受験ドクターで国語と社会を担当していますOです。
本ブログでは、受験国語や受験社会にまつわるお悩みを解決していければと思います。国語、社会が苦手なお子さんはもとより、現在、国語や社会の成績が良好なお子様にも役に立つ内容ですので、お付き合いいただければ幸いです。
さて、今回のお題は、前々回に引き続き、受験国語の読解法に関するものです。読解法でも「設問を解く力」はとても大事です。受験学年に近づけば近づくほど、その重要度が増します。
まずは以下の表をご参照ください。
今回のブログでは、「Ⅱ 設問を解く力」の(a)にスポットを当てて、ご説明したいと思います。
実は、私が「読み方の法則・解き方の法則(※読解のルールのようなもの)」と呼んでいるものは、細かいものを含めますと、100を越えます(かなり初歩的なものも含めると、です)。100というと皆さん驚かれる方もいらっしゃるのですが、算数でも公式と呼ばれるものを数えたら、もっといくだろうと思います。
しかしながら、いきなり「100以上覚えなさい!」と言ったら、生徒さんは引くだろうという私なりの配慮(?)から、「解き方の法則」を7つにしぼってみました。
この7つだけでもかなり広い範囲で応用できると思います。
では、一つずつご説明しましょう。
①傍線部・空欄前後の精読
まずは、文章読解問題の解き方の「いろはのい」として、皆さんに徹底してほしいものはこちらです。
傍線部に関する問題(「傍線部の説明として適当なものを次の中から選びなさい」など)や空欄に適語を入れる問題(「次のア~エにあてはまる言葉を選びなさい」など)は塾のテストでも頻出ですね。もちろん、入試でも多くの学校が出題する形式と言えます。こういうタイプの問題では、傍線部とその前後をていねいに読むことが大切です。
え? 「そんなことは当たり前じゃないか」って?
この当たり前と思われていることがきちんとできていない子が、とても多いのです。しつこいようですが、とても多いのです。特に、サピックスの偏差値50、四谷大塚、日能研の偏差値55を切る人は間違いなく、これに該当すると言ってよいでしょう。
今まで、私が生徒さんを指導するときに、「傍線部と空欄の前後はよ~く読むんだよ」としか言ってきませんでした。でも、言っただけではなかなか改善されないんですよね。それもそのはず、生徒さん本人は「読んでるつもり」なのですから。私から言わせれば「傍線部や空欄周辺を眺めているだけ」なのに!
そこで、良いことを思いつきました。
といっても、難しいことではなく、きわめてシンプルなやり方です。それは「傍線部と空欄の前後に線引きしてもらって、さらに重要語句を〇で囲んでもらう」という作戦です。これだと、嫌でも傍線部、空欄の前後を読まざるを得ません。それに、テスト後にやったかどうかの確認ができます。
こうすることで、傍線部と傍線部前後に対する生徒さんの注意力は格段に向上しました。当然、正答率もかなり上がったというわけです。小学生には小学生の指導法があるのだと私も痛感しました。
②形式段落単位での内容確認
① では「傍線部と空欄前後の内容確認」について述べました。
では、傍線部と空欄の前後確認だけで、すべての問題が解けるのでしょうか? もしそうであれば、本来は禁じ手である「本文を読みながら解く」ということが可能ということになってしまいます。
実は、それだけでは解けない問題も出てきます。特に難関上位校の入試問題レベルです。
たとえば、以下のような問題です。1~3は段落番号を表します。
1 ①・・・・・・・ではなかろうか。
2 たとえば、・・・・・・・・・。さらに・・・・・・・・。
3 つまりは・・・・・・・・だと言えるのである。
具体的な内容が書かれていないので、多少分かりづらいかもしれませんが、要は「下線部①とはどういうことですか」という問題の場合、2段落は下線部①の具体的な説明であり、3段落で一般化している(「つまり」以下で、言い換えてまとめている)という文章構造を見抜けるかが勝負です。
「一般Ⅰ⇒具体⇒一般Ⅱ」のサンドウィッチ型の論理展開は非常に多いです。このような問題では、3段落まで視野が及んでいるかがポイントになります。
形式段落ごとの意味内容や文章構造を、きちんと把握する読解力が求められます。
③ 選択肢の部分的確認
これはホントに大切です。ところが、上位生でもこれをやらない子がいます。いや~、恐ろしいことですね!
やり方はいたって簡単です。
選択肢を全文で正誤判断するのではなく、パーツに分けて「〇✕」をつけるというものです。
例) ア ・・・・・・・・で、・・・・・・・・なので、・・・・・・・・・といえる。
⇒ ア ・・・・・・・・で、/ ・・・・・・・・なので、/ ・・・・・・・・・といえる。
/ (スラッシュ)を入れて、部分的に正しいか間違っているかを確認します。
記号選択問題は、基本的には「間違い探しゲーム」だと思ってください。一見すると正しく思える選択肢が、ずらっと並んでいます。しかも、4択ないし5択の中には、「え? どこが違うの?」というくらい、よ~く見ないと区別がつかないものがあります。
では、正誤の根拠はいったいどこにあるのか? もちろん、本文内容ですね。
迷ったら本文内容に立ち返って、確認することが不可欠ですが、小学生はこの作業を面倒くさがります。指導者が「忍の一字」でやらせることが大切です。
④選択肢同士の比較
③ では「記号選択問題は間違い探しだ!」とご説明しました。
でも、「どうしても選択肢2つが残ってしまう」という経験はありませんか?
ついでに言えば、その迷った2択をテキトーに選ぶと、なぜか不正解になるという「あるある」も(笑)。
こういった場合はどうすればよいのでしょうか?
それは「次の2つの絵で違うところはどこでしょう」というゲームと同じ要領でよいのです。
すなわち、2つの選択肢のうち、どこが違っているのかをあぶりだすやり方です。そのためには、じっくりと見比べることが必要です。たいていは、3パーツのうち2パーツまでは同じということが多いと思います。出題者は1つだけ正解とずらして(つまり間違った情報をまぜて)、まぎらわしい誤答を作ることが多いからです。
最後までしっかりと選択肢を見比べることがポイントです。
⑤傍線部の言い換え
いわゆる「~とは、どういうことですか」パターンです。
「傍線部…とあるが、どういうことですか? 説明しなさい」「傍線部…とあるが、これを説明したものとして適切なものを次から選びなさい」など、記述、記号の形式を問わず出題されます。
ちなみに、日本の最高学府である東京大学の現代文2次試験は、この出題形式(記述式)がほとんどですね。
こういうパターンの対処法としてやるべきことは、まずは、傍線部を短く分けるということです(デカルトが言う「困難は分割せよ」と同じ発想です!)。
つぎに、分かりにくい言葉を言い換えるという作業を行います。
「分かりにくい言葉」とは、「1.指示語 2.比喩 3.筆者独特の言い回し 4.難解語句」の4つです。中学受験でとくに多いのは、1の指示語と、2の比喩です。基本的にはこれだけの作業で合格点がとれるはずです(要するに、記述問題ならば部分点7割以上ということです)。
指示語ならば本文の語句を用いて具体化しましょう。
比喩表現ならば比喩を用いない一般的な言葉に置き換えます。
意識できればなんてことない問題に思えますが、「何となく解いている子」は得点できないタイプの問題です。つまり、差がつくタイプの問題といえるでしょう。
⑥記述の解答要素
記述問題で多くの子が犯してしまう過ちとは何でしょうか。
その一つは「何を書くべきか決める前に、とにかく書き始めてしまう」というものです。要するに、その場の思いつきで記述答案を書き始めてしまうのです。
塾が主催する模試などは問題数が多いので(実際の入試問題よりも分量は多めです)、じっくりと考える時間的ゆとりがないというのも、その原因のひとつかもしれません。
また、塾の先生や親御さんに「とにかく何か書きなさい! 書かないと点数にならないよ」と言われて(脅されて?)、仕方なく何か書いているのかもしれません。
しかし、だからといって、何もプランを練らずに、だらだらと文字を書き連ねたところで、高得点は取れません。毎回、博打(ばくち)のような記述答案を書いていては心もとないですよね。
ですから、私は生徒さんに「まず、解答要素として必ず入れなければいけない内容(⇒これを解答の核〈コア〉と私は呼んでいます)は何だと思う?」という問いかけをします。これこそがまず先にそろえるべき「優先順位の高い解答要素」というわけです。
そういう発想で、解答要素をできるだけ「簡潔に多めに」そろえていきましょう。ここもポイントです。小学生は少ない解答要素を無理やり引きのばして、解答欄をうめようとします。笑えない話ですが、よくあることです。
以前、私と生徒でこんなやりとりがありました。
字数制限のない(マス目のない)解答欄に関して話していました。開成や麻布、桜蔭タイプの記述問題です。
O講師 「解答要素が少ないね。字も大きすぎる。もう少し、文字を小さくして解答要素を多めに書こうよ」
生徒A 「え~、そんなことしたら、解答欄がうまらなくなっちゃう…」
O講師 「小さな字で解答欄がうまらなくても、大きな字で解答欄をうめても、点数は同じだよ」
生徒A 「でも、解答欄が余っていると、『もっと何か書け』って塾の先生に注意されるんだもん…」
O講師 「……」
答案の文字サイズについて大手塾で指摘を受けたという話は聞いたことがありません。しかしながら、とても大切な「戦略」だと私は考えています。
もっとも良い解答例は「妥当な文字サイズで、本文内容を簡潔にまとめた解答」であることに異論はありませんが、それは国語の先生だからできることで、小学生にはハードルが高すぎることがあります。
だったら、少し減点されてでも解答要素は多めにそろえるべきだと私は思います。
⑦記述における解答の型
最後に記述答案の型についてご説明します。「国語の出来る子(サピックスで偏差値65以上、四谷大塚、日能研で偏差値70以上)」は意識できていますが、なかなか大手塾では指導されないことの一つです。
たとえば「AとBの違いについて説明しなさい」と聞かれたならば、当然、記述解答の答え方は「Aは〇〇〇である。一方、Bは△△△であるという違い。」という要領で答えなければいけませんね。この場合、〇と△の内容はきちんと対になっているかも意識しましょう。
また、最近では「AとBの共通点について説明しなさい」というタイプ(類比型記述)も出題されます。この場合は、AとBの両方に当てはまる言葉で説明することがポイントです。何となく書いてしまうと、AかBの片方にだけしか当てはまらないことを書いてしまうことになりますので、気をつけましょう。
以上、国語の「設問を解く力」に関するお話でした。ためになりましたでしょうか?
では、また次のブログでお会いしましょう。