こんにちは、太田 陽光です。
今回は正確に読み取る力をつけるために必要なトレーニングについて書きます。
国語は文章を正確に読み取ったうえで、問題を解くと、正解にたどり着けます。
しかし、授業で生徒に質問してみると、
文章に書かれたこととは、ニュアンスの違うこと、
あるいは真逆のことを答えることがしばしばあります。
以前、生徒に文章を読ませたとき、「少なくない」という表現があったのですが、
ここで多くの生徒が「少ない」と読んでしまいました。
ただの「読み間違い」ですむのならよいのですが、
この部分は選択肢問題の要素になっていたのです。
その結果、問題作成者の罠にはまってしまい、
「少ない」と書かれた間違い選択肢を選んだ生徒が少なくなかったと記憶しています。
「少なくない」という表現を正確に読み取る必要があったのですね。
もちろん、私たち大人でも、文章中の表現を読んだ後に、そっくりそのまま口にすることは難しいですが、
内容が全く違う言い換えをすることはほとんどないと思います。
この、大人と子供の違いは、何に起因するのでしょうか。
私は言葉のストック量の差だと考えます。
「言う」という言葉には、「言った」、「言われる」、「言っている」というように、
助動詞などがつくことでニュアンスに違いが生じる表現がたくさんあります。
また、類義語として、「話す」、「しゃべる」、「発言する」などもあります。
この数がまだ少ないのが子供です。
そのため、講師からの質問に対し、少ししかない自分の中にストックした言葉から、
本文の表現と似ている(が、実際はそうでもない)言葉をそのまま言ってしまうのでしょう。
先に挙げた「少なくない」も、子供の中にまだストックされていなかったから読み間違えたのだとわかります。
では、言葉のストック量を増やすにはどうしたらよいのでしょうか?
私は、本文の表現を考えながら読み、書き写すことがよいと思います。
テストの解き直し、授業の復習の際に、本文に書かれた表現をそのまま書き写すことによって、
新たな表現を覚えることができます。
そして、数多く書き写していけば、ニュアンスの違いも理解することができます。
例えば、「言う」は現在の行動、「言った」は過去の行動、という違いが分かるようになります。
また、正しい文章のつながりも体感できます。
記述が苦手な生徒に多いミスが、主語と述語のねじれです。
例えば、
私は父に文句を言った
と本文にあるのに、
書いているうちに自分のストックの言葉(=一番最初に思い付く言い方)に引きずられ、
私は父に文句を言われた
というように、真逆の意味にしてしまうことがあります。
また、本文では「私」が主語であったのが
答えを書くときに「父」を主語にしなければならなくなった結果、述語をそろえることをせず、
父は私に文句を言った
というように、またしても真逆の意味にしてしまうこともあるでしょう。
国語が得意な生徒でも、このようなミスはします。
ただし、書き終えた後に「何かおかしいな?」と気づけるのが、国語が得意な生徒です。
表現のおかしさに気づけるかどうかが、記述力の基本の有無を分けるものだと言えます。
このような気づく力をつけるのにも、正しいつながりの文章を読んで書き写すのが一番です。
まずは、テスト直しのときに、記述の問題の模範解答を書き写すところから始めてはいかがでしょうか。
模範解答は、問題作成者や編集者によって、きちんと推敲された文章です。
主語・述語のつながりに始まり、「、」を打つ場所まで、学ぶことができるお手本です。