【問 題】
地面から8mの深さまで掘った井戸があります。水は底から1mたまっています。
今、カエルがこの井戸に飛び込みました。飛び込んでから着水するまでどのくらいの時間がかかるでしょう。
① 0.1秒 ② 0.5秒 ③ 1秒 ④ 2秒
[慶応普通部]
【解答・解説】
~等速運動とは~
中学受験で普段扱っている速さの問題は、毎時100kmとか毎分80mといった速さが一定の場合です。
これを”等速運動”といいます。
たとえば、毎分20mという速さの場合、すすむ距離と時間を表にすると
となります。
これを横軸に時間、縦軸に距離をとったグラフで表すと
です。
では、横軸に時間、縦軸に速さをとると
となり、すすんだ距離はどこになるかというと、例えば、4分後の進んだ距離は、時間×速さですから
の面積になり、20m×4分=80m となります。
~等加速度運動とは~
物を放して地面に落とす運動は、等速運動ではありません。速さは一定ではなく、どんどん速くなります。
速くなる割合が一定の運動を”等加速度運動”と言います。
物を落とす運動は等加速度運動です。速さは初めは0ですが、1秒後には約9.8m、2秒後には
約9.8×2=約19.6m、3秒後には約9.8×3=約29.4m となり、
速さ=9.8m × 時間
の式で表すことができ、一定の割合で速くなります。
時間と速さの関係を表にすると
になります。
これを横軸に時間、縦軸に速さをとったグラフは
になります。
では、1秒で進んだ距離は何メートルになるかというと、その時の速さの9.8mではありません。
速さは初めは0mで、落下後どんどん速くなっているので、0.1秒後はもっと遅いはずです。
では、どのようにもとめるのでしょうか。
まず、1秒を10個に分けて下記の表を作ります。
距離は速さ×時間ですから、0秒~0.1秒の間に進んだ距離は大体、
0.98×0.1=0.098m
0.1秒~0.2秒の間に進んだ距離は大体、
1.96×0.1=0.196m
0.2秒~0.3秒の間は・・・・と、1秒後まで続けてゆきます。これを表とグラフに表すと、
となり、10等分した距離の合計が1秒後に進んだ距離になりますから、結局、距離はグラフの三角形の面積になります。
式で書くと
進んだ距離=速さ×時間÷2
速さ=9.8×時間
ですから
進んだ距離=9.8×時間×時間÷2
になるわけです。
1秒後に進んだ距離は
9.8×1÷2=4.8m
2秒後に進んだ距離は
9.8×2×2÷2=19.6m
3秒後に進んだ距離は
9.8×3×3÷2=44.1m
になります。
では、問題の7m進んだ時の時間はどのくらいでしょうか。
その時間を□として式を作ると
9.8×□×□÷2=7
□×□=7×2÷9.8=1.428・・・・
□=1.195・・・秒
になります。
答 ③
【慶應普通部が求めるのは】
この問題を計算式で解く小学生はいません。等加速度運動や重力加速度について理解し、
問題解くまで使いこなせる生徒は小学生は勿論、中学生でも無理です。
ではなぜ、慶応普通部はこのような問題を出題するのでしょうか。
慶応普通部は他の中高一貫の私立中学と同様、高校で学習する内容を中学時に授業で扱います。
特に理科はマニアックな先生方がそろっているようで(笑)、課題にレポート提出があります。
あるテーマについてレポートを提出させますが、そのテーマについてどれだけ興味を持ち、
どれだけ調べてレポートを書いたか、が大きなポイントとなり、内容が薄い場合は”やり直し”と突っ返されます。
入試問題にも、理科はくせのある問題が多く、自然現象や生物の生態、食材など身の回りの物に
いかに興味をもち、自分で調べて知識や理解を深めてゆくか、そのような点を試しているようです。
この、物が落ちる問題も、等加速度運動がわからなくても、大体このくらいの時間がかかる、
という感覚を見ているのだと思います。
慶応普通部を志望校とする場合、こういった周囲の物に対する姿勢を身につけておくことが重要です。
それは、入試に合格するだけではなく、入学後も必要な能力と言っていいでしょう。