【問 題】
図1のような鉄球を使った装置があり、図2~図6はそれを真横から見た図です。
この装置について以下の問いに答えなさい。
1.鉄球1を高さAまで持ち上げて放すと図2のように球が動きます。
鉄球1、2、3を高さAまで持ち上げて放すと図3のように球が動きます。
鉄球1、2を高さAまで持ち上げて放すと球はどのように動きますか。
下の(ア)~(エ)から選び、記号で答えなさい。
(ア) 鉄球5が高さAの2倍まで上がる。
(イ) 鉄球4、5が高さAまで上がる。
(ウ) 鉄球4、5が高さAの半分まで上がる
(エ) 鉄球5が高さAの半分まで上がる。
2.図4のように、鉄球6を水平なレールにのせて、鉄球1を高さAから放したところ、
鉄球6はレールの上を端まで転がって落ちました。鉄球1を高さBまで持ち上げて放すと、
鉄球6の動きは高さAから放したときと比べて何が変わりますか。
次の(ア)~(エ)から選び、記号で答えなさい。なお、鉄球6は他の鉄球と同じものです。
(ア) レールの上を転がる長さが変わる。
(イ) レールの上を転がる時間が短くなる。
(ウ) レールの上を転がる時間が長くなる。
(エ) レールの上では何も変わらない。
3.図5のように、鉄球6を長い糸でつるして鉄球1を高さAから放すと、
鉄球6はどこまで動きますか。次の(ア)~(エ)から選び、記号で答えなさい。
(ア) 角度の同じアまで動く。
(イ) 高さの同じイ(高さA)まで動く。
(ウ) きょりの同じウまで動く。
(エ) 動かない。
4.図6のように、鉄球1をつるしている糸に触れるように棒を固定し、
鉄球6を高さAから話すと、鉄球1はどこまで動きますか。次の図に描きなさい。
ただし、鉄球6が鉄球5にあたるときの速さは、
図2の鉄球1が鉄球2にあたるときの速さと同じです。
[慶應普通部]
【解答・解説】
~★ 「物体の運動」の基本をおさせる
「物体の運動」の基本は、物を地面に落とした時の運動です。
図1のように、重さに関係なく、同じ高さから物を落とした場合、同時に地面につきます。
実を言うと地球上では、形状によって地面につく時間は変わってきます。
例えば、ティッシュペーパーと鉛球では、鉛球のほうが早く地面に落ちます。
これは地球に大気があるためで、大気が抵抗となってティッシュペーパーを
地面に落ちにくくしています。
ちなみに月の上で実験すると、ティッシュペーパーと鉛球は同時に落ちたそうです。
入試ではこれほどの極端な違いのある球はあつかいませんので、地球上でも
同時に地面に落ちると考えていいでしょう。
重さの違う球が、同じ高さから落とした場合、同時に地面に落ちると言うことは
落ちるスピードは重さに関係ない
ということです。
次に図2を見てください。
確かに、重さに関係なく、同じ高さから落とした場合、同時に地面に落ちる、のですが、
地面が受ける衝撃は、もちろん、重さが重いほうが大きく
なります。
さらに、図3のように
時間がたつにつれて、スピードは速くなります。
ものを落とした時のスピードと、地面についたときのスピードを比べると
地面についた時のスピードのほうが速いのです。
つまり、高さを変えて、物を落とした場合、地面についた時点でのスピードは
高いところから落としたもののほうが、速くなります。
これが”自由落下”と言われる現象であり、「物体の運動」の基本です。
~★ 「ふりこの運動」の基本をおさえる
今度は「ふりこの運動」を見てみましょう。図5のA点から、おもりを落とす時、
”自由落下”と同じようにどんどんスピードは速くなります。
B点で一番速くなります。
B点からC点に向かう時、地球の重力に逆らう運動のため、スピードはどんどん遅くなり、
C点では止まってしまいます。
その後、地球の重力に引っ張られ、また、B点を通り、A点に戻ってきます。
B点にあるおもりは、A点と同じ高さまでおもりを持ち上げる”力”を持っています。
そのため、図6のように、途中にくぎをさして置いて、
ふりこの長さをかえてもA点と同じ高さだけおもりはあがる
のです。
もうひとつ重要ななのは、周期です。
周期とは、ふりこが一往復する時間
です。
周期は、ふりこの重さやしんぷくに関係なく、ふりこの長さが長いほど
長くなります。
図7を見てください。しんぷくを大きくしても周期は変わらない、ということは
A点からふりこを落とした時と、D点から落とした時でも、周期は変わらないと言うことです。
つまり、A点はD点より高い位置にありますから、B点でのスピードを比べると、
A点から落としたほうが速くなります。
同じ時間で、A点からB点まで、D点からB点まで の距離を動くのですから、
A点から落とした時のほうが速くないと周期は同じになりません。
上記の基本を確認したうえで、慶應普通部の問題に挑戦しましょう。
~★ 1 の解説
問題に出されている装置は「ニュートンのゆりかご(Newton’s Cradle)」と
言われているものです。
図8のように、鉄球1をAの高さから落とすと、球鉄を同じ高さAまで持ち上げる
”力”が鉄球1から鉄球2に伝わり、同じように鉄球3、鉄球4、鉄球5に伝わって、
鉄球5が同じ高さAまではねあがります。
問題1のように、鉄球1と鉄球2を高さAから落とすと、鉄球2つ分がAの高さまで
はねあがる”力”をもってますから、同じように、鉄球4と鉄球5がAの高さまで
はねあがります。
答 (イ)
~★ 2 の解説
問題2は、少々、慎重に解く必要があります。
まず、おさえておかなければならないことは、ふりこをぶつけて
物体を動かす場合、影響することは
ぶつかる時のスピードと、ぶつけるおもりの重さ
です。スピードが速いほど、おもりの重さが重いほど、遠くに
飛ばすことができます。
高さAよりも高さBの方が高いので、高さBからふりこを落としたほうが、
ぶつかる時のスピードは速くなり、鉄球6もそのスピードと同じ速さで
遠くに飛んでゆきます。
まず、選択肢の(ア)を考えてみましょう。
(ア)レールの上を転がる長さが変わる。
高さAのところからふりこを落とした場合、問題文には「鉄球6はレールの上を
端まで転がっておちました」と書いてあります。
ということは、高さBのところから落としたら、鉄球6が動く長さは長くなりますが、
レール上は端まで転がるでしょう。つまり、レール上では転がる長さは変わらない
ということです。
レール上で変わるのは、何かと言うと、鉄球の6の転がるスピードです。
答 (イ)
~★ 3 の解説
上記の基本で見てきたとおり、ふりこの運動で、球が持ち上がる高さは
ふりこの長さに関係なく、ふりこのおもりを落とした時の高さと同じになります。
つまり、Aの高さと同じになります。
答 (イ)
~★ 4 の解説
問題4も、問題3と同様です。ふりこの長さと関係なく、高さAと同じ長さまで
はねあがります。
答 下図