みなさん、こんにちは。受験ドクターのNです。
今回は「入試頻出テーマ」について。
中学受験の国語は「道徳」です。
と、いきなり云われても何のことだか分かりませんよね?
では、次の説明はどうでしょう。
・物語文では「自分勝手な主人公が優しい心をもつようになる」話はよく見られるが、
「優しい子が冷たい子になってしまう」話は(まず)見られない。
・説明文・随筆文では、「自然環境保護」や「異文化理解」を訴える文章は多く扱われるが、
その逆(「保護しなくてよい」「理解しなくてよい」)は(まず)ない。
入試問題の“素材”として使用することが可能な文章は無数にあります。
それにもかかわらず、物語文では、その多くが「少年少女の心の成長」をテーマにしています。
たしかに、大人が主人公の作品って、ほとんど見ませんよね? それに、
「親友に嘘をつく」とか「自分の利益だけを確保する」ような“罪”を犯して「自責の念」に
悩む主人公はたくさんいても、
犯罪者がヒーローになってしまうような作品は(まず)扱われません。
説明文・随筆文ではどうか。
「科学技術・文明がもたらした物質的な恩恵」を部分的には肯定しつつも、
「失われつつある心の豊かさや人間性の大切さを訴える視点」を欠いた文章は
(あまり)見られません。
具体的な話はこのへんでよいでしょう。
中学入試の国語でとりあげられる文章の多くには「テーマ」があり、その多くは
「道徳的価値観」に基づくものなのです。
このようなことは私がはじめて指摘することではありません。すでに語られていることです。
そして、様々な教材・カリキュラムにおいても、この視点が導入されています。
となると、あとはそれを「どのように整理して活用するか」、ですよね。
☆頻出テーマトップ3
1 自然と文明
2 言葉と文化
3 心の成長
むろん、“決めつけ”は禁物です。たとえば、「自然環境」を話題にした文章がだされたからといって、即座に「要するに『自然を守れ』ってことね♪」と思い込みながら読むことがどれほどリスキーであるかは、くわしく説明しなくても分かりますよね?
そのような“決めつけ”をしなければ、「入試頻出テーマの傾向の把握」は、
受験生にとってたいへん意味のあることだといえます。
それでは、実際の指導の場において私がどのような説明をしているか、すこしご紹介しましょう。
○ △
自然 文明
心の豊かさ 物の豊かさ
充実感 便利・楽
ゆとり 効率的
個性 画一的
謙虚 傲慢
「自然」をテーマにした文章は入試の定番です。流行りすたりはありません。なぜか? それは、
自然の破壊が深刻だからです。ひとは「いま充分に満たされているもの」の大切さを論じようとはしません。では、なぜ「自然が破壊される」のでしょうか? 自然が憎いからでしょうか? まさか!
それは「人類が物質的な発展をとことん追求してしまったから」です。
ここで「文明」というキーワードの理解を深めておく必要があります。
生徒に問うと、なんと「文化」と混同されることが多い。いくら字面が似ているからといって、これはいただけません。そこで、私は「原始時代の人間の生活とぼくらの生活との違いを、目を閉じてイメージしてみよう♪」とやってみます。現実の生活に当たり前のようにある「スーパー・コンビニ」(→物の豊かさ)、「電化製品」(→便利・楽)、「乗り物」「通信機器」(→効率的)などを例に挙げ、さらに「物の豊かさ」をもたらす「大量生産・大量消費」(→画一的)の仕組みを説明し、ひいては、「なんでも出来ると思い込んでしまった人間の思い上がり」にまで話を発展させます。
なんだか社会科の授業のようですが、この説明は「自然-文明」という定番テーマの文章を理解するための重要なプロセスなんですね。
(次回に続きます)