さて、今年度の桜蔭中の入試問題を分析したいと思います。
まず1の文章ですが、やはり、日本文化の価値の高さを見直す、桜蔭中らしい題材が出題されました。
桜蔭は文化論が多いのですが、その多くは欧米と比較しながら日本の良さを見つめなおすという考えを述べた文章です。過去問を中心にこのような題材の傾向をしっかり把握できた生徒なら、「ああ、いつものパターンね。」と感じられる文章でしょう。設問を見ると、問1、2はさほど難しくありません。
問3はここ最近良く出題されるタイプの問題で、二つの短めの文章を比較させながら説明させる問題です。実はこのタイプの問題も出題されることは予想できていました。(詳細は桜蔭中ドクター参照してください。)
また最近の傾向として、短めの文章を2題、3題用意し、それらの文章をつなげさせて答えさせる記述問題が出題されることがあるので、このような文章題が出題されたら、必ずそれぞれの文章の共通点を考えておくことが大切である.
(以上桜蔭中ドクターより抜粋)
この設問のポイントは、私たち現代の人々が求められている「心豊かに生きるという人の生の本質を保ちながら、人間活動拡大を低環境負担型に変えていくということを江戸時代に自然との共存を考え実現していた私たち日本人の祖先の生き方をヒントにしながら、実現していくべきであるというⅠの文章の要旨とⅡの文章の共通点を探し、まとめていくことです。
二の文章は、戦争が背景となった物語文で対比構造になっています。
打算的な大人と純粋な子ども、戦争の被害者と加害者という構図でこの文章を読むとわかりやすいでしょう。そして、哲学じいさんへの子どものメッセージを通して、これからの生き方を考えさせています。もちろん問題作成者が、この題材を選んだのは井上ひさし先生への思いもあったのでしょうが、昨今の戦争を予感させるような諸外国の動きに危機感を抱き、このような題材を通して「戦争」というものを考えてほしいという思いもあったのかもしれませんね。(考えすぎかな(笑))
さて設問ですが、問2,3は言葉の表記からその意味を考えさせる問題で、やや難易度が高いです。このようなタイプの問題は麻布や、開成でも出題されていますので、難関校志望者はしっかり学習しておきましょう。とくに、問3は「広島」という日本の地名からローマ字でも表現されるカタカナにすることで、世界的に知られる存在になったことを答えさせるというもので、社会(時事系)の知識がないと連想すらできないでしょう。
私が授業中、題材の話を通して社会の歴史や最近の出来事を話しているのは、このためでもあるんですよ、生徒の皆さん(笑)決して無駄話してサボってるわけではないんですからね。(笑)
さて本題に戻りましょう。
問5は傍線部の意味をしっかり理解しながら、どのように生きていけばいいかを哲学爺さんのセリフから考えさせる、これもまた、傍線部の解釈の正確さを求め、生き方を考えさせる桜蔭中らしい問題です。
これも、桜蔭中ドクターで述べています。
文学的文章の記述問題文章全体から心情の変化を読み取らせる問題は「生き方」や「人間性」=哲学的なテーマ、大人の価値観(道徳的なテーマ)に結びつけて考えさせるもので、だいたい二百~二百五十字以内で記述させる。基本的には設問の最後のほうに位置していることからもわかるように、これまでに解いてきた設問がヒントになる(以上、桜蔭中ドクターより)
解法のポイントは、傍線部の意味をしっかり理解した上で、いままでの文章の流れから主義主張を状況に応じて変えてしまう大人たちの姿が描かれていることを読み取り、そんな大人たちの打算的な姿を通して、人間の弱さ、愚かさを描いているということを認識し、この大人たちを反面教師にしながら、どのような生き方をしていけばいいかを考えて、解答をまとめていくことです。
もちろん、小学生がここまで自力で読み取ることは不可能。
だから、ここでは道徳的価値観をベースにしながら、論理的思考=対比で解答を作り出せばいいのです。
なにも行間を読むという特殊なことではなく、まず道徳的価値観を知り、論理的思考で考えるという訓練を普段からすれば、ある程度書ける問題でもあります。
実際、私が指導してきたドクター生も最後まで、しっかり書けたそうです。(もちろん合格しています。)
さて自慢はこれくらいにして(笑)、以上が桜蔭中の入試問題の分析です。
桜蔭中志望者の参考になれば幸いです。