こんにちは。
受験Dr.の松本 佳彦です。
さて、本日2月22日は「猫(ねこ)の日」です。
猫の鳴き声(にゃん・にゃん・にゃん)と掛けて制定された記念日ですが、中学受験でも「猫」に関する問題がよく出題されています。
今回は、そんな「猫」にまつわるあれこれを、実際の入試問題を交えつつ紹介したいと思います。
(タイトルの「子子子子子子」も猫に関連する言葉です。何と読むか考えてみましょう。答えはこのブログの最後に書いてあります。)
❶国語:猫にまつわることわざ・風習
猫は古くから人類にとって馴染みのある動物であり、「猫」が入ることわざも数多くあります。
それぞれの意味を考えると、古来の人が「猫」に対して抱いていたイメージが見えてきます。
「猫に小判」…貴重な物でも、その価値が分からない者にとっては役に立たない
「猫に鰹節」…好物の見張りをわざわざ猫にさせるような、油断できず危険な状態のこと
「猫の手も借りたい」…気まぐれで役に立たない猫の手伝いでも欲しくなるほど忙しい
「猫なで声」…猫がなでられた時に発するような、機嫌を取ってこびるような声
これらの例を見ると、猫に対してあまり良い印象が持たれていないようです。
以前のブログでご紹介した、十二支の順番を決定するレースについても、猫はねずみに間違った日付を教えられたせいで遅刻した、という損な役回りを担っています。
一説によると、病気のお釈迦様に届けようとした薬が木に引っかかってしまい、それを取ろうとしたねずみを猫が邪魔した、ということで、仏教では猫は好かれていない、と言われています。
(お釈迦様が入滅した(亡くなった)時の様子を描いた「涅槃図(ねはんず)」でも、多くの動物がお釈迦様の周りにいる中、猫は描かれていないことがほとんどです)
猫には気の毒な話ですが、ことわざの意味を覚える上では、上述したイメージが役に立ちます。
人に懐かず家につき、気の向くままに過ごす――「猫」と聞くと思い浮かべるこれらの印象は、昔の人も同じように抱き、それがことわざや慣用句として残っている……すなわち、猫の様子を考えることで、語句の意味が頭に入り易い、という訳です。
もちろん嫌われているばかりではなく、日本では昔から猫が飼われ、可愛がられてきました。古くは弥生時代から、日本に住む人々は猫と触れ合ってきたと考えられています。
飼い猫が突然いなくなった時は、「まつとし聞かば 今帰り来む」と百人一首の一節を記すことで、猫が戻って来る、と言うおまじないもあった程です。
❷理科:「猫が顔を洗うと雨が降る」
「ツバメが低く飛ぶと雨が降る」「夕焼けの翌日は晴れ」等と同じく、自然現象や経験則に基づく天気予報です。(「観天望気」といいます)
猫はよく、自分の前足で顔を洗う仕草をしているイメージがあります。
先に挙げた十二支のレースでは、猫が天の神様(お釈迦様、という話もあります)から「顔を洗って出直してきなさい」と言われた為、猫はよく顔を洗っている、と語られています。
では、「猫が顔を洗うと雨が降る」と言われるのは何故なのでしょうか?
猫のひげはセンサーとしての役割を果たしています。
低気圧が近付くことで空気中の湿度が増し、水滴がヒゲについてしまうので、思わず顔を洗ってしまう、と言われています。
また、湿度が高くなることで、体表に付いたノミの動きが活発になってかゆくなるから、という理由もあるようです。
この例のように、天気にまつわる言い伝えには、科学的な根拠が発見されているものも多いので、それぞれの仕組みについて知っておくと、天気との対応も覚えやすくなります。
❸中学入試での出題例
実際に、中学入試で「猫」についての言葉が出題された例を見てみましょう。
①次の□に入る漢字一字を答えなさい。(2023 鎌倉学園中学校)
猫の□ 意味:面積がせまいことのたとえ。 答え:(猫の)額(ひたい)
②□にあてはまる言葉をひらがな二文字で答えなさい。(2023 聖光学院中学校)
最近は□□も杓子も海外旅行に行きたがる。(だれもかれも) 答え:ねこ(も杓子も)
③【A】に入る最もふさわしい慣用句を次から選び、記号で答えなさい。(2022 早稲田中学校 改題)
(不安で黙ったままの少年に対して)「なんだよ。さっきから、【A】みたいに」 答え:借りてきた猫
④次の1~6の□に当てはまる言葉を後から選び、記号で答えなさい。(2022 灘中学校 改題)
1 窮鼠□をかむ 2 鶏口となるも□後となるなかれ … 1の答え:(窮鼠)猫(をかむ)
⑤次の1~8の言葉のたとえとして用いることができる言葉を後から選び、記号で答えなさい。(2021 灘中学校 改題)
… 5 突然 6 変化 7 理解 … 6の答え:猫の目のよう
上のように、「猫」に関連する言葉は中学入試の問題でもよく出題されています。多くは他の動物を含んだことわざ・慣用句を伴い、それぞれの意味を正しく覚えられているかを問う内容になっています。
ここに挙げたことわざ・慣用句についても、それぞれ猫のどのような性質やイメージに基づいて作られた表現か、ということを思い描き、意味や使い方を覚えましょう。
❹大学入試に登場した「猫」
ここからは少し「おまけ」の内容です。「比例・反比例」の分野で学習する「x、y」という文字の式が出てきますが、高校の「数学」の内容に触れており、中学受験生にとっては見慣れない記号も多く含まれています。「学習を続ければ、将来こういった問題も解けるようになる」という前向きな気持ちを持って読んでみてください。
1986年に、秋田大学の医学部・教育学部の入試で出題された数学の問題です。6つも式がありますが、一つ一つ丁寧に整理していけば、グラフを描くことは難しくありません。
さて、実際にグラフを描いてみると…
このように、猫の顔が出てきました。(式ごとに色を分けてあります)
もちろん、ただ出来上がった形を見て楽しむ問題、という訳ではなく、「xを-x(マイナスx)と置き換えても式が変わらない(偶関数)→グラフが線対称の形になる」ということを踏まえた上で取り組むことで、時間を短縮できる、という、論理的・数学的思考力を問う問題となっています。
いかがでしたでしょうか。
言葉の意味を覚える際、その由来や根拠を関連付けておけば、試験の時にも思い出し易くなります。
今回ご紹介したもの以外にも、猫にまつわる言葉は沢山あるので、国語辞典の「猫」の項目を調べて、関連する言葉を探してみましょう。
ちなみに、冒頭で挙げた「子子子子子子」は、平安時代の嵯峨天皇と小野篁(おののたかむら)のエピソードに由来する言葉です。
天皇から「子子子子子子子子子子子子」を読んでみるよう命じられた篁が、「ねこのこのこねこ、ししのこのこじし(猫の子の仔猫、獅子の子の仔獅子)」と読んでみせた、という出来事が、『宇治拾遺物語』などに記されています。
「子」という字を、「こ」(親子 など)、「し」(辛子 など)、「じ」(障子 など)、加えて前回ご紹介した十干十二支の「ね」、という4通りに読み分け、意味が通るように当てはめたという、篁の機転が伺える話です。
中学受験生の皆様も、難問に直面した時は、あらゆる角度から解法を考え、機転を利かせて取り組んでみましょう。
それでは、今回はこの辺りで失礼いたします。