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投稿日:2017年05月04日

テーマ: 国語

中学受験で狙われる語句を攻略するには?

受験ドクターで国語と社会を担当していますOです。

今回のブログでは、「中学入試でねらわれる語句を攻略するには?」と題してお届けします。

前回の講師ブログでは「読書の効用」についてお話しました(まだ読まれてない方はぜひ!)

何となく本を読むだけでは、国語の点数に結びつかない
ということがお分かりいただけたと思います。

「読書=受験国語」ではないのですね。
読書を国語力に結びつける工夫が必要だということです。

では、そもそも、普段から読書をする習慣がない子に対しては、どのように指導すればよいのでしょうか。

次のアからオのなかから、当てはまるものをすべて選んでみてください。

(なんだか国語の記号選択問題みたいですね!)

ア 強制的にでも本を読ませる。

イ 読書については一切触れない。

ウ 読みたくなければ無理やり読ませない。

エ 子どもの興味がわきそうな本を近くに置いておく。

オ 親御様が子どもの前で楽しそうに本を読んでいる姿を見せる。

さて、いかがでしょうか?

実は、学年によって正解は変わってきます。

アの「強制的に読ませる」は学年問わずNGですよね!読書は他人から強要されるものではありませんので。

イの「読書については一切触れない」というのも極端すぎます。
少しくらいは本の話をしてみても良いと思います
たとえば「お母さん、〇〇〇って本を読んだんだけど、感動して泣いちゃったわよ。」程度でよいのです。
押しつけがましくならないように心がけましょう。

ウは学年問わず正解ですね。アの反対です。

エは、国語の先生がよくおっしゃるアドバイスです。
確かに間違ってはいません。

サッカー好きの子なら、有名サッカー選手の自伝などを、動物好きな子なら獣医さんの話などを、といった具合です。
ただし、これがうまくいくケースはあまり多くないと思います(あくまで、私の感覚です)。

オが、個人的にはいちばん効果があるような気がしています
やはり、子どもって親御さんの行動をよ~く観察しています。
子どもは大人が楽しそうにしているものに興味があるのです。
おいしそうにビールをごくごくと飲むお父さんの姿を見て「どんな飲み物なんだろう。そんなにおいしいのかな?」と興味を持つように(ビールは子どもは飲んではいけませんので、ちょっと次元は違うかもしれませんが…)。

それでは、まったく読書をしない子に対してはどうでしょうか
文字通り、「まったく」だとしたら?

相手が6年生ならば、私は迷わず「あっ、そう。じゃあ、読まなくていいよ」と言います

そうすると、子どもは「え~?読まなくていいんだぁ!」と驚きます。
そして、親御様は驚愕します(笑)

ただし、大事なのはここからです。

「国語の勉強はしようね!」と笑顔で付け加えます。

前置きが随分長くなりましたが、今回のブログのメインテーマは「中学入試でねらわれる語句を攻略するには?」というものでした。

では、語彙力を高めるには、どのようなことに気をつけて国語の学習に取り組めばよいのでしょうか

塾で使用する教材などで分からない語句があれば調べる

これは「当たり前と言えば当たり前」です。
塾の保護者会などでもすすめられることがあるのでは?
とはいうものの、意外とできていないのが現状でしょう。

知らない語句すべてを覚えるべきかについては少し考えなければいけませんが、
くりかえし出てくる言葉(たとえば、論説文における「合理化」「画一的」、物語文における「わだかまり」「引け目」など)は要注意です。

私がおすすめする学習法は分からなかった語句を専用ノートに書きだしていく方法です。
できれば、「あいうえお順」にしておくと後から追加したり、調べやすくなると思います。
あらかじめ、「ア行、イ行…」のように、スペースを空けて書く形式です。

市販の語彙問題集を使って覚える

語彙の問題集を使って学習するという方法もあります。

ただし、これは生徒さんの性格にもよるところが大きいかと思われます。
「『問題集を1日1ページやろう』と決めたものの、ページの上段に日付が数ページ振られただけだった…」という、なんともかわいそうな問題集が、リサイクルショップなどで売られているのを見かけます(笑)

お子さんが語彙問題集をやりたがらない、もしくは、後日チェックテストをしたらほとんど覚えていないという状態ならば、あまり効果は期待できないでしょう。

私のおすすめとしては、「5年の後半から6年の前半にかけて、とりあえず1冊やってみる」というものです。
これには理由もあります。
中学受験の国語は5年生の後半が一つ目のヤマになるからです

要するに、レベルがぐっと上がるのがこの時期なのですが、お子さんがそのように感じる原因の一つとして挙げられるのが、語彙不足です。
入試問題レベルを解くためには、小学生が使っている日常の語彙では太刀打ちできません。

家族間での会話において語彙レベルを上げる

昨今は、塾の説明会や入試分析会などで、「語彙力は家庭内での会話でもきたえることができます。
ぜひ、きちんとした日本語を使うようにしてください」と国語講師が語るのを耳にすることが多くなった気がします。
「なるほどなぁ~」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
私も親ですので同じようなことを考えるわけですが、はっきり言いまして、急に家庭内で使う語彙レベルを上げるのは至難の業です。

たとえば、敬語の問題です。
普段から「尊敬語・謙譲語・丁寧語」を使いこなせていれば、中学入試問題の敬語の問題は満点が取れます。
「よし、じゃあ、今日から我が家も敬語導入だ!」とはいきませんよね?(それができればよいかもしれませんが…)
やはりきちんと国語の勉強として扱ったほうが効率的です。

入試で問われる語彙レベルを知る

さて、ここからは実践編です。

以下に挙げた文章(①~⑫)はいずれも間違った慣用表現が含まれています。

どこが間違っているのか、きちんと指摘できますか?

お子さんも親御様も、ぜひ、解答を見る前に考えてみてくださいね。

小学生で12問中10問正解なら、「なかなか」の語彙力です!

それなら、大人の方なら全問正解でしょうか?(笑)

では、スタート!

① 今朝のクラス会での彼の発言は、的を得たものであった。

② 「ねえ、昨日、スターウォーズの新作映画を見たんだって? さわりだけでもいいから教えてよ!」

③ 近所で大きな火災が発生し、消防車が3台出動するなど、上へ下への大騒ぎだった。

④ テレビを見ながら国語の宿題を済ませるなんて、なおざりなことをしてはいけない。

⑤ 「私も今年で65歳になりましたが、老体に鞭を打って、仕事に取り組みたいと思います。」

⑥ 前回、良い成績だったからと言って油断していると、足元をすくわれる結果となるよ。

⑦ 「いらっしゃいませ。お客様、おタバコはお吸いになられますか?」

⑧ そんなに練習をさぼってばかりいると、Aさんの二の舞を踏むことになりますよ。

⑨ 会議では意見が分かれ、出席者も打開策が思い浮かばずに、煮詰まっている様子だった。

⑩ 5歳になる姪っ子は、親戚の集まりで、愛想を振りまいていた。

⑪驚いたことに、クラスの優等生全員がすべからく、同じ答えであった。

⑫今回の大きな仕事は、私のような若輩者では役不足ですが、精一杯がんばりたいと思います!

解答およびワンポイント解説

① 的を得る⇒的を射る 的は「得る」ものではなく「射る」ものですね。

② さわり⇒「さわり」は「冒頭」という意味ではなく、「最も印象的な場面」という意味です。テレビのコメンテーターも間違えて使っているのを耳にすることがあります。

③ 上へ下への大騒ぎ⇒上を下への大騒ぎ 助詞の誤用です。助詞の使い方は難しいですね!

④ なおざり⇒おざなり 「なおざり」は「やらなければいけないことをまったくやらない」、「おざなり」は「いいかげんにでも一応はやる」という違いがあります。どちらも「いいかげんな感じ」ですのでまぎらわしいです。

⑤ 老体に鞭を打つ⇒老骨に鞭を打つ これもよくある誤用です。体に鞭を打つほうがイメージしやすいからでしょうか。謙遜の意味合いで使われます。

⑥ 足元をすくわれる⇒足をすくわれる 文化庁の調査でもよく取り上げられる誤用です。

⑦ お吸いになられる⇒お吸いになるor吸われる 二重敬語の典型として出題されます。昨今はたばこ自体が公共の場所では吸えなくなっていますが!(笑)

⑧ 二の舞を踏む⇒二の舞を演じる 「二の足を踏む」と混同した誤用です。

⑨ 煮詰まる⇒「煮詰まる」とは「まもなく結論が出る状態」で「いきづまる」という意味ではありません。誤用のほうが多く使われると感じます。

⑩ 愛想を振りまく⇒愛嬌を振りまく 「愛想」と「愛嬌」は言葉が似ているので間違いやすいですね。

⑪「すべからく」は、その音から「すべて」という誤用が広がっているようです。「すべからく」は「~すべし」から派生した言葉で、「当然するべきこととして」「本来ならば」という意味で用いられます。例文を挙げておきましょう。

(例)学生はすべからく勉強をすべし。

⑫「役不足」とは、文字通り、「役が役者(人)よりも足りていない」、すなわち「人の能力>役の重要度」という意味になってしまいます。この場合は自らを謙遜しているので、「力不足」というべきですね。

いかがだったでしょうか?

大人の方でも意外と迷うものもあったのではないでしょうか?

中学入試でねらわれる語句問題は、まさに「大人なら聞いたことはあるけれども、意外と間違えて使っている言葉」です。
言い換えれば、日常的な言葉ともいえます。大学入試の現代文レベル(⇒たとえば「眼光紙背に徹す」とか「人口に膾炙する」など、日常の会話レベルではまず使われない語句)を求められているわけではないのですね。
このあたりのことを意識して勉強するとよいでしょう。

以上、「中学入試でねらわれる語句を攻略するには?」というお話でした。

次回は「抜き出し問題の攻略法」と題して、抜き出し問題の解き方をご説明します。

国語の偏差値が60の壁を超えられないお子さんや、抜き出し問題に時間がかかってしまうお子さんをお持ちの方は、特に役立つ内容になると思います。

どうぞ、ご期待ください!

国語ドクター