みなさん、こんにちは。受験ドクターのNです。
平成29年度の中学入試もほぼ終了。あっという間ですね。ここからは例年、
「今年は誰が書いた何という作品が出題された」という「出典」が話題になるのですが、
私がこのブログで前回から話題にしているのは、あくまでも「入試頻出テーマ」です。
☆頻出テーマトップ3
1 自然と文明
2 言葉と文化
3 心の成長
前回は、1の「自然と文明」について説明しました。今回は…
2 言葉と文化
「言葉と文化」。これも入試頻出のテーマです。国語という教科は「ことば」の学習ですから、
当然といえば当然のことですよね。
文章のスタイルとしては、次のふたつが多いようです。
A 昔と現代との比較 B 外国と日本との比較
まずAのスタイルですが、先ほどふれた「自然と文明」の対比的視点がここでもうかがえます。
昔に比べて、現代は自然に対する感性や人と人とのふれあいの心が薄れてしまっている。
「あいさつ言葉」の変化などがよく話題にされるのも、このようなことを言いたいがためです。
次にBのスタイル。こちらは、地域・民族・国などによって異なる風習や価値観を具体的に説明したうえで、次のような結論が導かれるケースが多いと言えます。
言葉の違いは文化の違い。そこに「優劣」はない。
異文化を相互に理解しあうことが大切である。
ABいずれも、根底には次のような知見が前提としてあることも重要です。
人間の感情や認識は、言葉によって強く影響を受ける。
「だから、言葉を大切にしよう」ということになるわけです。
※たとえば「ら抜き言葉」に代表されるような、言葉の「乱れ」を憂う文章はいまだに散見されま
すが、一方で「言葉が変わって行くのは自然な流れである」という肯定的な認識も広がってきて
いるようで、「正しい日本語を使おう」というメッセージはあまり目立たなくなってきました。
3 心の成長
先に述べた通り、入試で使われる物語文の多くは「少年少女が主人公」です。
これはなぜかというと、「心の成長」をテーマにした作品を「学校が好む」からです。
教育機関ですからね。わかります。
「成長」をテーマにするからには、「もともとしっかりした心」では都合がわるい。
ドラマ全般の方法論になってしまいますが、「変化」が大前提です。となると、
「まずはマイナスの状態から」という手法が(あまりにベタですが)“鉄則”となります。
「×から○へ」。つまり「ハッピーエンド」です。
まずは、この単純な変化パターンを子供に意識させておく必要があります。
むろん、このパターンが全てに通用するわけではありません。
大きく二つに分けておきましょうか。
①一見すると「ハッピーエンド(心の成長)」には見えないケース
→中学入試の国語を語る上で絶対にはずすことのできない「麻布」は、とうの昔にこれを“実践”しています。平成元年には「熱烈に恋した異性の醜い怒りを目の当たりにして幻滅する主人公の悲哀」を、翌年には「大人の真似をしようとして一人で電車に乗ったものの切符を失くして子供たちだけの世界に逃避する寓話的世界」を、さらりと示しました。さすが麻布。ただ、これらはいずれも「結局は大人になるよね」という予定調和的な暗示を読み取る可能性を許容しています。
②どう見ても「ハッピーエンド(心の成長)」とは解釈できないケース
→平成14年の桜蔭の大問二は特筆ものです。
「戦争の悲惨と飢えのなかで亀の卵をすすり海に“かえった”少年と、何があっても悠々と泳いでいる海亀との、比喩的な対比」、これはレベルが高い。「『所有』から解き放たれない人間の卑小さ」を理解する「ワンランク上の」抽象的思考が求められています。ここには「心の成長」も何もありません。たしかに、よくあるテーマのパターンからは外れています。
以上、2回に分けて「入試頻出テーマ」について「典型的な」ものを説明いたしました。今後は、
「こんなテーマにも注目」という切り口で語っていこうと思います。ご期待ください。