受験ドクターで国語と社会を担当していますOです。
前回のブログでは「社会が苦手な子への処方箋(地理編)」を書きました。今回は第三弾として、「社会が苦手な子への処方箋(公民編)」というお題で綴りたいと思います。
公民分野を学習するのは、一般的には6年生の春以降です。
では、なぜ4年生や5年生で扱わないのでしょうか。「もう少し前倒しをしてもよいのでは?」とお考えになる方もいらっしゃると思います。
公民を6年生で学習する一つ目の理由としては、先に地理や歴史といった中学入試で最頻出分野を学習した方が効率が良いというものです。公民分野は歴史や地理と比べると出題率は低い場合が多いのですね(ただし、地理・歴史・公民をほぼ同じ割合で出題する学校もあります。難関上位校はその傾向が強いかもしれません)。
二つ目として挙げられるのは、公民分野を理解するには4・5年生ではハードルが高いということではないでしょうか。
たとえば選挙制度など大人でも分かりづらいことを(というか、正確に把握している人は実は多くありません)4年生に教えても、なかなか後には残らないでしょう。
以上のことから、公民の学習は6年生で行うのがベストといえるのですね。
憲法の条文を正確に覚える
公民分野の学習で、初めのほうの単元はといえば、大抵は「日本国憲法」です。
中学入試では、日本国憲法の条文を穴埋めさせる問題が頻出です。とはいえ、司法試験ではないですので、すみからすみまで一字一句を覚える必要は当然ありません(もちろん、興味があれば覚えるのは素晴らしいことですが!)。
空欄補充問題の形式で出題される個所はほぼ決まっているといってもよいでしょう。
たとえば、以下の条文では赤字の部分がねらわれます。
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
※「象徴」を「象微」とする間違いが多いです。
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
※「国際紛争」を「国際粉争」とする間違いがたびたび見られます。
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
※「最低限度」を「最低限」と換えてしまう子もいます。
第四十一条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。
他にもありますが、中でもよく出題されるのは上記の条文です。当たり前のことかもしれませんが、条文は意味が近くても言葉が違えばバツになります。正確に覚える必要があるのですね。
公民用語を理解する
公民は地理や歴史に比べると、覚えるべき用語は少なめです。しかも、中学入試で出題される範囲は限られていますので、しっかりと勉強すれば点数に結びつきやすい「おいしい分野」なのです。
ところが、これまで「丸暗記」で何とか乗り切ってきた子にとっては、厳しい分野でもあります。
例を挙げてみましょう。
Q1. 日本国憲法では衆議院は参議院に比べて強い権限を認めています。なぜでしょうか?
Q2. 下の表は定数3人の衆議院議員比例代表選挙での、各政党の得票数です。ドクター党の当選者は何名になりますか?
Q1の記述問題は、中学入試では最頻出といってもよいでしょう。とにかくしつこいぐらい出ます。にもかかわらず、「何となくの理解」でお茶を濁している子は、毎回マルがもらえません。
「① 衆議院は参議院よりも任期が短い(参議院は6年ですが衆議院は4年です)。② 解散がある。 ③ 国民の意見(世論)を反映しやすい。」という3点をしっかりと答える必要があります。
Q2は難関上位校では度々出題される「ドント式」の計算問題です。ドント式は大政党だけに当選者が集中しないように取り入れられた方式です。計算とはいっても、複雑なものではなく、一度理解してしまえば何てことはありません。
得票数を÷1、÷2、÷3、…としていき、その答えの大きい順に当選が決まります。以下の表では、緑色の数だけ議席を獲得できるというわけです。ですから、ドクター党は2名当選です。
ニュース番組などを利用する
「普段からニュース番組を見ている子は公民分野は強い」というのは、ほぼ間違いないでしょう。とりわけ現代社会にからんだ時事問題は有利となります。だからといって、無理やりニュース番組を見せる必要もないでしょうが、午後6時にはNHKのニュースを見るなど生活の一部として組み込んでしまえば、さほど抵抗感はないと思います。「今、世の中ではこういうことが起こっているんだね。〇〇くん(ちゃん)はどう思う?」などと話題をふってみるのはいかがでしょうか?
また、選挙前には必ず「選挙特別番組(特番)」というのが放送されます。選挙特番といえば、そう、おなじみのあの方、池上彰さんですよね! 池上さんの解説はとても分かりやすいのですが、実は中学入試の勉強の内容と直結することも珍しくはありません。大人でも意外と知らないことが、中学入試の問題では問われます。是非、親子でテレビ番組を楽しみながら、公民も勉強してみてください!
新聞を読む
「子どもに新聞を読ませた方がよいでしょうか?」という質問はしばしば受けます。これは国語における「読書をさせた方が良いでしょうか?」という問いに似ていると私は思います。つまり、「読まないよりは読んだ方が良い」ということです。
では、小学生が一般の新聞(朝日新聞、読売新聞、日経新聞など)を読むでしょうか。また、仮に読んだとしてもどの程度理解できるでしょうか。そう考えると、興味を持つのは素晴らしいことですが、社会の成績を伸ばす ために全国紙を読ませるのは遠回りだと言わざるを得ません。
また、「小学生向けの新聞」という選択肢もあるでしょう。朝日新聞なら「朝日小学生新聞」、読売新聞なら「読売KODOMO新聞」、毎日新聞なら「毎日小学生新聞」が発行されています。これらの新聞は、「中学入試用」というわけではないのですが、実質的にはそのようになっています。たしかに、中学受験を考えていない小学生が、わざわざこれらの新聞を購読する可能性は高くないでしょう。そういった流れもあってか、かなり中学受験ネタが含まれています。お子さんが「読んでみたい!」と興味を示してくるならば、読ませてみてはいかがでしょうか? ただし、「積読(つんどく)」状態にならないように注意しましょう。
漢字で正確に覚える
「地理編」や「歴史編」でも触れました漢字の問題ですが、やはり(?)公民でもあります。
いくつか例を挙げておきますので、お子さんが正確に書けるか、チェックしてみてください。毎回しつこいようですが、できなくても決して怒ってはいけません。にっこりと笑って、10回練習させてください。
下線部のカタカナを漢字に直しましょう。
① 国会は、不適格だと思われる裁判官をダンガイ裁判で裁くことができる。
② 日本では国民が選んだ代表者が議会で話し合うカンセツ民主制がとられている。
③ 内閣は行政について国会に対し連帯責任を負っているが、このことをギイン内閣制という。
④ 天皇の国事行為には、内閣の助言とショウニンが必要である。
⑤ 法律などが憲法に合っているかどうかを判断する裁判所の権限を、イケンリッポウシンサケンという。
⑥ 地方公共団体のなかで適用される決まりのことをジョウレイという。
正解は、①弾劾 ②間接 ③議院 ④承認 ⑤違憲立法審査権 ⑥条例 となります。
ちなみに間違える典型としては、①弾刻 ②関接 ③議員 ④承任 ⑤異憲立法審査権(もしくは書けない) ⑥条令 などです。
以上のようなことを参考に、公民の勉強に取り組んでもらえればと思います。