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投稿日:2024年10月11日

テーマ: 算数

算数の小技 ~場合の数・樹形図と完全順列~ 〈中学入試頻出〉

「どれにしようかな」「運命の分かれ道」
これを表す強力な道具が、樹形図です。

樹形図を利用して全ての場合を丁寧に調べれば、必ず正解にたどり着けることを確かめていきます。

父:今回は樹形図の訓練を行う。まずは問題を見てくれ。

【問題】
「1番街」「2丁目」「3重の塔」「4時の夕陽」「5円玉」というタイトルの5曲が入ったプレイリストがあります。このプレイリストの曲の順番を並べ替えて再生するとき、曲の順番と曲のタイトルに入っている数字が1組も一致しないような順番の組み方は何通りありますか。

(2024年 関東学院中)

良夫:1,2,3,4,5の数字を並べる。その時の条件が
1番目に1は来ない
2番目に2は来ない
3番目に3は来ない
4番目に4は来ない
5番目に5は来ない
…こんな感じでいいかな?

父:そんな感じでいい。

(せっせと樹形図を書く)

順番と数字が一致しないものを書き出していくよ。
まず1番目に2が来る場合を考えるぞ。

樹形図

で、11通りある。
父:うむ。

良夫:あと、1番目が3,4,5のものも書き出すと…
それぞれ11通りあった。
だから、11×4=44通り。

父:大正解!
さて、ここからが反省会だ。

良夫:トホホ。

父:44個書くのは大変だったか。

良夫:何をするかわかっているなら、大変ではないよ。でも、何をするのかがすぐに見えない場合は、つらい。あと、順番と数字が同じにならないように気を付けながらやるのは疲れる。

父:もっともだな。この問題で、省力化できそうなところはあるか。

良夫:そうだなあ。
1番目が2,3,4,5となる数の並びが各11個だったので、これは全部やらなくてもよさそうだ。

父:そうだな。

良夫:2,3,4,5は平等な感じがする。
あと、2番目の数字だけど、1を入れたとき(2個)と、それ以外のところ(3個)で結果が違っている。

父:3,4,5は平等だが、1はそうではないと。

良夫:そう思う。ここは不安だから、とりあえず11個全部書きだす、の方が安心だなあ。

父:自分にとって安心感があり、なおかつ無駄も少ない方法ということか。ベストに近づいてきたな。
あとは、最初に言ってた、何をやるかすぐ読み取れるかってところだが、

良夫:それはさすがに大丈夫。本当に5円玉って曲があるのか、と突っ込みたくはなったよ(笑)。

父:実は、この問題は、「完全順列」と呼ばれる有名数列を扱っているんだ。

良夫:へえ。

父:すべての数がもとの順番と違う位置に並ぶ方法が何通りかを表すのが完全数列なんだ。これって学校の席替えに似ていないか。

良夫:席替え?数字が順番の数と異なるということは、元の位置から移動したということか。じゃあ、
「全員の席が移動する方法は何通りあるか」、って感じかな?

父:そうだな、で、だから今回はこれを「席替え数」と呼ぶことにする。つまり…

良夫:全員の席が元の位置から移動する席替え方法を人数ごとに調べようってわけだね。

 

父:ああ。じゃあ1人からスタートする。
1人の席替え数を「席替え数1」と呼ぶ。席替え数1はいくつになる?

良夫:ええっ、動けないでしょ。

父:そう。だから席替え数1は、0通り。じゃあ席替え数2は?

良夫:さっきの数字で言うと、21の1通り。

父:正解。続けるぞ
席替え数3は?

良夫:
231
312
の2通り。

父:うむ。ここまでの結果をまとめるぞ。
席替え数1=0
席替え数2=1
席替え数3=2
席替え数4=9
席替え数5=44
ここまで調べたな。
「完全順列」は三角数なんかと同じ、有名な数列だから…

良夫:席替え数を覚えれば即使えると。しめしめ。いいこと聞いた。

父:ま、そういうことだ。

良夫:ところで席替え数6は?

父:急に大きくなるんだ。覚える必要はないかな…

良夫:ひょっとして、265になる?

父:ええっ。

良夫:なんとなくだけど…
こんな式が見えてきたんだ。
計算式

父:席替え数6も
(9+44)✕5=265で合ってる!すごいじゃないか。

良夫:合ってたんだ!数が並んでいると、なんかおいしい法則ないかなって探す癖がついちゃってて(笑)

父:なんという習性。ここぞというところで役立つといいな。

 

今回のまとめ

樹形図
①すべてを書き出すのが基本
②数の対等性があるところは、同じ結果になる
席替え数
③席替え数(0,1,2,9,44…)は結果を覚えて使ってもよい

いかがでしたか。
過去問演習中に、「席替え数」を見つけたら、この結果が使えることを確かめてみてください。もちろん樹形図で「普通に」解いてもOK。
記述問題では使えないのでご注意を。

次回をお楽しみに。

算数ドクター