考えてみましょう。
最初に太郎君は、3つのうちから箱を1つ選びます。
さて、この時点では、選んだ箱にごほうびが入っている可能性と入っていない可能性、どちらの方が高いでしょうか?
これはあまり迷わず答えられそうですね。
3つのうち、1つの箱が「当たり」で2つが「はずれ」の箱なのですから、初めに選んだ箱にはごほうびが入っていない可能性の方が高いですね。
では、初めに選んだ箱が「当たり」だった場合と「はずれ」だった場合について、その後の動きを確認してみます。
①初めの箱が「当たり」だったとき
分かりやすいように最初から全ての箱が開いた状態にして考えてみます。
太郎君が最初に選んだ箱には、ラッキーにも(?)ごほうびが入っています。
お母さんが、空き箱のうちの1つを片付けました。
さて、ここで太郎君はどうするべきか。
すでに「当たり」の箱を選んでいるのですから、もちろん箱を変えるべきではありませんね。そのままにしていればごほうびがもらえ、変えてしまえば「はずれ」です。
実際には箱は閉じていますので、どうすべきか迷ってしまうところなのですが…。
②初めの箱が「はずれ」だったとき
では、太郎君が初めに選んだ箱が「はずれ」だった場合にはどうなるでしょう?
太郎君の選んだ箱に、ごほうびは入っていません。
お母さんは、選ばなかった2つの箱のうち、空の方を開けて片付けます。
そして、この状態に。ここで、太郎君はどうするべきか?
今度はもちろん変えた方が良いに決まっていますね!箱を変えれば「当たり」です!
もし、もう1つの箱の方にごほうびが入っていた場合にも…
お母さんは必ず空き箱の方を開けて片付けますので、
このようになって、やはり箱を変えればごほうびがもらえることになります。
以上をまとめると、
①初めに選んだ箱が「当たり」だったとき→箱を変えなければ「当たり」
②初めに選んだ箱が「はずれ」だったとき→箱を変えれば「当たり」
ということが分かります。
初めの時点では「はずれ」を選んでいる可能性の方が高いのですから、
(2)もう1つの箱の方に変える。
が正解だと分かりました。
厳密には小学校の学習範囲外になりますが、確率(確からしさ)という言葉を使って言うと、「箱を変えれば2/3の確率で、箱を変えなければ1/3の確率で当たる」ことになります。
中学受験算数の難問を解くときに、「直感力」や「直観力」は大切な要素です。
しかし、直感や直観で何かが見えた後、それを論理的に裏付ける思考力はそれ以上に大切なこと。
算数を得意だと思っている人ほど、直感に頼りすぎないよう気をつけて今後の学習を進めて下さいね。
今回はここまで。