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投稿日:2025年01月17日

テーマ: 算数

算数の問題と解答の感覚を身につける~中学受験算数の正答率アップ法~

こんにちは。
受験Dr.の松本 佳彦です。

中学入試の算数では、限られた試験時間の中で、多くの計算をする必要があります。
解き終わった後に全ての問題を見直すことが理想ですが、どうしても時間が足りない場合もあります。
そんな時、算数の問題や答えに対する「感覚」を身につけていれば、最初に解答する段階で正確な答えを出し易くなります。
そこで今回の記事では、算数の問題を解く際に必要な答えの「感覚」について説明いたします。

 

❶速さ:「不自然な速さには注意する」

【問題】
Aさんは、125㎞の道のりを、24時間かけて進みました。このときのAさんの速さは時速何㎞ですか。

速さは「道のり(距離)÷時間」で求められますので、上の問題では125÷24という計算を行うことになりますが、この「125」という数字が曲者です。
中学入試の算数で「125」と出てきたら、計算に慣れている人はすぐ「125×8=1000」という式が頭に浮かびます。あまつさえ、今回の問題ではもう一つの数字が「24」、すなわち「8×3」です。早く問題を解こうと焦っていると、次のような計算をしてしまうかもしれません。

【式】125×24=125×8×3=1000×3=3000
【答え】時速3000㎞

もちろん、解いた後で問題をよく見直せば、立てた式が間違えていることがすぐに分かりますが、見直す時間がなければ、上の答えがそのまま自分の解答になります。
しかし、「Aさん」の移動速度として「時速3000㎞」というのは正しいのでしょうか。
時速3000㎞というのは、分速に直すと50㎞、秒速だとおよそ833ⅿです。
これはマッハ約2.5(音速のおよそ2.5倍)、戦闘機並みの速さです。
Aさんの移動手段については書かれていませんので、この解答が正しい可能性は0ではありませんが、凡そ不自然な数値と言えるでしょう。
こういった解答が出てきた場合は、すぐ次の問題に進むのではなく、何故そうなったか、式や計算を間違えているのではないか…と、一度立ち止まって考えてみましょう。
特に、小問を複数含んでいる大問では、小問(2)(3)は小問(1)から繋がっているので、(1)の答えを間違えると残りの問題も落としてしまいます。不自然な数値はその場で点検して、間違いをなくしましょう。
「1回のテストの点数が100点を超えている」「食塩水の濃度が50%(注)」等、速さ以外の問題でも同様です。
(※注…飽和食塩水の濃度は約26%です)

 

❷図形:「図は不正確に描いてある」

【問題】(ラ・サール中学校(鹿児島) 2020年度 大問6)
右の図の三角形ABCで、AB=6㎝、BC=4㎝です。辺BC上の点で、BP=1㎝となる点Pを中心として、三角形ABCを回転させると、AはDに、BはEに、CはFにうつって、FはAC上、BはDE上となりました。辺ABとDFの交点をQとして、次の問に答えなさい。(小問略)

右の図は、実際に問題用紙に描かれていたものの引用です。
上の問題を解き進めていくと、途中で三角形ABCがAB=ACの二等辺三角形であることが分かります。
ここから相似の関係を見つけて、辺の長さを求めることになりますが、図の三角形ABCは二等辺三角形には見えません。

問題図

では解き方が誤っているか、というとそうではなく、これは図の方が正確に描かれていない、ということです。
図形の問題では、実際に定規やコンパス、分度器を当てて長さを測ることができないように、辺の長さや角度が不正確に描かれていることがあります。
求めた解答と図に相違があると不安になりますが、問題文に書かれている条件に従って計算や検証を進めていれば、そちらが正しい解答ということになります。
❶の場合とは逆に、描かれている図に違和感があったとしても、そこで惑わされないことが重要になります。

 

❸個数・日数・回数:「小数や分数は切り上げか切り捨てか」

個数や人数を求める問題では、速さと比べると、不自然な解答には気付きやすいです。例えば、平均を求める問題以外では、「3.5人」や「7と5分の3個」といった、整数ではない解答は明らかな間違いです。
気を付けたいのは、仕事算で「3.7日」や「4.6回」という値が出てきた場合です。
仕事算では、「仕事を終わらせるまでの日数や回数」が問われますので、「3.7日→3日では終わらない4日」「4.6回→4回では終わらない5回」という変換が必要となります。
では、以下のような問題ではどうでしょうか。
【問題】
クッキーを15枚作るのに、小麦粉を100ℊ使います。また、できたクッキーを8枚ずつ袋に入れることにします。
小麦粉500ℊを全て使ってクッキーを作るとき、クッキーは何袋できますか。

【考え方と式】(一例)
15×(500÷100)=75 より、小麦粉500ℊでクッキーは75枚作ることができる
75÷8=9.375 (または 9あまり3

「何袋」と訊かれているので、小数で答えることはできません。
そこで仕事算の場合と同じように、「9袋では足りない→10袋」、としようとすると、10袋目には余った3枚しかクッキーが入っていないことになります。
問題文に「クッキーを8枚ずつ袋に入れる」とありますので、3枚しか入っていない袋はまだ「1袋」として完成していないことになります。
ですので、この問題の答えは「9袋」となります。
整数になっていない部分を切り捨てるか切り上げるか、という扱いが異なっていますが、仕事算の日数や回数の場合は「仕事を余らせてはいけない」、袋入りのクッキーの場合は「1人だけ3枚しかもらえないというのはいけない」のようにイメージすると区別がつき易くなります。

 

いかがでしたでしょうか。
試験本番では解答の時間が限られており、見直しや解き直しの時間が取れない可能性もあります。
正確な解答を導き出すためにも、受験校の過去問演習を今一度繰り返し、算数への正しい「感覚」を習得しましょう。

今回はこの辺りで失礼いたします。
入試本番で良い結果が出せることを祈っております。

算数ドクター