こんにちは、社会科担当の長門 明です。
9月になり、受験生の皆さんはいよいよ過去問演習の季節に入ります。
これから入試まで、社会の学習については、「問題」を通じて「知識」を増やしていくことが
とても大切になります。「知らない問題が出た」と不安になるのではなく、
「知らなかった問題を確認できた」「知識を増やすことができた」と前向きに考えて、
入試まで1つでも多くの知識を上積みしていくようにしてください。
さて、今回は入試でも頻出の「選挙制度」に特化して説明してみたいと思います。
日本の選挙の仕組みは複雑なため、これまで敬遠していた人もいるかもしれませんが
入試本番に向けて、「選挙」についての知識を今回で完全マスターしてみて下さい!
< 選挙マスターへ!衆議院・参議院 選挙制度のまとめ >
① 「議員定数」の違い
まずは、現在の衆議院・参議院の議員定数を確認してみましょう。
衆議院 475名 (小選挙区 295名 + 比例代表180名)
参議院 242名 (選挙区 146名 + 比例代表 96名)
皆さんご存知の数字だと思いますが、覚えていない人はここで今すぐ覚えましょう!
選挙制度については、衆・参両議院とも「2種類の選挙制度」を組み合わせて、
選挙を行っていることが分かります。「選挙区制」と「比例代表制」です。
各議院の議員定数については、この「選挙制度別」に覚えておくことが大切です。
②「選挙区制」選挙の違い
つぎに、衆議院・参議院の「選挙区制」に注目して、ポイントを確認してみましょう。
衆議院 小選挙区制(全国を295選挙区に分け、各区の最多得票者1名が当選)
参議院 選挙区制 (全国を45選挙区に分け、各区の定数まで1~6名が当選)
選挙区選挙では、衆議院・参議院とも「候補者名」を記載して投票します。
衆議院では、全国を細かく295区に小さく分けた「小選挙区制」を採用しています。
衆議院選挙は、1回の選挙で「全議員」を改選するため、「総」選挙とも呼ばれます。
参議院は、都道府県毎に45選挙区を分けた「選挙区制」を採用しています。
ここで「45選挙区」という数字に疑問を持った皆さんは、要注意です!
都道府県は「47」なのに、なぜ選挙区の数が「45」になるのでしょうか。
実は前回2016年の参議院選挙から、人口の少ない過疎地域にある2つの県を
1つの選挙区にまとめる、「合区」という制度が採り入れられました。
対象となった選挙区が「鳥取県・島根県」と「高知県・徳島県」の2つです。
この結果、「47選挙区」から「45選挙区」に数字が減ったのです。是非覚えておきましょう。
ちなみに、次回の参議院議員選挙は、2016年の3年後の2019年に行われます。
③「比例代表制」選挙の違い
続いて、衆議院・参議院の「比例代表制」に注目して確認してみましょう。
衆議院 比例代表制(全国を11ブロックに分け、ドント方式で政党別に議席数を配分)
参議院 比例代表制(全国を1ブロックとして、ドント方式で政党別に議席数を配分)
衆議院の比例代表制では、全国を「11ブロック」に分けて、ブロック毎に当選者を決めます。
当選人数は、各政党への得票数の比率に応じてドント方式を用いて、改選する180議席を
政党別に配分していきます。
「11ブロック」とは、「北海道」・「東北」・「北陸」・「中部」・「近畿」・「中国」・「四国」・
「九州・沖縄」の8地方と、人口の多い関東地方を「北関東」・「東京」・「南関東」に
分けた3地方の合計になります。この点はしっかり理解しておきましょう。
参議院の比例代表制では、全国を「1ブロック」、つまり「全国区」として一まとめにして、
日本全国の投票を「総得票数」として集計して、ドント方式で改選する48議席を
政党別に配分します。
④ 比例代表選挙での「投票用紙の記入方法」の違い
同じ比例代表選挙でも、衆議院と参議院では投票用紙への記入方法が異なります。
これは、もちろん「投票用紙」も衆議院と参議院では異なることを意味します。
衆議院では、比例代表の投票用紙には「政党名」のみを記入して投票します。
それに対して、参議院では、「政党名」または「候補者名」のどちらか一方を記入となります。
衆・参それぞれの投票用紙には、記入方法が記載してありますので、資料問題として
投票用紙の写真などが出たら、しっかり見分けられるようにしておきましょう。
⑤ 比例代表での「拘束名簿式」の違いについて
最後に、衆議院と参議院の「名簿式」の違いについて、確認しましょう。
衆議院 拘束名簿式(名簿に記載して当選順位を決めてある、重複立候補可)
参議院 非拘束名簿式(名簿がなく当選順位が決まっていない、重複立候補不可)
衆議院では、拘束名簿式を採用していて、政党が予め当選順位を決めた候補者リスト
(名簿)を提出します。このため、有権者は「候補者個人の当選」に影響を与えられません。
一方、参議院では、非拘束名簿式を採用しています。「非」という文字がありますので、
「名簿に拘束されていない」、つまり「政党内の当選順位は決まっていない」ということです。
参議院の比例代表選挙では、政党内での当選順位は有権者からの得票数の多い議員
から確定します。つまり、有権者が「候補者個人の当選」に影響を与えられるのです。
⑥ さいごに
みなさん、お疲れ様でした。今回、選挙制度について詳しく内容を確認してみました。
皆さんの中には「なんで、衆議院と参議院でこんなに選挙の仕組みが違うんだろう」
「同じ選挙制度にしてくれたら覚えやすいのに・・・」と思った人も多いと思います。
実は衆議院と参議院でさまざまな選挙制度を採用しているのには理由があります。
それは、「さまざまな考え方の有権者の意思を政治に反映できるようにするため」です。
もしも、選挙制度が「1種類」しかなかった場合、どうなるでしょうか。
どの選挙でも同じ顔ぶれの議員や政党に集中する結果になってしまい、
政治の理念や考え方が偏ってしまう心配があります。
しかし、いろいろな選挙制度を組み合わせることで、多様な有権者の意思を反映した
さまざまな候補者を政治に参加させて、よりよい政治ができるようにしているのです。
社会の学習とはまた別の視点で、政治に関心を持ってみてください!
以上、長門でした!