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投稿日:2022年10月11日

テーマ: 算数

場合の数~区別する・しないで大違い~

みなさんこんにちは、受験Dr.の桑田陽一です。
10月の講師ブログをお届けします。

今回は、前回に続いて、場合の数。
「区別する」「区別しない」で、考え方がガラリと変わる話の続きです。

前回は、2題の例題を紹介しました。

(1)5個の赤玉をA、B、Cの3個の箱に分けて入れます。赤玉の入れ方は全部で何通りありますか。
ただし、赤玉が1個も入らない箱があってもよいものとします。

(2)5人の生徒をA、B、Cの3つの部屋に分けて入れます。生徒の入れ方は全部で何通りありますか。
ただし、生徒が1人も入らない部屋があってもよいものとします。

「玉」は区別しないけれど、「人」は区別して考えるのが場合の数のお約束!というのが前回の話。
したがって、(1)と(2)で答えが変わり、(1)は21通り、(2)は243通りになることを解説しました。
詳しくは、前回のブログを参照してください!

 

さて、今回はさらに2題を見てみましょう。

(3)5個の赤玉を、区別のつかない3個の箱に分けて入れます。赤玉の入れ方は全部で何通りありますか。
ただし、赤玉が1個も入らない箱があってもよいものとします。

(4)5人の生徒を、区別のつかない3つの箱に分けて入れます。生徒の入れ方は全部で何通りありますか。
ただし、生徒が1人も入らない箱があってもよいものとします。

前回は「A、B、Cの3個の箱」でしたが、今回は「区別のつかない3つの箱」になりました。
(4)は「生徒を箱に入れるなんて!」と思う人もいるでしょうが、「区別のつかない3つの部屋」では、何だか不自然なので、あえて箱のままにしてみました。

ともあれ、箱の区別がつかなくなると、考え方をどのように変えれば良いのか、意欲のある人はここで少し考えてみましょう。
2題のうちの1題は、結構難しいかも?





では、解説です!

(3)
こちらは、前回の考え方を理解していれば、割と簡単です。

同じ色の玉は区別がつかないものとして考えるのでしたね。
前回の解説でも示したように、区別のつかない5個の玉を3組に分ける方法は、

(0、0、5)
(0、1、4)
(0、2、3)
(1、1、3)
(1、2、2)

以上の5通りありました。

ここで、前回は箱に「A、B、C」と区別があったので、それぞれの組み合わせごとに、玉をどの箱に入れるのかを考える必要がありました。
しかし、今回は箱に区別がありません。
ということは、上記の5通りがそのまま答えになるということです!

と、こんな風に、箱の区別がつかないと、問題が簡単になると思いきや…?

(4)
正直、こちらはかなりやっかい…。上級者向けの問題です。

「人」はそれぞれ区別がつくというお約束。
前回と同じく、「太郎」「次郎」「三郎」「四郎」「五郎」という名前がついていると考えましょう。

箱の方には区別がないので、名前のついた5人を3つのグループに分ける方法の数が、そのまま答えになります。
ただし、「0人のグループ」があってもよいことに注意。

5人を3つのグループに分けるときの人数の組み合わせは、(3)と同じく、

①(0人、0人、5人)
②(0人、1人、4人)
③(0人、2人、3人)
④(1人、1人、3人)
⑤(1人、2人、2人)

の5通りです。
箱に区別はないけれど、人の方には区別があるので、上記の5通りについて人の入れ方がそれぞれ何通りあるかを考えていきます。

①(0人、0人、5人)

これは、5人全員が1グループに集まるということ。
1通りしかありません。

②(0人、1人、4人)

これは、5人を「1人」と「4人」に分けるということですね。5年生以上であれば、すでに見たことがあるはず?
こんなときは、人数の少ない方に注目して考えるのが定石です。

「1人」のグループに入る人の選び方は、5人から1人なので、もちろん5通り。
「4人」のグループには、残った人たちが自動的に入ることになるので、もう考える必要がありません。

③(0人、2人、3人)

5人を「2人」と「3人」に分けるということ。
②と同じように人数の少ない「2人」の選び方を考えればOKですね。
5人から2人を選ぶ場合の数は、5×4÷2=10通りです。

④(1人、1人、3人)

さて、ここからは少しやっかいです。

「1人」「1人」「3人」のうち、人数の少ない「1人」のグループから決めていきましょう。

はじめに、1つ目の「1人」グループの決め方は、5人のうち1人を選ぶので、5通り。
次に、2つ目の「1人」グループの決め方は、残った4人のうちから1人を選ぶことになるので、4通り。
残った3人は自動的に「3人」グループを作ります。
よって、結局のところ5×4=20通り!

と、考えたくなるかもしれません。

しかし、例えば、
「太郎」「次郎」「三郎・四郎・五郎」という選び方と、
「次郎」「太郎」「三郎・四郎・五郎」という選び方は、
1番目と2番目のグループの順番が入れかわっているだけで、分け方としては同じですね。
よって、上で求めた20通りのうち、2通りずつ同じ分け方が含まれていることになります。

したがって、20÷2=10通りが、正しい場合の数です。

⑤(1人、2人、2人)

あと一息!
「1人」「2人」「2人」のうち、まずは人数の少ない「1人」のグループから決めます。
「1人」グループの決め方は、5人のうち1人を選ぶので、5通り。
次に「2人」グループのうちの片方を決めましょう。
残った4人のうちから2人を選ぶことになるので、4×3÷2=6通り。
残った2人は自動的に最後の「2人」グループを作ります。

5×6=30通り、としたくなりますが、やはり、
「太郎」「次郎・三郎」「四郎・五郎」と
「太郎」「四郎・五郎」「次郎・三郎」
などは同じ分け方なので、④と同じように2で割って、正しくは30÷2=15通りです。

これで、すべての場合の数が出揃いました。
①~⑤で求めた値を足し合わせると、1+5+10+10+15=41通りとなりました!

箱に玉を入れたり、人をグループ分けしたりという問題には、多くの受験生が触れてきていることでしょう。
箱や玉に区別がつけられるかどうかで、考え方が変わることを、前回と今回で見てきました。

古くは、1996年の東大入試でも類題が出題されるなど、大学入試でも頻出のテーマであることから、中学入試でも、問題のネタになりやすいところ。
特に上位校を目指す受験生は、意識しておきましょう。

今回はここまで。

算数ドクター