みなさん、こんにちは。受験Dr.の桑田陽一です。
今回は「中学受験生も解ける大学入試数学」2024年編の第2弾。
前回は慶應義塾大学理工学部の問題を紹介しました。今回も、同じ慶應大学から商学部の問題を見てみます。
問題
a<b<c.かつ= 2を満たす自然数の組(a、b、c)をすべて求めよ。
(慶應義塾大学 商学部 2024)
今回は、このままでも理解しやすい問題文ですが、念のため少し補足しておきます。
「かつ」という言葉は聞き慣れない人もいるでしょう。「そのうえ」「しかも」という意味で、数学ではよく使われます。
「自然数」という用語は、前回の問題にも登場しましたが、「1以上の整数」のことです。
小学生のみなさんにとっては「整数」という用語とほとんど同じですが、「整数」には0も含みます。
整数→0、1、2、3、4、…であるのに対して、
自然数→1、2、3、4、…という違いがあります。
小学生向けに書き直してみるとこんな感じ。
= 2を満たす整数の組(a、b、c)で、a<b<c.であるようなものをすべて求めなさい。
「前回の問題よりも解きやすそうだ!」と感じる受験生も多そうです。
実際、この問題には、意欲のある5年生以上であれば充分に取り組むことができます!
やってみようかな、と思った人はここで読むのを止めてチャレンジ!
…
…
…
…
…
…
解説
では、解説です。
a<b<cという条件に注目し、aの値が小さい方から順に調べていきましょう。
①a=1のとき
元の式にa=1を入れてみると、 = 2、つまり = 1です。
a<b<c.であることから、bは2以上の整数です。bの値も小さい方から調べていきます。
b=2とすると、 = 1、つまり = 0となりますが、このようなcの値は存在しません。
b=3とすると、 = 1、つまりとなり、c=9であれば条件を満たします。
b=4とすると、 = 1、つまりとなり、c=6であれば条件を満たします。
b=5とすると、 = 1、つまりとなり、c=5であれば条件を満たしそうですが…。
そう、b=c.=5では、a<b<cの条件を満たしませんね。
そして、これ以上bを大きくすると逆にcは小さくなり、もうb<cの条件を満たすことはありません。
よって、a=1のときの調べ上げはこれで完了!
まずは、(a、b、c)=(1、3、9)、(1、4、6)の2組が得られました。
②a=2のとき
元の式にa=2を入れてみると、 = 2、つまりです。
a<b<c.であることから、bは3以上の整数です。b=3から順に調べていくのですが…。
とりあえず、b=3としてみると、、つまりとなります。
これを満たすcの値を求めるには、まずと両辺の逆数を取ると良いでしょう。と、値が整数になりません。
b=4とすると、、つまり = 1となり、c=3という値が得られますが、これはb<cの条件を満たしません。
bをこれ以上大きくすると、cは小さくなるので、a=2のときに条件を満たすb、cの値はもうありません。
さて、この先a=3、4、5…と、どこまで調べたら良いのでしょうか?
実は、a<b<cであることから、a=2であれば、bは3以上、cは4以上の整数です。ここでa=2、b=3、c=4と、考えられる中で1番小さい数を式に入れて計算してみると、 となり、条件式の値である2よりもわずかに小さくなっています。
ここから、分母にあるa、b、cの値を大きくしていくと式の値は小さくなっていくので、a=2以上の範囲には条件式を満たすような(a、b、c)の組は存在しないことが分かります。
以上より、求める(a、b、c)の組は①で得られた(1、3、9)、(1、4、6)の2組で全てであるということが分かりました!
答えの2組を求めることができた人も、その2組以外には存在しないことまできちんと確かめられたでしょうか?
まとめ
この問題のように、a→b→cのように順番を決め、3つの数のうちの1つを固定しながら他の2つを書き出していくような解法は、「場合の数」や「いもづる算(不定方程式)」など、中学受験算数の中でもよく出てきますね。
例:大中小3つのサイコロを振ったとき、出た目の和が10になる場合の数は?
10円、20円、50円切手を組み合わせて260円を作るとき、組み合わせは全部で何通り?
…
せっかく最後まで読んでくれたみなさんは、ここで見た「3つのうち1つを固定して、順に考える」という考え方を、これまでの経験と関連付けて再確認しておきましょう。
今回はここまで。