メニュー

投稿日:2017年04月05日

テーマ: 国語

読書を得点力に結び付けるには?

受験ドクターで国語と社会を担当していますOです。

今回のブログでは、「読書を得点力に結び付けるには?」と題してお届けします。

最近、保護者の方とお話をしていてよく耳にするのが「うちの子、語彙力ないんですけど…。先生、どうしたら良いでしょうか?」というものです。
私から言わせると「先生、うちの子、語彙力はあるんですよね!」と自信を持って言われたことがありません(まぁ、仮に語彙力が高くても、そんなことをおっしゃる方もいないかもしれませんが…)。

そもそも、小学生は大人に比べると語彙力がないのが当たり前なのですね。
ところが、中学受験の国語を解くには語彙力は必要不可欠な要素です。

どのくらいの語彙力を要求されるかというと、「大人ならば一応聞いたことがあるけれども、意外と思い違いをしていることもある語彙」レベルです。うまく伝わりましたでしょうか?
(語彙の話は、次回のブログでも実例を挙げて、くわしく解説する予定ですので、お楽しみに!)

では、この語彙力というものを高めるにはどうしたら良いのでしょうか?

良質な」読書時間のすゝめ

上記のタイトルをご覧になって「な~んだ、また読書の話かぁ…」と思った方もいらっしゃるかもしれませんね。
ちょっと待ってください!

中学受験国語と読書 必要 2

本ブログでも何度か申し上げましたが、私自身は、国語講師が生徒の国語ができない原因をすべて読書のせいにするのに、疑問に感じています。
なぜなら、「今までの読書量=国語の点数」とは必ずしも言えないからです。

本をたくさん読む子が国語の点数はとれないこともありますし、読書家の子が国語の点数もよいという例もあります。そもそも読書が国語の勉強であれば、国語の授業も国語講師も要りませんよね?

とはいえ、私は読書を否定するつもりは毛頭ありません。読書家はそうでない子に比べると言葉を知っていますし、文章を読むのも概して速いです。これは受験国語を読み解くうえでは有利なことです。

ついでに申し上げるなら、読書だけではなく、TVドラマや映画だって国語の勉強に役立つ素材はあるのです。
机の前で勉強ばかりしている子は、物語文などを勉強していて「これってよくあるパターン(予定調和といいます)だよね?」と聞いても、いまいちピンとこないことがあります(「恋の話」「肉親の死の話」「経済的に貧しい家庭の話」などは、特に苦手な子が多いです)。これは「世間の常識的判断」というものにもつながっていくことですが、これについて詳しくはまたの機会にでもお話ししたいと思います。

さて、ここでは読書に限定してお話ししましょう。

一般的には読書は娯楽(楽しみ)で行うものです。国語の文章読解問題を解くようには読みません。
「読書」と「受験国語」を、以下の表で比べてみましょう。

中学受験国語と読書 必要

これらの違いを踏まえた上で、どのように受験国語の勉強に結びつけたらよいのかを考えていきましょう。

まずは、①の「読むスピード」ですが、当然のことながら読書では制限時間が設けられていません。気に入ったページを繰り返し読んでもいいですし、つまらないなあと感じたら読み飛ばしたり、読むのを止めることすらできます。

一方、受験国語は制限時間があります(通常は大問1題20分程度で解かなければなりません)。
これが非常にきついのです。3000~4000字の本文を5分程度で読まなければいけないのですね。

数多くの文章に触れてきた大人ならまだしも、小学生にとっては厳しいスピードが要求されます。でも、「音読→黙読」を何度も繰り返すうちにスピードアップしますので、ここは訓練あるのみです。特に5年生前半までは、塾の教材などを音読することを心がけましょう。この際に意識したいのは、上手な朗読ではなく、あくまでスピードです。物語文であればセリフなどを情感を込めて読む必要はありません。

中学受験国語と読書 必要 3

②のジャンルについてですが、読書で興味のないものを読むことは、普通はないですよね(読書感想文とか課題図書などは例外的です)。関心のある事柄について書かれた本や、自分が面白そうだなと思った本はあっという間に読み終えてしまいます。内容も頭に残りやすいです。大人だって同じことです。

ところが、受験国語はおおよそ小学生が関心がないもの(特に、抽象的な論説文や時代設定の古い物語文など)が出題されることがあります。いや、はっきり言ってしまえば、「小学生が読みづらいのが分かっていて、わざと出題している」のです。「何となく雰囲気で」読むのではなく、論理的に読めているのかを問うているわけです。

ここで、普段好んで読んでいるジャンルのものをあえて選ばずに、読んだことのないジャンルから本を選んでみるということをお勧めします。これには親御様のお声がけも必要でしょう。「〇〇のテーマにした本を読んでみてはどうかしら?」など、強制にならない程度に促します。

続いて、③の語彙レベルについて。読書では、通常、自分が読んでいてストレスの少ないものを選びます。
たとえば、標準的な小学生は本屋の文庫本コーナーに行って、本のページをパラパラとめくり、ある程度、内容を想像してから購入します。内容が想像できるということは「自分の語彙力で理解できる内容である」ということです。ハイデガーやキルケゴールのような哲学書を手にして買おうとする子は極めて少ないはずです。これは極端すぎましたが、たとえば、中学受験に頻出作家の鷲田清一や養老孟司、内田樹、内山節などの評論を愛読している小学生に出会ったことがありません

でも、一見難しい語彙が並んでいる本でも、かみ砕いて伝えてあげれば、意外と小学生でも興味を持ってくれるものもあります。「難しめの文章を少し背伸びをして読む子(=知的好奇心が強い子)」は国語で点数が取れる子になるでしょう

④の分からない言葉の対処ですが、「あれ? これって何て読むのかな?」「この言葉ってどういう意味だっけ?」という語句に出会ったとき、多くの子は飛ばすか、自分なりに類推してしまいます

もちろん、それでも全体の内容をつかむのには支障はないのですが、受験ではそこを突っ込んで問われるのです。ですから、私からのご提案としては「読書でも分からない言葉に出会ったら、辞書で調べよう!」ということです。この際、紙の辞書がめんどうくさいなら電子辞書でも構わないと私は思います。

中学受験国語と読書 必要 4

言葉との出会いは一期一会。その時にしっかりと調べるクセをつけてほしいのです。

最後に、⑤の「文章表現の把握」ですが、たとえば小説を読むときに何を中心にして読むかというと、多くの人はストーリー展開を追う読書です。特殊な人(たとえば、国語講師とか作家など国語を生業としている人)は表現技法とかについ目がいきますが、「ここにこう書いてあって伏線になり、あとの展開につながるのか。なるほどねえ」なんて、ふつうは考えませんよね。

ところが、入試ではその細かい描写や表現技法が問われます
たとえば「象徴、暗示、情景描写」などは中学受験でも頻出です。ですから、読書の際に少しでもそういった視点を持って読み進めると、国語の勉強に活きてくると思います

以上、「読書を得点力に結び付けるには?」というお話でした。

次回は「語彙力を高めるには?」と題して、読書以外の語彙力増強法をご説明します。
具体的な問題にも触れていきますので、直接、得点アップにもつながります。

どうぞ、ご期待ください!

国語ドクター