受験ドクターで国語と社会を担当していますOです。
本ブログでは、受験国語にまつわるお悩みを解決していければと思います。国語の成績が良好なお子様にも役に立つ内容ですので、しばし、お付き合いいただければ幸いです。
さて、今回のお題は、テストの際の「時間切れ」に関するものです。
学年を問わず、生徒さんが国語のテストを受験した直後に、テストの感想を尋ねると、もっとも多い回答が「時間が足りず、最後まで解き切れなかった!」というものです。
もちろん、他教科でも時間がたっぷりとあるわけではないと思いますが、確かに国語は時間に追われて問題を解くことになることが少なくありません。
意外かもしれませんが、国語の成績が良い子でも制限時間を意識しながら、多少慌て気味に解いているのです。「あ~、時間が余ったから見直しでもしようかなぁ…」なんていう余裕のある子は、めったにいないはずです(とはいえ、成績優秀者は何とか解き切ります。ここはやはり「さすが」というべきですね)。
では、なぜ時間切れになるのでしょうか?
これには明快な答えが出せます。
塾が行うテストは問題数が多いからです。個人的には多すぎると感じますが、世の中の流れ(?)なので仕方がありません。
たとえば6年生の公開模試(SAPIXや四谷大塚・ワセアカ、日能研などが主催するもの)は、本番の入試問題よりも分量は多めに設定されているのが通常です。イメージ的には「入試問題×1.2」くらいでしょうか。
「じゃあ、別に問題を解き切らなくても気にしなくていいんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、国語は最後まで問題を解き切らないと、なかなか好成績はとれません。塾に通っているのに塾のテストの点数がとれないのは、精神衛生上、良くはありませんよね?
そこで、時間切れを防ぐためのトレーニングをいくつか挙げていきます。
文字処理のスピードを上げる
これは当たり前といえば当たり前のことかもしれません。国語の点数は必ずしも読書量に比例しないのは、よく言われることですが、文字処理の速度に関しては読書家の方がそうでない人に比べて上だと思います。つまり、文字処理スピードは、これまでどのくらいの文章量(文字)に触れてきたかで決まるんですね。
では、普段、読書をしない(もしくは、あまりしない)子はどうすればよいのでしょうか?
4・5年生であれば「読書習慣を少しずつ身につけていく」ということもアリでしょう。ところが、受験学年は読書をする時間があまり確保できないと思います。日々の学習に追われていますから。
そこで私がお薦めしたいのは、ずばり「音読」です。「え~、そんなの前からやっているよ…」という方もいらっしゃると思います。従来の音読練習とは少し違います。
ここではタイムを計って音読する「音読&速読」を訓練します。名付けて「音速読」です!(そのまま?)
具体的なやり方やルールは以下の通りです。
① 教材は塾で使用しているもの(もしくは、学校の教科書よりも難しいもの)をチョイス。
⇒検定教科書レベルだと速読できても、あまり意味はありません。受験学年ですと、論説文だと鷲田清一や内田樹、養老孟司といった新書レベルを、物語文ならやや古めの文体のもの(戦前から昭和あたりのもの、いわゆる文学作品)が良いでしょう。検定教科書でいうところの3学年ほど上のレベルです。
② 必ず時間を計る。
⇒スポーツ感覚で文字処理スピードを鍛えます。正確にストップウォッチで計測しましょう。タイムは記録しておくと、「前回よりも〇秒速く読めた」などと、モチベーションを上げるのに役立ちます。
③ 3000字を5分以内で読み切る。
⇒多少の誤差は構いませんが、受験学年であれば3000字を5分以内に読み終えたいところです。ちなみに、中学入試では本文だけで10000字をこえる場合もあります。これは大人が読んでもかなりきつい分量です。現在の中学入試ではいかに速読が必要かが分かります。
④ 物語文などは感情をこめて読む必要はない。
⇒小学校の音読の宿題では台詞などを味わいながら読む必要がありますが、ここでは不要です。「いかに早く読めるか」に徹してください。言ってみれば、早口言葉の要領です。
⑤ できれば親御さんも一緒に競争する。
⇒基本的には音読の練習はあまり面白くないと思います(これはあくまで私の個人的見解です)。ですから、親御さんもお子さんと競争して、ゲーム感覚で盛り上がってほしいですね。意外かもしれませんが、たいていの小学生は競争が大好きです。「勝ち負け」があったほうがやる気になるのです。
問題の処理スピードを上げる
本文を読むスピードがある程度ついてきたら、次は問題を解くスピードを早めていきましょう。
では、問題をすばやく処理するにはどうすればよいでしょうか?
そのためには、問題のパターンを熟知することが大切です。
※ 問題のパターンについては、O講師の過去のブログ(「国語が苦手な人の処方箋①‐⑤」をご参照ください。
これは算数に置き換えて考えると分かりやすいでしょう。算数なら問題を見たときに「あ、これは〇〇算だ!」と反応できなければ、時間内に答えを導くのは難しいと思います。
国語も同様です。幸いなことに(?)、国語は算数ほど問題パターンが多くありません。何となく解くのではなく、戦略的に問題に取り組む習慣を身につけましょう。
傍線部・空欄・前書きを重点的に攻める
上記のことを意識しても、なお、時間切れを起こしてしまう場合はどうしたらよいでしょうか?
設問で問われるポイントは、傍線部や空欄に集中していることが確率的には高いです(ただし「絶対!」というわけではありません)。それを逆手にとって、傍線部や空欄のあたりをていねいに読むように意識しましょう。
多くの国語講師は「大事なところを重点的に読みなさい」と指導しますが(もちろん間違ってはいません)、その「大事なところ」が今一つ分からない子は、とりあえず、傍線部と空欄が多いところをしっかりと読むように心がけましょう。
具体例・引用と一般化(まとめ)を読み分ける
これは説明的文章ではきわめて正攻法ともいえる読み方です。
具体例や引用は筆者の言いたいことではありません。筆者の主張を裏付けるための、いわば「踏み台」に過ぎないのです。ということは、具体例や引用の前後には、必ずといってよいほど筆者の言いたいことが書かれています。そこにしっかりと線引きしておくと、問題が解きやすくなります。具体例や引用は「さらっと読む程度」でOKなのです。
「本文を読みながら設問を解く」という禁じ手
最後に、国語講師としては「禁じ手」をご紹介します。実を言うと、私自身も「ダメだよ!」と言い続けてきました。
それは「本文を読みながら、同時に設問を解く」というものです。
すべての文章読解問題の冒頭には、「次の文章を読んで、後の問いに答えなさい」と書いてあります。この文言をわざわざ意識して読む子はいないでしょうが、出題者からすると「きちんと最後まで読んでから解いてね」という重要なメッセージであり、文章読解問題は本文に解答の根拠があるという大前提なのです。
ところが、「問題数が多いために、最後まで解き終わらない…。空白だらけでどうしたらよいでしょうか」というご相談は、決して少なくありません。特にここ数年は顕著です。もしかしたら、お子さんの答案も「途中まではそれなりに書けているのに…」なんてことはありませんか?
これに対して、基本的には「読み解くスピードを上げる努力をしてください」とお答えしていたのですが、たとえば「入試まであと1~2ヶ月しか残っていない」という入試直前期ともなると、そうは言っていられません。
そこで「読みながら解く」という最終手段を投入することになります。ここで注意すべき点をいくつか挙げておきましょう。
① 「読みながら解く」のは正攻法ではないことを意識する。
⇒「読みながら解く」のは、あくまで特殊な読解法と考えましょう。できれば避けたいところなのです。記号選択問題や抜き出し問題など設問数の多い模擬試験や、40分(45分)で読解問題3題の入試問題など、かなりの処理スピードを要求する場合に限ります(ただし、そういう形式は細部の読み取りはさほど求めていません)。
② 傍線部を含む形式段落まで読んだら解く。
⇒傍線部前後だけ読めば解ける問題は、さすがにすべてではありません。少なくとも傍線部を含む段落は読んでから解きましょう。「最小単位は形式段落」と意識することがポイントです。
③ 傍線部前後では答えが出せないものは、あきらめて読み進める。
⇒傍線部前後を精読し考えてみても分からないものは、それだけでは解けないのです。特に物語文では、本文全体を読まないと傍線部の意味が分からないことが、少なからずあります。最後の最後で、「ああ、そういうことね」というようにつながることだってあります。「ここまで読んだだけでは解答がまだ出せないかなぁ」と感じたら、潔く次に進みましょう。
④ 「中略」はブレイクのチャンス!
⇒「中略」はもともと本文に存在したものではなく、出題者が作問上の都合で勝手につけたものです。つまりは、「話がここでいったん切れますよ」という出題者の合図なのです。ということは、それまでの問題は、中略前までの内容で解ける可能性が高いということです。中略前までの内容を整理して問題を考えましょう。
⑤ 本文の内容一致問題は、最後まで読み切らないと解けないことが多い。
⇒内容一致問題は傍線部がないパターンですので、最後まで読まないと解けない場合が多いです。ただし、同じく、禁じ手である「設問の先読み」を効果的に使えば、本文の大まかな内容は分かることがあります。
⑥ 「本文全体をふまえて答えなさい」という指示があれば、後回しにする。
⇒当然かもしれませんが、こういった指示がわざわざついている場合は、傍線部前後で答えを出すことは不可能だと考えた方がよいでしょう。
⑦ 接続語や指示語の問題はその場で解くことが可能。
⇒接続語は基本的には空欄前後のつながりで解けます。また、指示語の90%以上は前の内容を指していますから、理論上は読みながら解くことが可能です。
⑧ 傍線部の「原因・理由」を問う問題は、近くに答えの根拠が書かれていることが多い。
⇒因果関係に関する問題は、いわゆる「部分解釈問題」である可能性が高いので、傍線部の前後の内容をよく読めば、解答を導けることが多いと言えます。
⑨ 集中して読み解く
⇒最後に、「読みながら解く」ことの難しさについて言及しておきます。
一般的な小学生にとって、難解な本文を断片的に読み、同時に設問に答えることはかなりの集中力を要します。中途半端に手を出すと自滅しかねません。2つのことを同時にやることの難しさを覚悟したうえで、持ちうる最大限の集中力を発揮させましょう。
以上、国語のテストのときの「時間切れ」に関するお話でした。次回のブログもお楽しみに!