みなさん、こんにちは。受験Dr.の桑田陽一です。
3月の講師ブログをお届けします。
今回は、「中学受験生も解ける大学入試数学」シリーズの2025年版として、2月12日に行われた慶應義塾大学理工学部入学試験の数学から1題を紹介します。
中学受験算数の分野で言えば「数の性質」の問題。意欲のある新6年生であれば、充分チャレンジできる内容です。
では、さっそく問題へ。
問題
nを自然数とする。1からnまでの自然数の中で6または8または9で割り切れるものの個数をa(n)で表す。このとき、a(30)=[ ア ]となる。また、a(n)=1000を満たす最大のnは[ イ ]である。
使われている記号を少しだけ改めましたが、上記はほぼ元の問題文通り。
「自然数」というのは数学用語ですが、ここでは、1,2,3,4,…と続く「0以外の整数」のことだと思っておけば問題ありません。
あとはこのままでも意味が取れそうですが、分かりやすく中学受験生向けの問題文に書き換えてみます。
問題(改)
(1) 1~30までの整数のうち、6または8または9で割り切れるものは何個ありますか。
(2) 1~nまでの整数のうち、6または8または9で割り切れるものが1000個ありました。nとして考えられる整数のうち、最大のものを求めなさい。
これならば、ずいぶん見覚えのありそうな形。(1)ならば新5年生も正解できそう!?
さて、自分で解きたい人はここで読むのを止めて考えてみましょう。
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では、解答解説です!
(1)
計算で求めることも出来ますが、1~30という狭い範囲ですから、6、8、9それぞれの倍数を書き出す方が、かえってミスもしにくく、分かりやすいでしょう。
6の倍数→6,12,18,24,30の5個。
8の倍数→8,16,24の3個。
9の倍数→9,18,27の3個。
ただし、「18」は6と9の倍数の両方に、「24」は6と8の倍数の両方に現れています。
この2個のダブりを取り除き、5+3+3-2=9個が答えですね。
(2)
今度は1000個という大きな数なので、全てを書き出すのはさすがに大変です。
ここでは「周期」の考え方を用いましょう。
6,8,9の最小公倍数は72。
1~72の範囲での個数を考えれば、それ以降は72を周期とした繰り返しになっています。
1~72の範囲について、
6の倍数→6,12,18,24,30、36,42,48,54,60,66,72の12個。
8の倍数→8,16,24,32,40,48,56,64,72の9個。
9の倍数→9,18,27,36,45,54,63,72の8個。
この中には、ダブっているものもあることに注意しながら小さい順にならべてみると、
6,8,9,12,16,18,24,27,30,32,36,40,42,45,48,54,56,60,63,64,66,72
の22個あることが分かります。
したがって、1~72、73~144、145~216…というように72を周期として、6または8または9で割り切れるものは22個ずつあります。
これが1000個になるときを求めるので、1000÷22=45あまり10より、46周期目の10番目の数を考えましょう。
1周期目の10番目の数は、上記に書き出したとおり32。
1周期あとになるごとに72ずつ増えるので、46周期目の10番目の数は、32+72×45=3272と求めることが出来ました!
…
…
っと、これでは詰めが甘い!
問題で問われているのは、6または8または9で割り切れるものが1000個になるような最大のnでした。
上で求めた1~3272の範囲で確かに1000個となりますが、nを3273としても6または8または9で割り切れるものの個数は増えず、1000個のままです。
1000個のままで、nを最大どこまで大きく出来るか?3273,3274,3275は6でも8でも9でも割り切れず、範囲を1~3275まで広げても1000個です。
次の3276は6や9で割り切れるので、範囲を1~3276とすると1001個になってしまいますね。
つまり、求める最大のnは3275です!
現在は、ちょうど春期講習直前というところ。
出典が、一流大学である慶應義塾大学の入試問題ということもあり、(2)を正確に解ききるのは、新6年生でもまだ難しい時期でしょう。
一方で、中学受験算数の各テキストに、「数の性質」の標準~応用問題として載っていてもおかしくないレベルの問題であることも、また事実。
「数の性質」や「場合の数」などの単元は、今みなさんが勉強している内容そのものが、中学入試のみならず大学入試にも直結しています。
たまには遠い将来のことも少し思いつつ、日々の勉強を頑張っていきましょう。
今回は、ここまで。