受験ドクターで国語と社会を担当していますOです。
前回のブログでは「社会が苦手な子への処方箋(歴史編)」を書きました。
今回はその続編として、「社会が苦手な子への処方箋(地理編)」というお題で綴りたいと思います。
地理分野を集団塾で学習するのは、通常の場合ですと、4年から5年の前半までです(もちろん、そのあとも総合演習としては繰り返し出てきます)。4~5年生前半は「テキストをしっかりと音読し、きちんと理解し、正確に覚える」という社会科の学習の基本を学ぶ、大切な時期とも言えましょう。
とはいえ「言うは易く行うは難し」で、これを実践にうつすのはなかなか難しいものです。できれば、毎日短い時間でもかまいませんので、社会の学習に触れていき
たいものです
。これは国語の漢字の学習などにも通じるところがありますね。
地理に興味があるか、ないか
これは前回の「歴史編」でも書きましたが、地理が得意な子は、地名などに興味がある場合が多いようです。鉄道が好きな子も有利ですよね。
お子さんが受験学年(6年生)でなければ、夏休みや冬休みなど長期休みを利用して、ご家族で旅行に行く機会もあるかと思います。その際には、旅行先でパンフレットやチラシをもらってきて(ありがたいことに、日本の観光スポットにはたいていパンフレットが置いてあります!)、スクラップブックにまとめたりすると、地理の勉強がぐっと身近になるかもしれません。こういう作業は楽しんでやってくれる子が多いですね。
また、実際に出かけなくても、図鑑で調べたり、インターネットでいろいろと写真を眺めたりと、今は「疑似(ぎじ)旅行」ができる環境が整っています。YouTubeなどの動画サイトで映像を検索してみるのも良いかもしれません。工夫次第で知的好奇心を満たすことはできるのです。
さらには、日常、食卓を囲んでいる時に、親御様からお子さんに「今食べているリンゴはどこで採れたと思う? リンゴが育つ条件って何かな?」など、質問してみるのもよいかもしれません。
ちなみに、リンゴは青森県や長野県など年間平均気温が10℃前後の涼しいところで多く栽培されます(気温が低いと害虫も少ないなどのメリットがあります)。年間降水量が少ないところでもあります(農作物が傷みにくいなどのメリットが考えられます)。
少し本題からそれますが、最近はテレビでクイズ番組が以前よりも増えている気がします(正確なデータではなく、あくまで私の感覚的なものですが…)。クイズ番組のネタの多くは、おそらく中学入試の問題を参考にしているのではないでしょうか。PTAにはあまり推奨されることのない(?)バラエティ番組でも、受験勉強に役立つことはあるのです。
知識をセットで覚えているか
社会のみならず、勉強全般に言えることですが、1つの事柄から放射状に知識を結び付けていくと記憶に定着しやすいです。
例えば「信濃川」という地理用語に対して、
①日本一長い河川 (第2位は利根川)
②流域面積は3位 (第1位は利根川)
③信濃=旧国名で今の長野県
④長野県から新潟県に流れている
⑤下流域は新潟平野(越後平野:越後は現在の新潟県)で稲作がさかん
⑥長野県側は千曲(ちくま)川(島崎藤村の詩でも有名)と呼ばれる
⑦大河津分(おおこうづぶん)水路(すいろ)を作り、氾濫(はんらん)を防いでいる
というように、派生させていくのですね。こういう勉強法が身についている子は、短期間で効率よく知識を習得することができます。
問われ方を意識しているか
私たち社会科講師は、社会の解答をざっと見れば、「こういう問題かなぁ」というように、大まかには推測できます(ただし記号選択問題は除きます)。他の教科、例えば、国語では絶対にこうはいきませんよね。
なぜ分かるのかというと、社会は出題のパターンが、ある程度決まっているからです。ですから、極端なことを言えば、問題文を最後まで読まなくても解答が想像できるということです(問題文は最後まで読むのが基本ですので、お子さんに推奨しているわけではありません!)。クイズ番組でいうところの「早押し解答」ができるのです。
例を挙げてみますと、
①青森県と秋田県の県境にあるカルデラ湖で、ヒメマスの…
②揖斐川、長良川、木曽川が集まった下流に広がる…
③たたみ表の原料となり…
④知多半島の付け根にあり、鉄鋼業が…
⑤1967年に定められた環境基準に関する法律で…
という具合です。大人からすると「えっ? これだけで分かるの?」という感じですが、きちんと勉強をしている子どもたちはすぐに反応できます。ここで言いたいのは「用語だけを単体で覚えるのではなく、周辺の説明もきちんと頭に入れておく」ということです。普段からそういう意識で勉強に取り組むことが大切です。
ちなみに、答えは ①十和田湖 ②輪中 ③い草 ④東海市 ⑤公害対策基本法 です。
漢字で正確に覚えているか
歴史のところでも触れましたが、社会は小学校で習わない漢字も「漢字指定」で出るのが基本だと思って、小学4年生から勉強に取り組んだ方が得策です。塾によっては6年生の後半のテストから、急に「漢字指定」が多くなることがあります。その時期から漢字を覚えなおそうとすると、子どもにとってはかなりの負担です。
地理分野で間違えやすいものをいくつか挙げておきましょう。お子さんが正しい漢字で書けるかどうか、確認してみてください。正解が「10問中8問未満」だと要注意です。その時は怒らずに、「忍の一字」で10回練習させてくださいね!
①そくせいさいばい ⇔ よくせいさいばい
②かそ
③ひろさきし
④とまこまいし
⑤おううさんみゃく
⑥びわこ
⑦やはたせいてつじょ
⑧はいたてきけいざいすいいき
⑨えとろふとう
⑩せんじょうち
答えは、①促成栽培・抑制栽培 ②過疎 ③弘前市 ④苫小牧市 ⑤奥羽山脈 ⑥琵琶湖 ⑦八幡製鉄所 ⑧排他的経済水域 ⑨択捉島 ⑩扇状地 でした。
理屈を理解しているか
地理は地名など理屈ではない暗記事項もありますが(地名の由来はあるとは思いますが、そこまで覚えておく必要もないでしょう)、理屈が分かっていないと答えられないものもあります。きちんと理屈を理解しているか確かめるのに、私が生徒さんによくする質問は、以下のものです。
冬に日本海側で大雪が降ることが多いのはなぜ?
これは雨温図(気候グラフ)を勉強した子なら答えられるはずです。小4か、遅くとも小5の前半で習う単元です。ところが、意外なことに6年生になっても答えられない子が少なくありません。当てはまる子は「何となく」勉強している証拠です。
冬の季節風は、ユーラシア大陸から太平洋のほうに、つまりは北西から吹きます。これは海の方が「熱しにくく冷めやすい」という性質があるからです。暖流の対馬海流の上を通過した北西の季節風は水蒸気を多く含みます。それが越後山脈などの手前で雪を降らせるわけですね。湿った空気は山脈を越えることはありません。
テストでは、「北西の季節風が対馬海流の上を通ることで湿った空気となり、山脈の手前で雪を降らせる」と答えれば満点解答です。
以上のようなことを意識しながら、地理の勉強に取り組んでもらえれば幸いです。
次回のブログでは社会科シリーズ第三弾、「社会が苦手な人への処方箋(公民編)」というお題で書きたいと思います。どうぞご期待ください!