みなさん、こんにちは。受験ドクターのNです。
今回は、「設問のワナ・暗黙のルール」についてお話しします。
国語の苦手なお子さんにとって、まぎらわしい選択肢の問題は本当にいやなものです。
多くのお子さんは「選択肢だけを見て」「あいまいな記憶で」「感覚的に」選びます。
前章でも述べたことですが、まずは次のことをしっかりと認識する必要があります。
選択式問題
↓
最も適切なものを選ぶ
※正誤(○×)問題を除く
でも、「適切」って、どう判断したらよいのか? ここが重要な意味をもつわけなのですが、
そのためには、参考書には載っていない「設問のワナ」や「暗黙のルール」を理解していなければなりません。
それでは、その中での主なものの一部をこれからご紹介します。
①「言い切り・限定表現」のワナ
「必ず」「全く」「絶対」「決して~ない」「~だけ」などの表現
↓
疑う! 文中の説明を丁寧に確認する!
まずは定番のワナです。
多くの子は、文章中の言葉が選択肢にもっともらしく並べられていることで
「合っている」という判断をしてしまいますが、
出題者は「意味の適切さ」を要求します。具体例を挙げてみましょうか。
【文章中での説明】
「倉庫はいったん入れたものは決して失わない。必要なときには、さっと、
引き出すことができる。」
【設問】
「倉庫」はどのような状態が好ましいと考えられていたのか。
【選択肢】
ア 在庫量を常に最大限に保っておく状態。
イ 在庫をできるだけ置く保存保管しておく状態。
「入れたものは決して失わない」という意味を
うっかり「決して減らない」という意味に誤解してしまうと「ア」を選んでしまいそうですが、
「必要なときには…引き出す」とある以上、「常に最大限」という説明はおかしいわけですね。
正解は「イ」です。
※むろん、右の例は分かりやすく示していますので、これにひっかかる子はほとんどいません。
②「前提すり替え」のワナ
これは具体例から説明したほうが理解しやすいと思います。
【文章中での説明】
「本当に理解している人はわかりやすい言葉で説明するものだ。難しい言葉
で説明する人は、実はよく理解していないということが多い。自分でもよく
分かっていないことについては、語るべきではない。」
【選択肢】
ア 相手に何かを説明する場合は、やさしい言葉を使うほうがよい。
イ よく理解していないことを説明するなら、わかりやすい言葉を使うべきだ。
正解は「ア」です。
「イ」は誤りですが、何がおかしいか分かりますか?
「イ」は「よく理解していないことを説明すること」を前提として認めてしまっています。
選択肢だけを読むと、なんだかもっともらしい説明のようにも見えますが、
本文で「自分でもよく分かっていないことについては、語るべきではない。」と
述べられている以上、これは適切とは言えません。
このようなワナにだまされないようにするためには、
選択肢にも線を引いて〇×チェックをしたうえで真偽を確かめるとよいでしょう。
先ほどの選択肢でいえば、次のようなことになります。
イ よく理解していないことを説明するなら、わかりやすい言葉を使うべきだ。
↓ ↓
○ ○
↓
?(おかしい!)
③「具体より抽象」という暗黙のルール
複数の事柄が列挙されている場合
↓
△「その一部をとりあげた説明」
○「全体をまとめた説明」
これも具体例を挙げてみましょう。
【文章中での説明】
「過酷な状況において生き延びるためには、健康な体だけではなく、規則正
しい生活態度や豊かな感受性、ユーモアなども必要なのである。」
【選択肢】
ア 過酷な状況において生き延びるためには、健康な体だけではなく、規則
正しい生活態度や豊かな感受性が必要なのである。
イ 過酷な状況において生き延びるためには、肉体の健康以外の精神的なさ
まざまな事がらが求められる。
正解は「イ」です。本文では「……ユーモアなども必要」とありますが、
「ア」では「…豊かな感受性」まででとまってしまっていますね。
一方、「イ」は、列挙されている事柄を「さまざまな事がら」という表現でまとめています。
しかし、「同じ言葉に反応してしまう子には「適切」という判断ができません。
今回はこのあたりでとめておきますが、
文章を「ていねいに読む」だけではなく、出題者が仕掛ける「ワナ」を知ることが
選択肢を正しく見極めることにつながってくることがお分かりいただけたかと思います。