今回は、約数の逆数の和に関する小技を扱います。
難関校向けの小技です。
父:こんな問題があるよ。
30のすべての約数の和は
1+2+3+5+6+10+15+30=72となります。
30の約数を分母とし、1を分子とした分数すべての和は
1/1 + 1/2 + 1/3 + 1/5 + 1/6 + 1/10 + 1/15 + 1/30=( )です。
(2009 穎明館中)
良夫:まずやってみるね。
30で通分すると
30+15+10+6+5+3+2+1 /30 = 72/30だから、答えは2.4になるね。
父:お見事。
ところで、何か気づいたことはないかな?
良夫:うーん、30+15+10+6+5+3+2+1 /30
の分子の部分は、よく見ると30の約数の和になっているぞ。
ということは、分子の足し算はやらなくてよかったことになるね。
父:問題文に書いてあったね。ここではさほど気にならないけど、「約数の和」はこの問題で大きな意味を持つんだ。
じゃあ、次行ってみよう。
160の約数すべての逆数の和は( )です。
(2019武蔵中・改)
良夫:言い方は違うけど、例題1と全く同じ問題ってことかな?
…それじゃあ、約数の和 / 160を求めることになるな。
父:約数の和はどうする?
良夫:根性でやると思ってるでしょう。(不敵な笑み)
160=2×2×2×2×2×5と素因数分解されるから、
160の約数の和は、
(1+2+4+8+16+32)×(1+5)=378
これでどう?
父:むむっ、小癪な。素因数分解を用いた、約数の和の公式だな。いつの間に…
良夫:エッヘン!最近マスターしたんだ。あとは
これをさっきと同じようにやるだけじゃ。
378/160=189/80
どうだあっ!!
父:完璧です。お見それしました。
余りに素晴らしいので、
良夫:素晴らしいので…?
ボーナスステージだぁ。
良夫:聞いてないんだけど。まあ想定の範囲内だ。……やってみよう。
(1)12の約数の、それぞれの逆数の和を求めなさい。
(2)ある数Aの約数の和を求めたら6552でした。
また、Aの約数の、それぞれの逆数の和を求めたら13/4でした。
Aを求めなさい。
(2018海城中より)
良夫:(1)はさっきの問題と全く同じだね。
(2)は、約数の和と約数の逆数の和が与えられているね。
うーん、少しヒントがほしいな。
父:いいだろう。
例題1で、逆数の和を直接計算して求めたんだけど、一つ一つの逆数に、その数自身を掛けるとどうなるかな?
良夫:
30/30+30/15+30/10+30/6+30/5+30/3+30/2+30/1
=1+2+3+5+6+10+15+30
おおっ、一つ一つが約数になっている!
30を約数で割ると、ペアの相方が出てくるってわけだ。
父:その通り。
良夫:ってことは、
「約数の逆数の和」に「その数自身」を掛けると…
いつでもどこでも「約数の和」になるってことで、いいんでしょうか。
父:イイんです。まとめておこう。
「約数の逆数の和」×「その数自身」=「約数の和」
良夫:じゃ、この小技で例題3をやってみよう。
(1)は、約数の和が
(1+2+4)×(1+3)=28だから、
28/12=7/3
一瞬だね。
(2)は、「約数の逆数の和」×「その数自身」=「約数の和」
にそのまま当てはめちゃうと、
13/4×A=6552
だから、A=2016だ。
父:ステージクリア。
良夫:ところで…
父:何だ。
良夫:もしこの公式を知らなかったら、どうなる?いつもこんなにきれいにはいかないと思う。
父:理想とは、そういうものだ。美しくなければ理想じゃない。
良夫:そうだね。うまくいかないときは「根性」でカバーする道を探るよ。
今回はやや対象レベルが高めの小技でした。
使いたいと思った人は積極的に使いましょう。
次回もお楽しみに。