みなさん、こんにちは。受験ドクターのNです。
昨年の夏に「説明文の選択肢のワナ」を話題にしましたが、今回は、「物語文編」です。
まずは記号選択の大前提から。
選択式問題 ⇒ 最も適切なものを選ぶ ※正誤(○×)問題を除く
「同じ言葉があるかどうか」ではなく、「意味」で判断する。
それでは、「物語文の選択肢のワナ」の主なものをご紹介します。
①「時間の前後関係がズレている」ワナ
落ち着いて確認すれば、どうということはない「他愛もない」仕掛けなのですが、
「目にとまった言葉の印象」で選択肢をみてしまう子は、おどろくほどかんたんに
騙されてしまいます。
(サッカー選手である兄が交通事故に遭ったことを知った主人公が、詳しい状況を父親に
電話で確認する場面です。)
「…大丈夫だ。……肩と腕の骨折も手術はいらない。ただ、足が…」
「足……」
新幹線がトンネルに入って接続が切れた。短いトンネルが永遠の闇に思えた。携帯のハタが
立つと、俺のほうからかけた。
「足って?」
いきなり俺は聞いた。
電話がつながっていないんじゃないかと思うくらい、父さんはなかなか返事をしなかった。
「膝を…ひどくぶつけたんだ。右膝の靭帯の損傷が……」
傍線部のときの「俺」の気持ちとして最もふさわしいものを選びなさい。【選択肢】
ア 兄の足が重傷であると聞き、ひどくあわてている。
イ 兄のケガについてなかなか詳しく説明してくれない父にいらだっている。
ウ 兄の足がどうなったのか心配でたまらない。
正解はもちろん「ウ」です。
の部分で示した通り、「ア」「イ」ともに、傍線部の後の内容を説明しています。
そう、直後であってもダメなのです。なぜなら、設問じたいが
「どのような気持ちで傍線部のような言動をしたか」という問いだからです。
言い換えると「傍線部の理由」。カッコよくいえば
「因果関係」を正確に把握しなければならない、ということなんですね。
②「対象への心情(好悪)がズレている」ワナ
これも物語文でよく見られるワナです。先に具体例を示しましょう。
(交通事故で亡くなったタケシくんと親友だったヨッちゃんは、タケシくんの母親(おばさん)
によくしてもらっていましたが…)
「でも…おばさん、もう来るなって。ヨッちゃんは新しい友だちをどんどんつくりなさい、
って……そんなのヤだよなあ、関係ないよなあ、俺が友だちつくるのとかつくんないのとか、
自分の勝手だよなあ……」
ヨッちゃんは、悔しそうに…。【設問】
傍線部のときの「ヨッちゃん」の気持ちの説明として最も適切なものを選びなさい。【選択肢】
ア 友だちをつくる、つくらないという個人的なことをおばさんに指図された
ような気がして反発している。
イ タケシが亡くなっても自分は「親友」でありたいという気持ちをおばさん
に理解してもらえていないと思い、つらくなっている。
「ア」は「友だちをつくる…」の部分が本文中の表現と一致しているために、
一見してよさそうにみえます。
また、セリフが「不満」の表出になっていることからも、
「反発」という心情が適切であるように感じられるかもしれません。
しかし、大切なことは「何に対する心情か」という確認です。
傍線部の「悔しそう」は何に対してか?
「おばさんに対して悔しい」……?? おかしいですよね!
そもそも、本文で確認できる限りにおいて、おばさんに対するヨッちゃんの心情は
決してマイナスにはなっていません。よって「ア」は不適切。
これは「心情」を「対象(理由)」から切り離して感覚的にとらえてしまう子が
はまってしまう落とし穴だと言えるでしょう。
このような「選択肢のワナ」は、しっかりと自覚しておくに越したことはありません。
お子さんが「出題者の意図を探りながら」吟味できるようになれば、頼もしいですね。