受験ドクターで国語と社会を担当していますOです。
前回のブログの最後で予告しました通り、今回は「記述問題の解答作成の際に気をつけること」というお題で書きたいと思います。
普段、生徒さんの答案を見ていますと、記述問題の解答で気になる点がいくつかあります。しかも、これらは「特定の生徒だけ」というわけではなく、多くの生徒に当てはまるのです。
記述問題は、自分の書いた解答をどのように手直しすれば正解に近づけるかということに勝負がかかっています。ある程度、自分の答案作成で良くない点や気を付けるべき点が分かっていれば、無用な減点を避けることができます。
本文中の言葉を優先させる
設問に「文中の言葉を用いて」という条件があれば、基本的には「抜き出しの延長」で解きます。
では、もし設問文に何も指示がない場合は、どうやって解きますか?
「できるだけ本文中の言葉を使う」のが正しいアプローチです。
なぜ、自分の言葉を極力使わない方がよいのかというと、小学生が自分の頭で言葉をひねり出そうとすると、本文の内容と異なるものになってしまう危険性があるからです。小学生にとっては、入試問題で使われる本文は難度が高いものであるため(中学~高校レベル)、本文の語句を自分の言葉で言い換えてしまうのは、「危険な綱渡り」をすることになってしまいます。自分の言葉で解答作成するのではなく、まずは本文中の言葉を優先させましょう。
具体例やセリフではなく、まとめ(一般化)を使う
論説文には具体例(引用など)が、物語文にはセリフが必ず含まれています。具体例は「具体的に答えなさい」や「例を挙げて説明しなさい」というときのみ使いましょう。
では、どこを使えばよいのでしょうか?
説明的文章→具体例の前後に具体例をまとめた文章(一般化された文章)があります。そちらをつなぎ合わせましょう。
文学的文章→セリフの部分をそのまま使うと長すぎるうえに、分かりづらいものとなります。記述問題の答案は「本文を読んでいない人にも伝わるように書く」のが必須です。セリフを客観的に説明する形に変換しましょう。
解答要素の数を意識する
学年にもよりますが、要約型の記述問題(文中の言葉をまとめるタイプ)では、本文中の一カ所のみで解答作成できるということは稀(まれ)です。
特に5年生後半以降は入試問題レベルに近づいてくるため、解答要素は2~3カ所は考えた方がよいでしょう。複数箇所が採点上の解答要素だとすると、解答要素不足ではどれだけ良い解答を作ったとしても、合格点には達しません。
私のお薦めとしては、文中で使えそうな文章に多めに線を引き、内容が重複しているものは1つにしぼりつつ、番号を振っていくやり方です(傍線部をナンバリングするということです)。
傍線部と同じ言葉を繰り返していないか
大人からすると意外に思えるかもしれませんが、「傍線部を説明しなさい」という問題で、傍線部と同じ言葉を解答に含める生徒が少なからずいます。当然のことながら、「傍線部を説明しなさい」と言っているのに、傍線部の語句を繰り返しても点数にはなりませんよね。
また、傍線部中に比喩表現が含まれていて、それを比喩を用いない表現に置き換える問題でも、同じような現象が見られます。ついつい、傍線部の内容に引きずられてしまうようです。気を付けましょう。
なぜ「線引き・マーキング」しない子がいるの?
中学入試の国語は本文の文字数が多く(平均すると6000字程度)、しかも、設問数も少なくありません。したがって、本文を読み返す時間はあまりなく、もしあったとしても、傍線部前後や傍線部を含む形式段落の範囲でしょう。
だったら、初読(=最初に本文を読む)の際に、きちんと線引きやマーキングをしておけばいいのですね。これらをマスターすると、記述の解答要素探しや根拠探し、抜き出し問題でも効果を発揮します。
線引き・マーキングについては前回のブログ(※国語が苦手な子への処方箋④)をご参照ください。
一文を長くしすぎない
これもしつこく指導しないと、なかなか治らないものの一つです。
問題集や塾のテストの模範解答が長い一文であることも影響しているのかもしれません。小学生が200字以上の記述解答を一文で書ききることは危険です。「主語-述語の乱れ」や意味の通じにくい複文や重文になりかねません。短い文で書いて、接続語を適切に使いましょう。
推敲(すいこう)する
自分の書いた答案をしっかりと読み直しましょう。
「テスト時間が短く、自分の書いた答えを読み直す時間などないよ!」という人もいるでしょうが、たとえば100字程度の文をさっと読み返すのは、それほど時間がかかりません。せっかく苦労して書き上げた解答ですから、「てにをは」の間違いや、誤字脱字で減点されるのは悔しいですよね。
あと、最も多いパターンが「重複」です。長い記述問題では、その場の思いつきで書き始めてしまうと、最初に書いたことを何度も繰り返してしまう子がいます。いずれにせよ、きちんと推敲すれば防げる失点です。
文字数は足りているか
記述問題で字数制限を設けているものがあります。「○字以内で答えなさい」という類いのものです。一般的には塾では「80%以上書きなさい」と指導されると思います。私はあえて「90%以上」と言いたいです。この字数とは問題作成者が模範解答をもとに割り出した字数です。ということは、80%では解答要素が足りない可能性が大きいのです。
では、字数制限のない問題はどうでしょうか? こちらは解答欄の大きさで決めます。マス目がない解答欄だと大きめの字を書いてしまう子がいますが、これは気を付けたいところです。私は「常識の範囲内で小さな字で書くように」と指導しています。
中学入試での採点は基本的には「加点法」だと言われていますので、多少余計なことを書いても大幅な減点をされるということはないでしょう。「書くべき内容が書いていないので点数が低い」というケースが圧倒的に多いのです。
解答の型を意識する
記述問題で「AとBの違いを説明しなさい」というものがあります。この場合は、まず解答の型を考えましょう。「Aは…である。一方、Bは…であると(いう違い)。」のように、「対比型」でまとめます。
それでは、「AとBの共通点を説明しなさい」という問題はどうでしょうか? 「Aは…である。また、Bも…である。AもBも…であるという点で共通している」のように「類比型」でまとめます。記述問題の答案は、採点者に伝わりやすいように書くことが大切です。
文末に「事」「物」「為」は使わない。
これは塾などで注意されることが少ないのではないかと思います。
たとえば、「○○だということ。」という解答で、「○○だという事。」と答えてはいけないということです。
中学入試で減点されることはあまりないかもしれませんが、大学入試レベルでは減点対象となります。
口語や俗語は使わない。
口語(話し言葉)や俗語(正式な日本語ではない言葉)は使ってはいけないとは分かっていても、つい使ってしまうのかもしれません。
「~じゃなくて→~ではなくて」「見れる・着れる(ら抜き言葉)→見られる・着られる」「違くて→違っていて」「うざい・むかつく・きもい→不快である・腹が立つ・気持ちが悪い」などです。
「なので」を文頭で使わない。
生徒の答案を見ていて多いのがこれです(とはいえ、最近の文章にはわりと出てくる表現なのですが…)。
正確な日本語表記では、「なので」は文頭に置くことができません。「だから・したがって」などに置き換えましょう。同様に「ですが」は「ところが・しかし」のように逆接にしましょう。
次回のブログでは満を持して(?)、「社会が苦手な人への処方箋(歴史編)」というお題で書きたいと思います。どうぞご期待ください!