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投稿日:2024年09月30日

テーマ: 算数

受験算数の問題に慣れよう~中学受験クエスト・解答編~

こんにちは。
受験Dr.の松本 佳彦です。

前回の記事では、RPG(ロールプレイングゲーム)風の算数の問題を出題しました。
今回は問題の解説を行います。
それぞれの問題がどの単元に属しており、どういった考え方で進めればよいかを記してありますので、確認しながら解き進めてください。

 

問題再掲

勇者・戦士・魔法使いの3人が、魔王を倒して国を救うため、魔王の城にやって来ました。

①魔王には配下の四天王A・B・C・Dがおり、四天王を全員倒さないと魔王の部屋へたどり着くことはできません。
四天王Dは、四天王Cを倒した後でなければ倒すことができませんが、それ以外はどのような順番で倒しても構いません。また、Cを倒した直後にDを倒す必要はなく、間に別の四天王を倒しても構いません。
このとき、四天王全員を倒して、魔王の部屋へたどり着く行き方は何通りありますか。

②3人は四天王Dと戦いました。
四天王Dを倒すには、四天王Dの体力を0にする必要があり、勇者だけで攻撃すると20回、戦士だけで攻撃すると25回、魔法使いだけで攻撃すると50回で、四天王Dの体力がちょうど0になります。
このとき、最初に勇者だけで8回攻撃し、次に勇者と戦士の2人で何回か攻撃し、最後に3人で3回攻撃すると、ちょうど四天王Dの体力を0にできます。
勇者と戦士の2人で攻撃するのは何回ですか。なお、2人以上同時に攻撃した場合も「1回」の攻撃と考えます。

③3人は魔王の元にたどり着きました。
②の場合と同様、魔王の体力を0にすると、魔王を倒すことができますが、魔王は1回攻撃を受けるたびに、体力を少しずつ回復します。回復する体力の量は常に一定です。
このとき、勇者だけで攻撃すると50回、戦士だけで攻撃すると70回で、ちょうど魔王の体力を0にできます。
1回の攻撃で減らすことのできる体力が、②の場合と同じだとすると、最初から3人で攻撃した場合、魔王の体力を0にするには、何回の攻撃が必要ですか。②と同様に、2人以上同時に攻撃した場合も「1回」の攻撃と考えます。また、攻撃によって体力が0を下回る場合も、「体力が0になった」と考えます。

 

●①の攻略法
「何通りありますか」と問われているので、「場合の数」の問題であること、また、順番が訊かれているので、「順列」の単元に属していることが分かります。

❶樹形図を書く
左から順に書き並べていき、CがDよりも左(先)に来ているものを数え上げます。
このとき、DがCよりも左に来ているものを最初から書かずに進めようとすると、書き忘れ、見落としが起こりやすいので、最初に全て書き出した後、DがCより左に来ているものを消していくと良いでしょう。
ただし、「左端がD」になることはありませんから、A~Cから始まるものを書けば数え終わります。

図

 

上の図の通り、全部で12通りです。

 

❷計算
「DはCよりも後」というように、2人の順番が決まっている場合、CとDの2人を同じ記号(ここでは「○」)で置き換えて考えます。
A、B、○2つを横に並べる方法には、例えば以下のようなものがあります。
A ○ B ○   ○ ○ A B  ○ B A ○
このとき、左の○をC右の○をDと置き換えると、
A C B D    C D A B   C B A D
のように、「必ずCの後にD」という条件を満たす順列が出来上がります。
同じもの2つを含む、4つのものを並べる順列は、「Aの入る場所を4か所から選ぶ」→「Bの入る場所を残り3か所から選ぶ」→「自動的に残りの2か所は全て〇」という順序で考えられますので、4×3=12で12通りです。
要素の数が多くなってくると、樹形図を描くのが大変になります(例えば、「五人衆A~E、DはEよりも先」という設定だと、順列の数は全部で60通りに及びます)ので、計算方法を覚えておくと解き易いですが、根拠が示せていれば、解法はどちらでも構いません。自分にとって馴染みのある方法で解きましょう。

●②の攻略法
同じ四天王Dの体力をちょうど0にするのに、「勇者だと20回」「戦士だと25回」「魔法使いだと50回」必要、とあります。
問題の構造としては、「水そうの水を空にするのに、ポンプAだと5分、ポンプBだと4分、ポンプCだと3分かかります」という問題と共通しており、「仕事算」の問題だと分かります。
仕事算を解くためには、全体の仕事をマル数字で置き換えて考えます。
四天王Dの体力を1として計算することもできますが、分数が出てきて計算が大変になります。
なるべく計算をしやすくするために、ここでは四天王Dの体力を、20回、25回、50回の最小公倍数である100と考えます。
このとき、3人がそれぞれ、1回の攻撃で減らすことのできる体力は以下のようになります。(これを仕事量といいます)
勇者…100÷20=5
戦士…100÷25=4
魔法使い…100÷50=2
2人以上で攻撃するときは、それぞれの仕事量の和が1回の仕事量になります。
ここで、問題文の条件に合わせて攻撃したとき、四天王Dの体力がどうなるかを計算してみます。このとき、攻撃の順番を「勇者1人→3人→勇者と戦士の2人」と入れ替えて考えます。
勇者だけで8回…5×8=40  100-40=60  残り体力60
3人で3回…(542)×3=33  60-33=27  残り体力27
勇者と戦士の2人で□回… (54)×□=9×□
よって  9×□=27  ⇔  □=3
より、2人で攻撃するのは3回です。

 

●③の攻略法
減らした体力が回復する、という構図は、「牛が食べた草がまた生える」「ポンプで水をくみ出しながら、蛇口から水を入れ続ける」という問題、すなわちニュートン算と共通しています。
以下に線分図を書きます。このとき、魔王が1回の攻撃ごとに回復する体力を1とします。

図

赤枠の部分に注目します。
勇者と戦士が攻撃で減らした体力の差は、魔王がそれぞれの場合で回復した体力の差と等しくなります。
すなわち、302011.5
これを勇者の線分図に当てはめると、回復した体力の5075にあたるので、魔王の初めの体力が250-75=175と計算できます。(戦士に当てはめた場合、70105にあたり、280-105=175となり、同じ値が出ます)
ここで、最初から3人で攻撃した場合を考えると、
減らせる体力…54211
攻撃のたびに1.5回復
ですので、結果的に、魔王の体力は1回攻撃するごとに、11-1.5=9.5 9.5減っていくことになります。
初めの体力は175ですので、
175÷9.5=18.421…
攻撃回数は必ず整数ですので、必要な回数は19回です。

 

いかがでしたでしょうか。
問題の内容を整理すれば、どの問題も中学入試の算数では典型題であり、作図や計算を通して解が求められます。
そこに色々な問題設定が加わることで、一風変わった内容に仕上がっています。
問題文の記述を読み解いたり、条件を図示したりすることで解法を導く必要がありますが、その為には前回の記事でも述べた通り、「基礎・基本の徹底」が出来ていることが重要です。
その上で、問題文のどこに手掛かりが潜んでいるかを見つけるために、様々なパターンの問題に触れておくと更に有効です。
RPGでも、遊び慣れている人は地図を見ただけで、どの辺りに宝箱やボスキャラクターが配置されているか、というのが自然と分かってきます。
入試まで4カ月のこの時期、授業の内容や問題集を一通り復習して、単元・分野ごとの基礎的な解法や、手掛かりを見つけ出す感覚が身に付いているか、今一度確認しておきましょう。

今回はこの辺りで失礼いたします。

算数ドクター