みなさん、こんにちは。受験ドクターのNです。
今年の開成中学の入試で、再び「詩」が出題されました。3年前の平成26年度にも出題されていましたので、驚いた受験生はあまりいなかったのではと思われます。
しかしながら、入試全体でみてみると、「詩」はひろく出題されるものではありません。筑波大附属駒場や灘などのように定番で出題する学校はありますが、ごくごく限られています。
よって、一般的な学習カリキュラムではどの塾においても「詩」はたまにしか扱われません。
そのために、最低限の表現技法(倒置法とか対句とか)はひと通り理解していても、読解のための踏み込んだ学習までできているというお子さんはあまりいないようです。
今回は、私が実際に「詩」の解読法(「読解」ではなく、あえて「解読」としています)を指導するときのアプローチを少し紹介したいと思います。
題材は、平成21年度の筑波大附属駒場の大問三、金子みすゞさんの作品です。
01 月のひかりはお屋根から、
02 明るい街をのぞきます。03 なにも知らない人たちは、
04 ひるまのように、たのしげに、
05 明るい街を歩きます。06 月のひかりはそれを見て、
07 そっとためいきついてから、
08 誰も貰わぬ、たくさんの、
09 影を瓦にすててます。10 それも知らない人たちは、
11 あかりの川のまちすじを、
12 魚のように、とおります。
13 ひと足ごとに、濃く、うすく、
14 伸びてはちぢむ、気まぐれな、
15 電燈のかげを曳きながら。
二
16 月のひかりはみつけます、
17 暗いさみしい裏町を。
18 いそいでさっと飛び込んで、
19 そこのまずしいみなし児が、
20 おどろいて眼をあげたとき、
21 その眼のなかへもはいります。
22 ちっとも痛くないように、
23 そして、そこらの破ら屋が、
24 銀の、御殿にみえるよに。
25 子供はやがてねむっても、
26 月のひかりは夜あけまで、
27 しずかにそこに佇(た)ってます。
28 こわれ荷ぐるま、やぶれ傘、
29 一本はえた草にまで、
30 かわらぬ影をやりながら。
「月のひかり」はどのような存在として表現されていますか。
多くのお子さんは、次のように反応します。
上記の解答は、照らされている具体的な事物をカットしているだけまだマシですが、それでも、映像イメージからは脱却できていません。
それでは、どのようにアプローチすれば正しい解釈ができるのか、具体的にみてみましょう。
この出典に限らず「人間以外の物を中心に描いた」作品は数多くあります。
まずは次のことを意識しておきましょう。
↓
ちっとも…痛くないように → 優しい
しずかに → おだやか
佇ってます → 優しい
かわらぬ影(光) → 差別しない
次に、これらを際立たせるための イメージの対比 も確認しておきましょう。
↓
〈 月 〉 かわらぬ… ⇔ 〈 人 〉 気まぐれ
暗くさみしい気持ちをもっている人々に対して分けへだてなく
希望を与えようとする優しい存在。
ハイレベルな「詩」の問題も、基本的には次の読み取り方でアプローチできます。
“見えない” 「心」・「状態」・「性質」に置き換える
詩は「短く」「易しい」言葉で描かれていることが多いため、「しっかり読み取ろう」という 姿勢をもたれにくいものです。さあ、これからは右に示した「解読法」で取り組んでみましょう。 まちがいなく詩の読み取りが得意になりますよ。