割り算は、掛け算の反対だと思っていませんか。
教える側になってわかることのですが、割り算を初めて学習していく場合、
個人差はありますが、ことのほかエネルギーを使います。
なぜでしょうか。
①頭の中の作業量が多い
割り算の筆算をするときに、商にどんな数が来るかを考えるときも、
1倍、2倍…と積を順に考えていき、考えて超える寸前のところを自分で求めなければなりません。(割り算と言いつつ、やっていることはけっこう掛け算なわけですね)
そして、練習してその思考回路ができて初めて処理速度が上昇するのですが、
それまでは毎回大変な思いをすることになります。
処理する回路が頭の中に構築されるまでは、かなりの練習量を要するということです。
②意味が分かりづらい
割り算には2つのはたらきがあります。
一つは「一つ当たりの量を求める」もの、もう一つは「ある量が何個入るかを求めるもの」です。
これらの意味を考えずに計算の手続きだけを覚えさせようとすると、逆に覚えるのが大変になってしまうでしょう。それでなくても作業量が多いわけです。
ここでは意味を考える=正しくイメージすることが、大切です。
・割り算の2つの顔
「一つ当たりの量を求める」割り算は等分除といいます。例えば
1個( )円のチョコを4個買いました。値段は120円です。
「等分する」のはこのタイプです。
この場合、頭の中では
120円を等しい4個に分ける、つまり
4等分する
と考えるわけです。
それに対して「ある量が何個入るかを求める」割り算を包含除といい、例えば
1個30円のチョコを( )個買いました。値段は120円です。
120円で30円のチョコが何個買えるかな
→120の中に30が何個入るかな
と考えます。
つまり、30×4=120という式において、
30を求める割り算(等分除)と、
4を求める割り算(包含除)の
2種類の意味があるということなのです。
さて、習得のスピードに個人差が生じると述べましたが、それまでの人生で
経験的にこの考え方を習得しているケースもあります。例えば、スーパーや駄菓子屋で
「どっちが安いかな、100g当たりの値段は何円かな」
「このお金であと何個買えるかな」
など、切実な問題として(子供にとってはそうです!)考える経験をしているでしょうか。子供時代のこういう経験をあまりしなくなってきているような印象を持ちます。ここがクリアできていると、割り算の習得は容易です。
経験不足の場合も、生活の中で、
「このお金を3人で山分けしてみようか、3等分してみようか」
「このお金で〇〇が何個買えるかな」
などの問いかけを意識的に多くしていただくと効果的だと思います。
等分除は、大きさをそろえるわけですから、のちに学ぶ「速さ」や「密度」といった単位当たりの量や、「平均」の考え方に直結します。割り算は、きっちり均等に分けてくれるという偉大な働きを持っているわけですね。
包含除は、「何個入るかな」ですから、すなわち「何倍」に直結します。
「何倍」とは、は割合のことです。言わずと知れた算数の重要項目です。
割り算の意味をしっかりおさえることが、後の学習に影響することがわかっていただけたと思います。
小4で算数が苦手なお子さんは、この辺りに弱い原因があることも多いです。小4までにイメージ通りの割り算ができるようになることを目指しましょう。
次回をお楽しみに。