こんにちは、社会科担当の長門明です。
さて、今回は毎年大変多くの小学生が頭を悩ませる
「旧国名」についてのお話です。覚えるの、なかなか大変ですよね。
でも、当然ながら、名前は「人間」が作り出したものです。
であるならば、わざわざ意味のないバラバラな名前をつけないはず…。
今回は、そんな名前の付け方に隠された「法則」を利用して、
効率的に「旧国名」を覚えていく方法を解説してみます。
どうぞよろしくお願いします!
◎旧国名に潜む「上」「下」の法則
現在では、東京に行くことを「上京」と言いますね。
でも、旧国名が使われた律令体制の頃は、現在と場所が違います。
当時は、文字通り「都」のあった「京都・奈良」に行くことを意味しました。
都に行くことを「上る」と表現する理由は、ちゃんとあります。
それは、都には「日本で最も身分の高い人物」、つまり「天皇」がいるため、
日本国内で「最も位の高い場所」に地方から向かうことから、「上る」と表したのです。
さて、今回皆さんに注目していただきたいのが、この「上」という漢字です。
現在でも、たとえば、都心に向かう電車を「上り電車」、
都心から郊外に向かう電車を「下り電車」と呼びますよね。
この「上」「下」の法則、「旧国名」でもしっかりと使われているのです!
つまり、下記のような「法則」が浮かび上がります!
都に近い方の地域 ⇒ 国名の中に「上」の字が使われる
都から遠い方の地域 ⇒ 国名の中に「下」の字が使われる
この法則は、現代の「上流」「下流」の使い方と同じですね。
旧国名の名前は、都との位置関係を「上」「下」という字で表していたのです。
そして、この点を理解しておくことで、紛らわしい国名もスムーズに理解できます。
では、さっそく実際の旧国名を使って確認してみましょう。
① 「備前」「備中」「備後」
「備前焼」や「備中ぐわ」などの歴史用語に使われている旧国名です。
この3国は「桃たろう」の「吉備団子」で有名な「吉備」の国が分かれたものです。
「吉備」は現在の岡山県・広島県になりますので、「法則」を使って、
京都に近い岡山県が「備前」「備中」、京都から遠い広島県が「備後」となります。
② 「越前」「越中」「越後」
「越前和紙」「越後平野」などの歴史用語で使われている旧国名です。
現在の新潟地方を「越後」と呼ぶのは、皆さんご存知の通りですよね。
実は、現在の北陸地方は、かつては「越(こし)の国」と呼ばれていました。
旧国名では、この「越の国」を3つに分け、「越前」「越中」「越後」としました。
「法則」に従うと、京都に近い福井県が「越前」、そして遠くなる順に、
富山県が「越中」、新潟県の「越後」となります。ちゃんと当てはまりますね!
ここで「あれ?石川県は…?!」と思った皆さんは、とっても鋭い!
石川県は「加賀」でしたね。実は、「加賀」は後になって追加された国名でした。
「名前」も「人」と同じように、時代と共に生まれたり消えたりしているのです。
③ 「上野」「下野」
次は関東地方です。塾のテストや入試でも、頻出の重要国名になります。
まずは、その読み方。「上野」と描いて「こうづけ」、「下野」と書いて「しもつけ」と読みます。
「ひらがなで正しく書きなさい」と聞かれても、しっかりと書けるようにしましょう!
「上野」「下野」は、現在の群馬県・栃木県の旧国名になります。
さて皆さん、どちらが群馬県になるかお分かりですか?
京都に近い群馬県が「上野」、群馬県よりも京都に遠い栃木県が「下野」です。 やはり「法則」の通りですね!単なる「暗記」よりも、「法則」を使う有効性が分かります!
④ 「肥前」「肥後」
九州地方は「阿蘇山」など火山が多かったため、かつて「火の国」と呼ばれました。
その後、「火の国」が「肥の国」に転じ、「前」「後」2つの国に分けられました。
佐賀県や長崎県は「肥前」、そして阿蘇山のある熊本県は「肥後」と呼ばれました。
「あれ?長崎より熊本の方が京都に近いのでは?」と思った皆さんは鋭い!
でも、なぜ皆さんは「熊本の方が近い」ということが分かったのでしょうか?
そうです、それは皆さんが、いつも「日本地図」を見ているからですね。
実は、今皆さんが見ているような正確な「日本地図」は、当時はまだありません。
そのため、隣接していない「肥前」と「肥後」のどちらがより都に近いかを正確に
把握することは相当な難題だったのです。「肥前」と「肥後」は、その「名残」なのです。
でも、このちょっとした間違い、とっても「人間らしい」と思いませんか?(笑)
地図がなかった時代、奮闘して旧国名を整備した人々の功績は、やはり「偉大」なのです。
<まとめ>
今回は中学入試の社会でよく出題される旧国名を中心に見てきました
社会は単なる暗記ではなく、ちょっとした「法則」や「因果関係」を見つけることで、
効率的に「覚える」ことができるようになります。
是非今後の学習でも、隠された「法則」を自分なりに見つけてみて下さいね!
以上、長門でした!