こんにちは。思考大好き講師の永田です。
いよいよ入試本番の時期になってきました。東京の入試まであと半月、関西の入試は今週末が本番です。今回は本番の試験時間中での答案見直しについてお話ししたいと思います。
まずはタイトルに出てきた「モンティ・ホール問題」について紹介します。この問題については、受験Dr.のYoutubeチャンネルにも吉岡副塾長による1分解説がありますのでぜひご覧ください(動画はこちら)。
「モンティ・ホール問題」とは、元々はアメリカの人気テレビ番組の中で行われていた、駆け引きゲームのことです。3つのドアがあり、あなたはそのうちの1つを選びます。1つのドアの先には車、残り2つのドアの先にはヤギがあり、選んだ先にあるものをもらうことができます。車が当たり、ヤギがはずれという図式です。
このゲームの面白いところはあなたが1つのドアを選んだ次にあります。司会者のモンティ・ホールは、あなたがドアを選んだ後で、残った2つのドアのうち1つを選んで開きます。司会者は正解のドアを知っているので、必ずはずれのドアを開きます。もちろんあなたにも開かれたドアの後ろにヤギがいるのが見えています。そして、司会者はあなたに話します。「今なら選ぶドアを変えてもいいですよ。」
さて、この場合、あなたは選ぶドアを変えた方がいいでしょうか、それともそのままのほうがいいでしょうか?少し考えてみてください。
~Thinking Time~
この問題は、「直感による答えとしっかり考えた答えが異なる問題」として有名です。実際の番組では、最初に選んだドアから変えない人が多かったとのことで、その理由としては「2つのドアのどちらかだから確率は2分の1だ」というものや、「自分の選択がはずれていたなら仕方がないけれど、司会者の言葉で選択を変えてはずれたら悔しい」というものだったそうです。実際、自分も深く考える前は1つ目のようなことを考えていました。
…という書き方から分かったかもしれませんが、この問題の答えは「選ぶドアを変えた方が得」になります。簡単に解説すると、
・最初に選んだドアがはずれだったとき(確率は3分の2) ⇒ 残りのドアのうち、はずれのドアを司会者が開けてくれるので、残ったドアが当たり。よってドアを変えた方が得
・最初に選んだドアが当たりだったとき(確率は3分の1) ⇒ 残りのドアはどちらもはずれなので、変えると損
となり、変えなければ当たる確率は3分の1だったものが、変えると当たる確率が3分の2になるのです。
納得できないようであれば、もっと極端な場合を考えてみましょう。ドアの数を100個に増やし、あなたが1つのドアを選んだあとで、司会者が残り99個のドアの中から98個のはずれのドアを開きます。最初に選んだドアが当たりの確率は100分の1、残りの100分の99では、司会者が開けなかったドアが当たりになるので、圧倒的に変えた方が得なのが分かると思います。
結局のところ、この問題は「後から増えた情報がどう影響したか」というふうに表すことができます。最初に自分が選んだドアは、司会者にとって最初から開ける選択肢にはなりません。それに対して、司会者が開けないで残ったドアは、自分が最初から当たりを選んだ場合を除いて、「正解を知っている司会者が残したドア」という特別な意味を持つことになるのです。確率が2分の1にならないのはここに原因があります。
では、少し設定を変えて、司会者が意地悪な場合を考えてみましょう。最初にあなたがドアを1つ選ぶまでは同じです。その後、司会者は残ったドアに1つを残して×印をつけて、そのドアを選べないようにします。ただし、司会者は意地悪なので、残ったドアに当たりがあれば絶対に×をつけてしまいます。さて、この場合は、選んだドアを変えた方がいいでしょうか、それとも変えない方がいいでしょうか。
…この場合は、司会者が残したドアは、「絶対に当たりではない」ということが分かっているものになります。変えてしまうと当たる確率は0になります。たとえ最初に100個のドアがあったとしても、100分の1に賭ける方が0よりはましですね。ですので変えない方がいい選択になります。
もう1つ、別な設定として、忘れん坊な司会者の場合を考えてみましょう。最初にあなたがドアを1つ選び、司会者が残ったドアに1つを残して×印をつけます。しかし、今回の司会者は当たりのドアがどれかを忘れているので、でたらめに×をつけていきます。さて、この場合は、選んだドアを変えた方がいいでしょうか、それとも変えない方がいいでしょうか。
…この場合だと、変えても変えなくても確率は変わりません。くじを何番目に引いても当たる確率が変わらないのと同じことですね。あとは気持ちの問題で、最初に選んだものを貫くか、残り物に福があると考えるかです。
さて、前置きが長くなりましたが、本題で答案の見直しについてです。今までのいろいろな試験の中で、「試験時間中に答えを変えたら、変える前が正解だった」という経験はありますか?私も何回か経験がありますし、担当の生徒から聞くこともあります。このことについて、上で書いたモンティ・ホール問題と絡めて考えてみたいと思います。
上の解説の中で、モンティ・ホール問題は結局のところ「後から増えた情報がどう影響したか」ということだと表現しました。答案の見直しでも、後から考え直したことで問題に関する情報が自分の中で増えているわけです。問題は、その増えた情報が信用できるのかどうかということです。ただでさえ試験本番の緊張感の中、さらに残り時間が少なくなって焦る状態で、正確に状況を判断できているでしょうか。別の考え方で問題を解いてみたとしても、その考え方が間違っている可能性もあるのです。モンティ・ホール問題の例でいうならば、司会者が意地悪だったり忘れん坊だったりの状況で、新しく増えた情報が自分にとって有益なものと断言できない状態です。この場合、言い換えると元の答えが「間違っているかもしれない」くらいの状態であれば、その問題の見直しに時間を割くよりも他の問題に時間をかけたほうがいいと思います。
ただし、答案の見直しが不要なのかというとそうではありません。絶対に答えを変えるべきなのが元の答えが「明らかに間違っている」と分かったとき。例えば計算ミスをしていたり調べ忘れがあったりなど、明らかなミスが見つかった場合ですね。これはモンティ・ホール問題でいえば、「自分が選んだドアが司会者に開けられて、はずれだと分かった」ような状態なわけです。もちろん変えてよければ変えますよね。
結論として、答案の見直しをしたとき、
・「間違っているかも」くらいであればそのままにしておきましょう。他の問題まで見直してまだ時間が余るようであれば戻ってくるくらいで十分です。
・ミスがあって「明らかに間違っている」問題はもちろん直しましょう。そしてそれが判断できるように、
・解き方や計算のあとはどこかに残しておきましょう。
それでは、試験本番頑張ってください!