こんにちは、社会科担当の長門 明です。
10月になり、志望校の過去問に取り組んでいる方も多いと思います。
社会の過去問を解くと、馴染みのある地理や歴史だけではなく、比較的最近学習した
戦後史や政治分野、そして時事問題からの出題が大変多いことが分かります。
これらの単元での得点力をいかに増やしていくかが、合格のポイントとなります。
さて、今回は入試頻出シリーズの第2弾として「戦後の歴代内閣の施策」に注目します。
この単元にはまだ手が回っていない受験生も多いと思います。戦後の日本の復興の中で
どの内閣がどの施策を行ったのかについての出題は、入試頻出の重要事項となります。
これまで敬遠していた皆さんも、是非「戦後内閣マスター」になって下さい!
入試頻出! 戦後の内閣の重要実績
【ポイント】
戦後の内閣の実績については、単に「暗記」をするだけでは、なかなか得点に結びつきません。
暗記ではなく、復興の流れに注目して内閣と重要施策を結びつけることが大切です。
◎戦後の日本の復興の流れ
ステップ1 日本の民主化と独立
ステップ2 国際社会への復帰
ステップ3 経済の復興と躍進
ステップ4 中・韓国交回復と小笠原・沖縄領土復帰
いかがでしょうか。こうして見ることで、一見ばらばらに見えていた施策が、
実は「理にかなった流れになっている」ことが分かってきます。
これにより、試験や入試の得点につながる「しっかりした知識」として活用できるようになります。
では、さっそく4つのステップで確認してみましょう。
【戦後の内閣の施策】
① 吉田 茂:日本の民主化政策と独立を完遂した内閣
【主な実績】
1946年 日本国憲法公布・農地改革
1947年 日本国憲法施行・教育基本法・労働基準法
1951年 サンフランシスコ平和条約・日米安全保障条約調印
まずは吉田茂です。戦後日本の基礎を築いた内閣総理大臣で、名宰相です。
敗戦後、日本は6年間ほどアメリカの占領下におかれ、民主化と独立の準備を進めました。
軍国主義的だった日本は、日本国憲法により「平和国家」として新たな一歩を踏み出します。
また、農地改革、教育基本法、労働基準法など、民主化政策の核となる施策も行いました。
そして、1951年に日本は「独立」を認められ、主権国家として新たに歩み始めます。
これらを行ったのが吉田茂です。アメリカ(GHQ)との間で苦労も多かったはずですが、
まさに、敗戦後の日本の政治・経済を見事に立て直した「功労者」「立役者」と言えます。
② 鳩山一郎:日本の国際社会への復帰を実現した内閣
【主な実績】
1956年 日ソ共同宣言・国際連合加盟
続いては鳩山一郎です。まだこの名前に馴染みのない受験生も多いと思いますが
日本の国際社会への復帰という業績を残した内閣で、選択肢の中にもよく名前が登場します。
1951年に独立国となった日本でしたが、国際連合への加盟は行われていませんでした。
これは、常任理事国の1つであるソ連が日本の国際連合加盟に反対していたためでした。
鳩山一郎は、アメリカだけを意識した政治をやめ、ソ連に目を向けて「国交回復」を掲げました。
この時ソ連でも「平和路線」の政権に代わったことで、日ソ国交回復が実現しました。
これにより、同年に日本の国際連合への加盟も実現します。事実上の国際社会への復帰です。
北方領土問題は残っていますが、大きな一歩を鳩山一郎が刻んだことは間違いありません。
③ 池田勇人:日本経済の復興と躍進を象徴する内閣
【主な実績】
1960年 所得倍増計画(10年間GNPを2倍)
1964年 東海道新幹線 東京オリンピック
いよいよ池田勇人の登場です。池田内閣は、日本経済の復興を象徴する内閣です。
「所得倍増」という有名なスローガンを打ち出した池田勇人。お給料2倍ということです。
この夢のような計画は「10年間」という期間を設けて掲げました。高い目標でしたが、
1964年の東京オリンピック開催や東海道新幹線開通などの歴史的イベントも後押しとなり
日本経済は大躍進を続けます。これが「いざなぎ景気」と呼ばれる「高度経済成長期」です。
家電の新・三種の神器(カラーテレビ・クーラー・カー(車))の「3C」もこの時ですね。
そして、10年後の1970年には、池田勇人の打ち出した「倍増計画」を上回る成長を
日本は達成したのです。「経済大国ニッポン」は、この池田勇人内閣から始まりました。
敗戦国であった日本の躍進は、当時の世界にも大変強烈なインパクトを残したと言えます。
④ 佐藤栄作・田中角栄:国交回復と領土返還を達成した内閣
【主な実績】
1965年 日韓基本条約(韓国との国交回復)
1967年 小笠原諸島返還
1970年 非核三原則提唱(74年にノーベル賞)
1972年 沖縄返還
【主な実績】
1972年 日中共同声明(中国との国交回復) ※田中内閣の実績
最後は佐藤栄作と田中角栄です。この2人、どちらも「栄」の字が入っていますので
いつもセットで覚えてもらうといいと思います。(笑)
さて、これまで確認してきたような「民主化」や「独立」、「経済復興」を成し遂げてきた
戦後の日本にとって、まだ達成できていない大きな「課題」が2つありました。
1つが、隣国である「中国」「韓国」との国交回復が未だになされていないこと、
そしてもう1つが、敗戦して失った「小笠原諸島」・「沖縄」の国土への復帰です。
これらに取り組んだのが、佐藤栄作と田中角栄です。中・韓との国交の回復のポイントは
韓国や中国に対する経済的援助と戦争責任の反省とのバランスをうまく取ったことです。
これにより、大変難しい課題でしたが両国と国交を回復することに成功しました。
そして佐藤栄作は、悲願であった「小笠原諸島」や「沖縄」の国土復帰も達成します。
さらに、佐藤栄作は「非核三原則」を唱え、後にノーベル平和賞も受賞しています。
このような取り組みを積み上げて、現在の私たちが知る「日本の姿」になっていくのです。
さいごに
みなさん、お疲れ様でした。
戦後の内閣のポイントということで、今回は内閣を絞ってお話しをしてみました。
社会は単なる暗記ではなく、どのような流れや背景があるのかを理解することで
知識をしっかりと定着することができ、それが得点力につながってきます。
これからの過去問演習でも、内閣の施策に注目して是非「点につながる知識」を
数多く身につけていくようにしてください。以上、長門でした!