【問 題】
図のように、同じ容器に水、物体Aや分銅Bを入れ、(ア)~(カ) の水面が
すべて同じ高さになるよう水の量を調節しました。
(イ)のように水に物体Aをうかべると、ちょうど半分だけ水中にしずみます。
(ウ)のように物体Aの上に分銅Bをのせると物体Aがちょうど全部しずみます。
また、(カ)では物体Aがちょうど全部しずむように指でおしています。
これらを容器ごと((エ)は分銅もふくめて)台ばかりにのせた時、
(カ)と同じ重さになるものを(ア)~(オ)のなかから選び、記号で答えなさい。
[世田谷学園]
【解答・解説】
~「浮力」とは?~
「浮力とは物体を水中に入れたとき、物体をおしあげる上向きの力で、
その物体が押しのけた水(同じ体積の水)の重さと同じ重さが浮力として働く。」
などとテキストに書いてありますが、どうして、浮力が働くのか、
物体が押しのけた体積と同じ水の重さがどうして浮力になるのか、
はわかりません。
この点を一緒に考えてゆきましょう。
下図のように、物体を水中に入れると水圧が四方八方にかかります。
水圧というのは水が押す力です。物体はいろいろな方向から
水に押されるわけです。
左右の水圧である水圧Cと水圧Dは深さが同じなので、力に差がありません。
しかし、上下の水圧、AとBは深さが異なるため、力にも差があります。
水圧は深ければ深いほど大きい力が働きますから、
AよりもBのほうが力が大きくなり、これが浮力の正体(?)です。
BはAよりも物体の体積と同じ水の重さだけ力が大きいので、この力が浮力になります。
たとえば、物体の体積が100cm3 だった場合、水100cm3は100gですから、100gの浮力がはたらくわけです。
~カと同じものは~
では、問題に戻って、まず、カと条件がまったく同じものをさがします。
カと同じ条件であるのはウです。
カもウも、物体が水中に沈んでいるので、指で押す力と分銅の重さは同じです。
次にウと同じものをさがすために、ウをアと比べながらよく考えてみましょう。
具体的な数で表すとわかりやすいので、
物体A 体積:100cm3 重さ:50g
とします。物体Aは水に浮いていますから、重さより体積の方が大きくなります。
物体Aが水中にすべて沈んでいますから、物体Aの体積のぶんだけ浮力がかかります。
100cm3の水の重さは100gですから、物体Aには100gの浮力がかかっています。
ここでわかるのは、分銅Bの重さです。
物体Aは水中に沈んで動いていませんから釣り合っています。
つりあっているということは反対向きの力が同じことです。
この場合は上下の力が同じです。
下向きの力=物体Aの重さ + 分銅Bの重さ
上向きの力=浮力
つまり
分銅Bの重さ=100g ― 50g = 50g
になります。
ここでウのビーカーを台秤にのせたときの重さを考えます。
浮力はあくまでも水中に入れたとき発生しますので水の外側ではかるときには
関係ありません。
ウ全体の重さ=ビーカー+水+物体A+分銅B
です。ウに入っている水の重さは、物体Aが沈んでいる分だけ、
アと比べると少なくなっています(水面を同じ高sにそろえているため)。
どのくらい少なくなっているかというと、
物体Aの体積は100cm3 ですからこの分の水の重さだけ少なっており、
つまり、水100cm3は100gですから、100g少なくなっています。
ウ全体の重さ=ビーカー+アの水の重さ-100g+物体A+分銅B
となり、
ウ全体の重さ=ビーカー+アの水の重さ-100g+50g+50g
結局、
ウ全体の重さ=ビーカー+アの水の重さ
になり、
これはアとおなじです!
次にイを見てみましょう。
イ全体の重さ=ビーカー+水の重さ+物体A
です。イの水の重さはアと比べて物体Aが沈んでいる体積の分だけ少なくなっています。
物体Aは50gですから浮力も50gです。
つまり、物体の沈んでいる体積は50cm3、
イの水の重さはアと比べて、50g少なくなっている
ことがわかります。
つまり、
イ全体の重さ=ビーカー+アの水の重さ-50g+50g
イ全体の重さ=ビーカー+アの水の重さ
となり、これも
アとおなじです!
エ全体の重さは、イ全体の重さ+分銅B になりますから、これは違います。
オ全体の重さは、イ全体の重さ+分銅B-分銅Bの体積と同じ水の重さになります。
分銅Bの重さと分銅Bの体積と同じ水の重さが同じであれば、イと同じになりますが、
分銅Bは水に沈んで底にありますから、体積よりも重さの方が重くなり、
分銅Bの重さは、分銅Bの体積と同じ水の重さより重い
ということです。
つまり、オ全体の重さはイよりも重くなり、これも違います。
カと同じ重さになるのは、ア、イ、ウの三つです。
答.ア、イ、ウ
このように世田谷学園の理科は、各単元について根本的な考え方を
きちんと理解しているかどうか、と問う問題が必題されます。
浮力の計算ができるだけでは難しい問題です。
この傾向は上位校になるほど強くなっています。通り一遍の学習ではなく、
根本的な理解を深めるような学習してください。