みなさんこんにちは、受験Dr.の桑田陽一です。
7月の講師ブログをお届けします。
今回は場合の数について。
いわゆる「組分け・部屋分け」の問題を通して、意外と意識できていない人が多い「場合の数のお約束ごと」の確認をしてみようと思います。
では、いきなり例題。
(1)5個の赤玉をA、B、Cの3個の箱に分けて入れます。赤玉の入れ方は全部で何通りありますか。
ただし、赤玉が1個も入らない箱があってもよいものとします。
(2)5人の生徒をA、B、Cの3つの部屋に分けて入れます。生徒の入れ方は全部で何通りありますか。
ただし、生徒が1人も入らない部屋があってもよいものとします。
さて、上の2題を見て、「あー、そういうことね」と違いにすぐ気がついた人はきっと大丈夫。
逆に、「玉」が「生徒」に、「箱」が「部屋」になっただけで、「算数の問題としては同じじゃないの?」と思った人は、要注意です。
区別する?区別しない?
今回のポイントです。
場合の数のお約束ごとの1つに「同じ色の玉は区別しないが、人は区別する」というのがあります。
(1)で箱に入れるのは「玉」、(2)で部屋に入れるのは「人」ですね。
(1)の問題文は実は少し不親切。テキストや試験では「区別のできない5個の赤玉」などとなっている場合も多いのですが、そういう注意書きがないことも結構あります。
仮に注意書きがなかったとしても、ほかに特別な設定が無い限り、同じ色の玉は区別できないものとして考えます。
一方で、「人」の場合。
問題文に名前が書いていなかったとしても、人はそれぞれ区別するのがお約束。
だって「区別のできない5人!?」なんて、ちょっと怖いですよね。
「Aの部屋に太郎くん、Bの部屋に次郎くん」という入り方と、「Aの部屋に次郎くん、Bの部屋に太郎くん」という入り方は、区別して2通りと数えます。
これが玉の場合は、どちらも「AとBに1個ずつ」の同じ入れ方として1通りと数えることになるわけです。
というわけで、パッと見ると同じように見える2題ですが、(1)の答えは(2)の答えよりもだいぶ少なくなるはず。
解説
(1)にはいろいろな解法がありますが、まずは「和分解→並べ替え」の考え方を押さえましょう。
区別のつかない5個の玉を3組に分ける方法は、
(0、0、5)
(0、1、4)
(0、2、3)
(1、1、3)
(1、2、2)
以上の5通りです。
さらに、それぞれの組み合わせについて、A、B、Cのどの部屋に何個入るのかを考える必要があります。
すべて箱の玉の個数が異なる(0、1、4)、(0、2、3)の2組については、例えば(0、1、4)であれば、
Aに0個、Bに1個、Cに4個
Aに0個、Bに4個、Cに1個
Aに1個、Bに0個、Cに4個
Aに1個、Bに4個、Cに0個
Aに4個、Bに0個、Cに1個
Aに4個、Bに1個、Cに0個
と、6通りの入れ方があります。
これは、(0、1、4)という3つの異なるものの並べかえ方として3×2×1=6通りとも求められますね。
ともかく、(0、1、4)、(0、2、3)の2組に対して、それぞれ6通り。つまり6×2=12通りです。
次に、同じ個数の箱を含んでいる(0、0、5)、(1、1、3)、(1、2、2)の3組については、例えば (0、0、5)であれば、
Aに0個、Bに0個、Cに5個
Aに0個、Bに5個、Cに0個
Aに5個、Bに0個、Cに0個
と、3通りの入れ方しかありません。
3組に対して3通りずつ、つまり3×3=9通り。
先ほどの12通りと合わせて、12+9=21通りが(1)の答えです!
さて、(2)。
数学の問題としてはこちらの方が易しいのですが、中学受験生にとっては意外とやり慣れておらず、かえって難しく感じる人も多いかも?
これは「太郎」「次郎」「三郎」「四郎」「五郎」と書いた玉を、それぞれA、B、Cの箱のどれかに入れていくのと同じ。
空の部屋ができても良いので、5人とも他の人の入り方に関係なく、自分の部屋を勝手に決めることができます。
「太郎」の入れ方はA、B、Cのいずれかで3通り。
「次郎」の入れ方もA、B、Cのいずれかで3通り。
「三郎」の入れ方もA、B、Cのいずれかで3通り。
「四郎」の入れ方もA、B、Cのいずれかで3通り。
「五郎」の入れ方もA、B、Cのいずれかで3通り。
よって、3×3×3×3×3=243通りが(2)の答えだと分かりました!
このように「区別する」「区別しない」を意識することは、場合の数の問題でとても重要なこと。
次回は、その辺をもう少し詳しく見てみましょう。
今回はここまで。